『バクマン。』佐藤健&神木隆之介 単独インタビュー
神木隆之介という本物のピュアボーイ
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
週刊少年ジャンプに連載された大場つぐみ・小畑健コンビによる同名人気漫画を、映画『モテキ』などの大根仁監督が実写化した『バクマン。』。高い画力に恵まれながらも夢を持てずにいたサイコーこと真城最高と、サイコーを漫画家の世界に誘うストーリーテラーのシュージンこと高木秋人。2人の高校生がタッグを組み、連載漫画でジャンプの頂点を目指す青春ストーリーだ。サイコーを演じた佐藤健とシュージン役の神木隆之介が、今だから話せるウラ話を明かした。
もしも配役が逆だったら、無理だった
Q:映画化が発表されたとき、サイコーとシュージンの配役が逆ではないかとインターネット上で話題になりましたが、お二人はどのように感じていたんですか?
佐藤健(以下、佐藤):僕としては、この原作のどっちの役をやりたいかというと、絶対にサイコーなんですよ。だから、役が逆なんじゃないかということよりも、「僕が年下の隆(隆之介)と同級生に見えるのか?」ということが一番の不安だったんです。で、「隆と同級生に見えるのか、ちょっと心配なんです。役も逆だって言われているし……」ってプロデューサーに相談したら、「漫画家になるキッカケを作ったのはシュージンだけど、そのあとはシュージンがサイコーの後を精神的な部分で追い掛けているんだよ」って言ってくださったんです。
Q:シュージンは見た目こそクールだけど、実は弟キャラなんですね。
佐藤:原作もそうなんです。僕は年下の人と遊ぶことが多くはないのですが、隆とは食事に行ったり、「タケちゃん服ちょうだい」って言われて家に来たときに服をあげたりして、兄貴分的な気持ちになることがあるんです。隆は僕のことを慕ってくれるんですよ、なんでかはわからないけど(笑)。そういうことに気付いて、サイコーを頑張ろうと思いました。
神木隆之介(以下、神木):僕は最初に役を聞いたときに、「僕がシュージンなんですね」って驚きました。自分はサイコーかと思っていたんです。外見の雰囲気とか背丈が原作のサイコーに近い気がしていたので。でも、性格的な部分では僕はシュージンに似ていて、健くんはサイコーに似ているとスタッフさんからうかがって、すごく納得しました。僕は「よーし、がんばるぞ!」とか感情を口に出して表現することが多くて、そこがシュージンと似ている。サイコーはその逆なんですよね。
佐藤:内に秘めて言わない。僕自身もそうなんです。
神木:沸々とした闘志を秘めていて、負けたくないという人一倍熱い気持ちがあるのがサイコーで、そこは健くんと一緒なんですよ。
佐藤:初めてシュージンがサイコーの作業部屋(漫画家だったサイコーの叔父の部屋)に来るシーンで、漫画だらけのオタクにはたまらないその部屋を見て、「スゲエ!」って言うんですけど、まんま隆のリアクションでした(笑)。あのときに「やっぱりシュージンは隆だな」って思いましたね。もしも皆さんが言うように逆のキャスティングだったら、僕はかなり無理があった気がします。たぶん隆はどっちもできるんですよ。でも、僕は無理しているのがバレていたと思いますね。
漫画だらけのセットで読書三昧!
Q:佐藤さんが気にされていた年齢差を、お二人はどう埋めていったのでしょう?
神木:最初に二人で騒ぐシーンから撮ったんですけど、健くんががんばって僕に合わせようとしてくれたというか……。
佐藤:いや、制服を着るのがあんなに嫌だったのは久々でしたよ(笑)。一人だったらまだいいんです。でも、今回は隣に隆という本物のピュアボーイがいるから、並んだときに「コイツ、若作りしているなあ」って思われかねない。そこは頑張ったんだけど、まあ妥協をしないといけないところかもしれないです(苦笑)。
Q:大根監督は、衣装も含めてかっこよくならないように演出されたそうですね?
佐藤:童貞に見えるかどうかが一つのポイントだったようです。衣装合わせでもずっとおっしゃっていましたね。「おお、ちゃんと童貞に見える。大丈夫だよ」って(笑)。
神木:言っていましたね。「あー、よかったです」としか言えないという(笑)。
Q:作業部屋の漫画やアイテムも非常に細かくて、大根監督のこだわりを感じました。
佐藤:2か月撮影期間があったんですけど、その中の半分くらいは美術の準備待ちだったんじゃないかな(笑)。っていうくらい、隆と2人で待っていた記憶が多いです。
神木:確かに(笑)。僕らが使うペンなどの道具をどこに配置するのかとか、そのシーンのテーマカラーなど、とにかく背景にこだわっていらしたので。
Q:待ち時間はどのように過ごしていたんですか?
神木:そうですね……寝ていたりとか、漫画を読んでいたりとか。
佐藤:セットに漫画がたくさんあるので、読みたくなっちゃうんです。カメラに映っていない場所の漫画を持ってきたりしちゃいました。僕は「寄生獣」を全巻読破して、ほかにもいくつかの漫画を読破しましたね。
神木:そうそう。僕は「SLAM DUNK」をもう一度読み直してしまいました。
バトルシーンは『るろうに剣心』VS『寄生獣』
Q:ライバルの天才高校生漫画家・新妻エイジ役の染谷将太さんも、かなりインパクトがあるお芝居でしたね。
神木:染谷さんが現場に入ってきた瞬間に、「わ、エイジだ」って思いました(笑)。エイジっぽい目つきや姿勢をちゃんと研究していて。相当な役づくりをしていましたよね。
佐藤:原作のエイジを染谷くんがやると聞いた時点から、「間違いないな」とは思っていましたけどね。
Q:そんなエイジ対サイコー&シュージンの「読者アンケート1位」をめぐるバトルシーンが、斬新なCGアクションで表現されていてワクワクしました。
神木:僕ら2人と染谷さんが、巨大な筆を武器に見立てて戦う部分があって、「『るろうに剣心』対『寄生獣』だね」って現場で言っていたんです(笑)。撮影中は大根監督が「今インクが飛んできた! ここで線が入ったよ!」とか言ってくださるんですけど、どんなふうにCGが入るのかわからなかったんです。後で確認したら僕らが漫画の中にいるような感じになっていてすごかったです。
Q:殺陣のようなアクションもありましたね。映画『るろうに剣心』では佐藤さんが剣心役、神木さんが敵の宗次郎役でバトルを繰り広げていましたが、その経験が役立ったのでは?
佐藤:二人で息を合わせるという面で、かなり役立ちました。『るろうに剣心』でやっていなかったらもっと大変でした。戦うときも対峙(たいじ)する相手と息を合わせなくてはいけないんですが、隆とはずっとやっていたので。すぐ合わせることができましたね。
神木:まさか僕と健くんが横に並んで、同じ向きで同じ敵と戦うなんてね。『るろうに剣心』では二人が敵対して、向き合って戦っていたので。
Q:今回、漫画を描く練習も相当されたそうですが、相当難しかったのではないですか?
佐藤:そうなんです。Gペンと呼ばれるペンで線を引くことが一番難しいんですよ。漫画を知らない人にはわからないかもしれないのですが、漫画家さんって本当にすごいんです。それが映画で伝わるといいんですけどね。
神木:僕も一緒に練習しました。ネームも描きましたし、背景とか修正もシュージンが担当していたので、トーンやベタもやりました。本当にいろんな過程があって、やっと一コマが生まれる。その積み重ねで漫画が誕生するのだなと実感しました。
終始リラックスした様子で本音トークを繰り広げる佐藤と、瞳をキラキラさせながら楽しそうに語る神木。仲良し兄弟のようであり、苦楽を共にした親友同士のようでもあり、一緒に居ること自体が当たり前のような二人の空気感は、映画のサイコーとシュージンそのもの。熱狂的なファンを持つ原作の実写化に果敢に挑んだ彼らの誇らしげな笑顔が、完成した作品への満足度を如実に物語っていた。
(C) 2015 映画「バクマン。」製作委員会
映画『バクマン。』は10月3日より全国東宝系にて公開