『闇金ウシジマくん Part3』山田孝之&本郷奏多&白石麻衣 単独インタビュー
俳優は人生を賭けたギャンブル
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
違法な高金利で金を貸す金融屋「カウカウファイナンス」の丑嶋(うしじま)馨 と、彼の元を訪れる債務者たちの生きざまを描く人気シリーズの劇場版最新作『闇金ウシジマくん Part3』。不気味な空気をまとうウシジマの役を極めた山田孝之、情報商材ビジネスにのめり込む債務者・沢村真司を演じた本郷奏多、真司が思いを寄せる新人タレント・麻生りな役に挑んだ白石麻衣(乃木坂46)が、撮影時のエピソードや自身の欲望について語った。
「ウシジマ」シリーズがついにファイナルへ
Q:2010年に深夜ドラマとしてスタートし、ついに映画の『Part3』が公開となる「闇金ウシジマくん」シリーズ。1か月後には映画『ザ・ファイナル』も公開となりますが、山田さんはどんなお気持ちで今回のプロジェクトに臨んだのでしょう?
山田孝之(以下、山田):「ウシジマ」という作品は、お金を借りる人たちがメインの話で、ウシジマが出てくる部分って全体の半分くらいなんですよ。でもシリーズが始まった頃から、“ウシジマという人物がどうやって出来上がったのか”という部分は、絶対に描かないといけないだろうなと思っていたんです。映画のPart2のときにウシジマのキャラはいけるところまで作り込めたし、作品自体も多くの人に知ってもらえたと実感したので、そろそろ原作で明かされたウシジマの学生時代を映画で描こうということになって。ただ、それ一本だけだと債務者が出てくる部分が少なくなってしまい、ストーリーがキレイに収まらないので、今回はPart3、ザ・ファイナルの2作でやることになったんです。
Q:シリーズ初参加の本郷さんと白石さんは、人の欲望や裏社会を描くウシジマ・ワールドをどう観ていたのでしょうか?
本郷奏多(以下、本郷):僕は元から原作漫画が好きで、映像化作品も観ていましたので、単純に参加できるのがうれしかったです。山田さんも尊敬する俳優さんですし。
白石麻衣(以下、白石):わたしは映画のPart2を観て、すごい世界観だなと思ったんです。そこに自分が飛び込むということは挑戦でしたし、どんな感じになるのか楽しみでした。でも、お芝居の経験が多いわけではないので、キャストの方に引っ張っていただきました。特に本郷さんとのシーンが多かったんですけど、本郷さんはいつも自然体でいてくださって、とてもやりやすかったです。
本郷:白石さんは、すごくステキなキャラクターを作っていらっしゃいました。りなという女性に魅力がないと真司の話は動かないので、それを絶対的な説得力でやっていらっしゃったと思います。
本郷は身の危険を感じている?
Q:本郷さん、撮影で初めて「カウカウ」の事務所に入ったときのお気持ちは?
本郷:やっぱり、ウシジマと部下たち(やべきょうすけ、崎本大海)3人のファミリー感がすごくありました。楽屋とかでも皆さんが楽しそうなので、それを観ていて自分がアウェイにいるということを実感しましたね。
山田:「カウカウ」に新たな債務者が入ってきたときは、その人が疎外感を覚えるように、あまり話しかけないようにするんですよ。あえてメンバーだけで「メシなに行きます?」とかワイワイ話したりして。もちろん、完全無視というわけではないんですけど、適度な距離をわざと作っているんです。
Q:人生逆転を賭けて情報商材ビジネスに挑む真司は、本郷さん自身を投影できる役でしたか?
本郷:真司のマインドとしては、今の時代を生きているこのくらいの男性の大多数だと思うので、それほど変わったアプローチが必要なわけではなかったです。真司はワンアクションを起こしたことで人生が変化するんですけど、そこを演じるのはやりやすいことではありました。
Q:白石さんが演じたりなは、セレブパーティーにバイト感覚で参加する現代っ子。演じてみていかがでしたか?
白石:りなは自分とは正反対の積極的にアクションを起こしていく女の子だったので、そこは楽しみながら演じていました。現場でセリフの変更があることが多かったんですけど、山口雅俊監督がひとつひとつをちゃんと指示してくださいました。
山田:……なんか、奏多と白石さんの現場って、2人がゆっくり静かに動いてそう(笑)。
本郷:機敏にやっていたつもりですが(笑)。
山田:今、奏多が身の危険を感じています(笑)。映画とはいえ、人気アイドルの白石さんと接近するシーンが多いので。
本郷:白石さんファンの方からの攻撃がコワいです(笑)。
“獣食い”がカウカウのルール
Q:「ウシジマ」シリーズの世界観をずっと構築されている山口監督。演出のこだわりも相当強い方なのでは?
山田:すごいです。例えば、このテーブルに置いてある各自の資料が撮影用の小道具だったとして、今は斜めになっているけど、こうやって全部真っすぐに直していくんですね(実演)。その直しに何十分もかかるんです。僕らは「気が済むまで整えてください」って、じーっと待っている。もう慣れました(苦笑)。
本郷:監督は画で情報を見せているので、雑多なものを見せようとするならちゃんとそう撮るんでしょうけど、見せたくないものだからちゃんと直しているんだと思います。気にさせるものはちゃんと気にさせるようにするけど、そうではないものは気にさせないほうがいい。そういった整理を頭の中でされている方なのだと思いました。
Q:各キャラの食べ方にも特徴がありますが、それも監督の指示なんですか?
山田:そう、カウカウのみんなの食べ方は獣ですね。とにかくかっ込んで、強く、速く咀嚼(そしゃく)する。食事場面はどんどん増えていて、たまに監督が食べるシーンをまとめて撮ろうとするんですよ。さすがに食べられなくてスピードが落ちてくると、「もっと強く速く!」って言われる。わかるんですけど、だったら余裕で食べられるスケジュールがほしいです(笑)。
Q:真司が実家でチャーハンを食べるシーンは、本郷さんの食べ方がとても丁寧に見えましたが……?
本郷:僕は食事というものがキライなんです。撮影用に作ったモノも苦手で、最初はスプーンでいじるだけで食べないようにしていたら、監督から「もっと食べろ」って注意を受けました(笑)。
山田:あー、だから慎重に食べていたんだ(笑)。
やりたいことは全部やる!
Q:借金というリスクを取って未来を掴もうとする真司。皆さんがリスクは覚悟の上でやりたいことといえば?
本郷:そもそも、役者とか表に出る仕事はものすごくリスキーなんですよね。出れば出るほど通常の生活には戻りづらくなるでしょうし、もしかすると明日には全部がなくなってしまうかもしれないという、危険と隣り合わせの仕事。
山田:確かに、ボーナスも退職金もない。俳優ってギャンブラーですよ。
白石:わたしは、今はアイドルとしてやっていますけど、その中でもいろんなジャンルのお仕事をやらせてもらっていて、将来は「こうなりたい」という願望もいつか出てくるんじゃないかと思うんです。でも、今はまだ特に決まっていないので、乃木坂46というグループをどれだけ大きくできるかに賭けて、がんばっていきたいです。
山田:僕は「やりたいことは全部やってやる!」という気持ちでいます。昔からそうなんですけど、俳優よりももっとやりたいことが見つかったら最高の人生だなと思っているんです。そう考えることで架空の逃げ道を作って、俳優の仕事に少しだけ無責任になれれば、むしろ仕事でも好き放題ができる気がする。やりたいことを探してカタチにしていくと楽しいだろうし、より芝居の楽しさも見えてくると思っているんです。
クレバーでマイペースな本郷と、天性の品の良さを感じさせる白石。2人の間で求心力を発揮する、「ウシジマ」シリーズの座長・山田。そんなキャリアも個性も異なる演者たちを一瞬で取り込み、ダークかつシュールな世界観で染め上げてしまうのがウシジマ・ワールドの面白さ。テレビドラマ「Season3」、映画『Part3』、映画『ザ・ファイナル』と続くこの秋は、怒涛のウシジマ祭で大いに盛り上がりそうだ。
映画『闇金ウシジマくん Part3』は9月22日より全国公開