『HERO』北川景子&濱田岳 単独インタビュー
取材・文:相田冬二 写真:杉映貴子
木村拓哉主演の「HERO」シーズン2からシリーズに加入した北川景子と濱田岳は、東京地検城西支部メンバーの最若手。言ってみれば「20代枠」である。この二人が見た『HERO』とは? そして城西支部とは? 写真撮影時もまるで、自分たちが演じる麻木千佳事務官と宇野大介検事のように息が合っていた北川と濱田が、国民的人気シリーズの裏側と最新作『HERO』について語った。
北川景子にとっての事務官は濱田岳!?
Q:城西支部「20代枠」のお二人ですが、北川さんによれば「麻木にとって宇野は舎弟みたいな存在」とか(笑)。実際のお二人の関係性も反映されている部分もあったりするのでしょうか。
北川景子(以下、北川):意外とガッツリ共演したのは『HERO』が初めてだったんです。「太陽と海の教室」(2008年)など共演した作品はあったんですが、あまりしゃべったことがなくて。でも最初は「舎弟」じゃなかったんだよね。
濱田岳(以下、濱田):うん、まあ徐々に舎弟になっていったっていうか(笑)。
Q:徐々にですか(笑)。
濱田:「(今日の撮影は)あと何カットか聞いてきて」とか。僕は「頑張りましょうよ!」と(笑)。
北川:そういう遊びが楽しかったんですよね(笑)。
濱田:それはもうこの二人の間でしかやれない遊びで。もちろん先輩の前ではできないので、移動中とかにいじっていただいて。
北川:同じ事務所じゃなかったらこうはなれなかったのかなって。「身内」だったのと、シーズン2から入っている新メンバーという仲間意識とで割とすっと打ち解けました。
Q:お互い、そういう存在がいて良かったですよね。
北川:岳くんがいなかったら、打ち解けるのに結構時間かかっていたかもしれないです。もちろん、先輩方は迎えてくださっているんですけど、出来上がっている世界観もありましたし、どう食い込んでいくか迷っていたかもしれません。
濱田:作品としてのプレッシャーもありましたしね。
Q:先ほどのやりとりを聞くと、北川さんの事務官的な立ち位置が濱田さんって感じですね(笑)。
濱田:なるほど! うまいこと言いますね。
北川:「岳、どこ行った?」とか(笑)。
濱田:「もういいよ、いまイジんないでよ~。そっとしておいてくれよ~」ってね(笑)。
北川:そうそう、そんな感じ(笑)。
麻木と宇野は、しずかちゃんとのび太みたい
Q:宇野を麻木がお出掛け捜査に誘う楽しいシーンがクランクインでしたね。
北川:あの日は久しぶりの『HERO』の現場だったので、緊張しました。
濱田:(撮影の無事を祈願する)おはらいの直後でしたもんね。宇野としてはステキな「入り」でしたけど。そうだ、(宇野と麻木は)こういう関係性だったと思い出せる。
Q:「宇野っち……」と見つめて、気乗りのしていない宇野に「うん」と言わせる麻木が最高です。麻木ってああいうこともするんだなと(笑)。
北川:もう仕方ない状況というか、麻木にしてみたらどう巻き込むかということしかなかったと思いますよ。
濱田:麻木としてはきっと色仕掛けではないんですよね。宇野に対しての(有効な)やり方だったわけで。
北川:宇野なら来るんだろう、「わかるよね、宇野っち」ってね(笑)。
Q:結局、舎弟のような状態ですね(笑)。
濱田:宇野と麻木さんとの独特な距離感、関係性のシーンかなと思いますね。
Q:でも、あの二人の関係って、今回少し距離が縮まったんでしょうか。宇野がお出掛け捜査に参加するなんて、なかなかないことなわけで。
北川:どうだろう。でも、のび太としずかちゃんみたいだよね。
濱田:特に縮まることもないじゃないんですかね。でも、麻木さんを好きな気持ちは変わっていないと思います。
Q:そういえば、最後のほうに切ないシーンがありましたね。
濱田:そうですねー。あのシーンは普通にいづらかったですよ。宇野としてではなく、濱田岳として切ないシーンでした(笑)。
Q:お出掛け捜査中も、宇野がかわいそうなときが……。
北川:あのシーンも、つらそうでしたよね。どうやっていいかわかんないよね。
濱田:でも鈴木(雅之)監督だから……。
北川:そう。「濱田さん、なんか面白いことやってくれるんだよね?」みたいな感じだったよね。
濱田:何かやるまでカットがかからなかったんですよね。
微妙なバランスで成り立つ城西支部
Q:鈴木監督はキャストの自主性に賭けていますよね。「何かやってくれるだろう」と期待している。
北川:あまり細かいことは言わないんですよね。「ここで立ち止まってこうしてください」みたいなのはないですし、「任せます! やってください」と。
濱田:強いて言えば、厳しいなと思ったのは小日向(文世)さんに対してですね(笑)。
北川:ああ、そうかもね! 「それ、要らない」とか。たぶんアドリブ的なところなんですけど。
Q:小日向さんは結構アドリブされるんですか?
北川:小日向さんと八嶋(智人)さんは、何かやれることないかな? って、常に探しているんですよね。使える道具も探して、どうしようか考えている。
Q:お二人は、その状況の中でどうしていたんですか。
北川:わたしたちは台本を一切崩さなかったです。アドリブを入れる人と入れない人がいて、ちょうどよくなっていくと思っていました。あと、宇野と麻木はアドリブを入れると役が保てなくなるかもしれません。
濱田:アドリブは小日向さんと八嶋さんの専売特許みたいなところがあるんですよね。
Q:城西支部は微妙なバランスで成り立っているんですね。
北川:そうですね。木村(拓哉)さん、小日向さん、八嶋さんは割とアドリブをされていて……(吉田)羊さんもそうかな。(杉本)哲太さんとわたしと岳さんはそんなに台本を変えなかったですね。だからバランスが取れていたのかな。
濱田:ただ、横にいた小日向さんが僕によく「いま本番? 本番?」って聞いてきて……。ドラマのときからそうでした。「本番ですよ、ちゃんとカメラ見て!」って。違う緊張感がありました(笑)。
Q:濱田さんは小日向さんの事務官でもあった(笑)。
濱田:えへへ。
Q:シーズン2で、「HERO」は大きな進化を遂げたと思うんです。正名僕蔵さんが「シーズン1はほぼ同世代の息の合ったチーム。シーズン2は年齢差のズレも楽しめるチーム」とおっしゃっていて。若手の存在が大きかったと思います。
北川:単純に、リアルだったと思うんです。そういえばシーズン1のときは皆さん20代後半から30代で、ある程度年がそろっていたんですよね。そう考えると、今回は大学を出てすぐの人がいて、年の離れた上司がいて、城西支部って支部があるんじゃないかって錯覚するくらい「職場」だった気がしています。ただ、わたしにできたことは特にないですよ。そういう役割を担ってくれたのは……(と濱田を見る)。
濱田:僕もないですよ(笑)!
北川:宇野のような若い検事に、(小日向演じる)末次のようなベテランの事務官が付くって、あるんだろうなって。だから説得力を持たせることができたのかなとは思います。
濱田:確かに若造がいることで、職場としてのリアリティーは出せたかもしれないですね。またその若造に対して、先輩方が優しいですからね。先輩たちの人の深みも出ていたと思います。みんな一丸となって、若手の話を聞いてくれる先輩だった。そういう意味でいい雰囲気だったんじゃないかと。いま、冷静に分析して思うことですが……。演じているときは、高校球児のような全力プレーでした。もう全力でボールを投げることしかできなかったです。
シーズン1の放映時、北川は中3で、濱田は中1だったそうだ。もちろん、当時面識があったわけではないが、二人はいまも、中学生にとっての先輩後輩のような間柄に思える。そんな関係性が、麻木と宇野の在り方にも間接的ににじんでいた。「松(たか子)さんと共演できた!」と興奮気味に語る北川と、「撮影は僕にとって『本物と歩く城西支部ツアー』でした(笑)」と振り返る濱田ならではの『HERO』ストーリー。宇野検事に麻木事務官が付くというエピソードも観てみたい!
北川景子
スタイリスト:細見佳代
濱田岳
ヘアメイク:池田美里
スタイリスト:勝見宜人(KoaHole inc.)
映画『HERO』は7月18日より全国公開