『僕だけがいない街』藤原竜也&有村架純 単独インタビュー
未完の原作をどう映画にするか
取材・文:浅見祥子 写真:平岩亨
時間が巻き戻る“リバイバル”という現象に巻き込まれた主人公が、18年前に自身が遭遇した連続誘拐殺人事件に挑むミステリー『僕だけがいない街』。タイムトラべルものと謎解きの要素をブレンドし、丹念な人間ドラマで奥行きを加えたハイレベルな娯楽作となったこの映画で、藤原竜也と有村架純が共演している。漫画の実写映画化で確かな実績を持つ藤原と、人気&実力共に上昇を続ける若手注目株の有村が、お互いの印象や撮影中のエピソードを語った。
漫画の実写化だからこその苦労
Q:共演者として、お互いの印象はいかがでしたか?
藤原竜也(以下、藤原):実は今回、割と天気に泣かされまして。台風が何度も直撃したときに撮影していて、いろいろなことがスムーズにいかないときもあったのですが、架純ちゃんはいつでも真摯に現場と向き合ってくれていました。周囲の人に変な緊張を与えることもなくて、若いのにしっかりしているなあって。素敵な女優さんだなあという印象でしたね。
Q:11歳ほど年が離れているんですよね?
藤原:そんなに離れていましたっけ?
有村架純(以下、有村):そうですね、意外と(笑)。藤原さんは現場でナチュラルな方で、変に頑張らなくていいと思わせてくれる空気感があるというか、リラックスさせてくださいました。お会いする前は黙々と撮影に向かわれる方なのかと思っていましたが、まったくの真逆で。いろいろな話をしていただきましたし、現場を盛り上げてくださいました。一方でカメラの前に立ち、スタートの声がかかると切り替えがものすごく早いんです。集中力や持続力というものを学ばせていただいた気がします。
Q:場を和ませようと意識を?
藤原:架純ちゃんがいますからね、失礼のないように(笑)。
Q:一緒にお芝居をする相手としての印象は?
藤原:漫画原作モノって、難しいんですよね。僕ら役者が生身で演じると腑に落ちない部分や、なかなか埋められない“行間”というのがどうしてもあるものなんです。それは決して否定的な意味ではなく、仕方がないことなのですが、架純ちゃんはいかにそうした行間をナチュラルに埋めるか、いつでも監督と話し合っていました。お互いに意見を言い合って、より良い方向に進めていくためにしっかりやっているんだなと。僕ら俳優はお芝居とはいえ、ウソをつく訳にはいきませんから。
Q:確かに複雑なストーリーでもあるので、疑問に思うことは多そうですが?
有村:そうですね。疑問があるのが普通だと思うし、実際にその都度話し合っていました。
野山を駆け回った子供時代
Q:悟は時間の巻き戻る“リバイバル”という現象に巻き込まれて小学生時代に戻りますが、ご自身はどんな子供でしたか?
藤原:僕が住んでいたところは、悟が子供時代に暮らした町にちょっと似ているんですよね。子供時代は山へ行って遊んだり川で泳いだりして、野山を駆け回っていました。
有村:活発ですね。
藤原:典型的な男の子ですよ。まさに田舎の小学生って感じでした。
有村:わたしも夏はセミ捕りに行ったり河原でキャンプをしたり、季節に関係なくずっと外で遊んでいました。おうちでお人形遊びをするより、そうやって外で遊ぶ方が楽しかったんですよね。
藤原:子供のときはそうだよね。
Q:男の兄弟がいたんですか?
有村:そういうわけではないんですけど。今でもバーベキューやキャンプなどのアウトドアは好きです。最近は全然できていませんが、キャンプへ行こうという話になったら、すごく張り切って行きます(笑)。
原作ファンにも受け入れられる作品に
Q:完成した映画を観た感想は?
藤原:原作はまだ完結していなかったので、映画としてどう成立させるのかというのが、多くの原作ファンの思いだったはずです。そうした方たちの思いを大きく裏切ることなく、原作ファンの方にも受け入れていただける作品を目指して平川(雄一朗)監督をはじめ、みんなで作ったんだなあという感慨がありました。それにもともと、よくできている物語ですから。僕らはまだ客観的に観られていないところがあるかもしれませんが、本当に面白いなと純粋に思いましたね。
有村:わたしは見終えたあとに、切なさが残りました。“切ない”なんて簡単な言葉で、嘘くさく聞こえちゃうかもしれないですけど、何かこう、大事にしたいものがいっぱい詰まっているなって。壊れてほしくないものが。結末を知るとタイトルについても、ああそういう意味だったんだと腑に落ちるところがありました。
Q:藤原さんは結末について、どう思われました?
藤原:そもそも未完の原作を完結した映画にするにあたっては、いろいろな意見があっていいと僕は思います。個人的には子供のころと大人になってからの悟が、言葉をやりとりして終わっていくところが気に入っています。そこにどんな思惑が忍ばせてあるのかは監督に聞いてみてください(笑)。
こういう映画です!と一言では言えない映画
Q:藤原さんは以前、「40代に向け、オファーされる役柄が変わっていくのかも」という意味のことをおっしゃっていました。今の段階で、そうした変化を実感していますか?
藤原:すでに変わってきているし、もっと以前から変わっていたのかもしれませんね。でもどんな役柄を引き受けるかにはいろいろな状況が関係してきますから。僕自身の中で、演じる役柄にどういう変化をつけてやっていくかという問題もあるし、やっぱり年齢を重ねるうちに、頂く役柄に変化があって当然だと思っています。
Q:映画『探検隊の栄光』やドラマ「おかしの家」等、最近は個性的な作品や役柄が続いていますよね。そうした役柄を面白がれる感覚が?
藤原:もちろんもちろん!
有村:「おかしの家」……面白かった(笑)。
藤原:ありがとうございます(笑)。
Q:有村さんは2年ほど前に「演じることは楽しいけど、まだ悔しいと思うことが多い」という意味のことをおっしゃっていましたが?
有村:考え方や演じるときの感覚は変わってきているなとは思います、とても。役柄の軸のようなものを考えられるようになったんですよね。するとちょっとラクになったというか、演じるときに変に力が入らなくなったというか。以前は演技プランみたいなものを用意していたのですが、今は割と現場で、という意識が強くなってきました。愛梨役に関しては難しくて、キャラクターの見え方などを監督といろいろ話し合っちゃいましたけど。
藤原:確かに“リバイバル”を表現するのも大変だったよね。同じ撮影を何回もしなくちゃいけなかったりして。どういうふうにつながるんだろうな? と思いながら演じていました。もちろん映画は監督のものですから、監督の最終的な判断を信じて日々撮影していきました。
Q:これから観る人にこの映画を説明するとしたら?
藤原:もちろん原作を知っている人は期待して観てくれるだろうけど、全然知らなくても十分楽しめる作品になったと思います。謎を解きながら、興味深く展開していくお話になっています。
有村:こういう映画です! とうまく言えないのですが、リバイバルという特殊なことが起きて物語が展開していきます。その中で非現実的なところも楽しめると思いますし、物語が展開するにつれ、必ず引き込まれていくはずです。映画の流れに身を委ねて観ていただけたらうれしいですね。
映画の中では互いを思い合う男女を演じている二人だが、インタビュー中にも触れたように、実年齢では藤原が11歳年上。15歳のときに初舞台を踏んだ彼と、デビューして7年目の有村ではキャリアの上でも当然開きがある。でもそこはさすが藤原。人懐っこい空気で場を和ませ、有村もごく自然にその場にいることを楽しんでいるように見える。撮影現場でもきっとこんなふうに、互いをさりげなく気遣っていたのだろう。そんな関係が劇中のそれと不思議と重なって見えた。
映画『僕だけがいない街』は3月19日より全国公開