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『彼らが本気で編むときは、』桐谷健太&ミムラ 単独インタビュー

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『彼らが本気で編むときは、』桐谷健太&ミムラ 単独インタビュー

生田斗真に酔っ払ってキスされた!?

取材・文:坂田正樹 写真:中村好伸

優しさに満ちたトランスジェンダーの女性リンコ(生田斗真)と、彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ(桐谷健太)、そして母・ヒロミ(ミムラ)の愛を知らない孤独な少女トモ(柿原りんか)。桜の季節に出会った3人が、それぞれの幸せを見つけるまでの心温まる60日を描く映画『彼らが本気で編むときは、』。『かもめ食堂』『めがね』などで知られる荻上直子監督が自ら“第二章”と銘打った本作で、対照的な弟と姉を演じた桐谷とミムラ。果たして二人は、どんな思いを心に編んでいたのだろうか。

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これまでとは違う荻上監督の第二章

桐谷健太&ミムラ

Q:セクシャルマイノリティーを題材にした荻上監督のオリジナル脚本を読んで、どんな感想を持ちましたか。

桐谷健太(以下、桐谷):派手な映画が多い中、日常の空気を醸し出すステキな本でしたね。しかもオリジナル脚本ってなかなかないので、映画らしい映画になるだろうなと思いました。撮影する前から、なんだかうれしくなりましたね。

ミムラ:荻上監督の作品が大好きだったので、オファーを頂いたときに「どんな作品だろう」とワクワクしていたのですが、マネージャーから「今までとちょっと違う感じかも」と言われて読んでみたら「本当だ、一歩踏み出している。第二章に入ったんだ」と思って。わたしは桐谷さんの姉役なのですが、ゆりかごに揺られているような気持ちいい映像とセリフが行き交うところに、バーンって違和感いっぱいに出てくる役なので、荻上ファンとしての葛藤と、役者としてのやりがいが入り交じった感情を持ちましたね。

Q:今回、生田さんがリンコを演じていますが、お二人はトランスジェンダーについてどのような考えをお持ちでしたか?

桐谷:もともと僕は東京に出てきたとき、周りはゲイの方やトランスジェンダーの方ばっかりだったんですよ。クラブで仲良くなったのですが、そういう仲間たちが芸能界に入る最初の第一歩というか、キッカケを作ってくれたんです。まぁ、その頃はトランスジェンダーという言葉は知らなかったのですが、自分の中では全く違和感がなく、特別視はしていなかった。普通に友達でしたね。

ミムラ:わたしも友達にいたので、特に意識して思ったことはないですね。ただ、あらためてトランスジェンダーの方たちの立場になって、ニュースなんかを見てみると、理不尽なことが多いなって思いますね。わたしは心身共に女性として生まれたけど、もし肉体が女性で心が男性だったら、果たしてこのニュース、どうやって見ればいいんだろうとか。この映画の中でも、生田さん演じるリンコさんが入院したときに、恋人役の桐谷さんが「なんで男性部屋なんだ!」って唯一、声を荒げるシーンがありますが。これが現実なんだろうなと。家の中では穏やかでも、一歩、外に出て理解を得られないときは、温度差があるのかなって思いますね。

荻上ワールドを受け継ぐキャラと壊すキャラ

桐谷健太&ミムラ

Q:ヒロミとマキオは姉弟ですが、それぞれの役を演じてみた感想を教えてください。二人は対照的ですよね。

桐谷:インタビューで記者さんに「トランスジェンダーの人に恋をするっていうのはなかなかないので、こういう役はすごく難しくないですか?」ってよく聞かれるんですよ。でも、マキオとしては別に「トランスジェンダーの人と付き合っている」という感覚ではないですからね。単純に、リンコさん自身を心から好きになったところから始まっている。それを核にして演じていこうとは思いましたね。

Q:いつもの桐谷さんよりマキオはほんわかした語り口でしたが、あれは意識的に?

桐谷:そうですね。僕みたいにこんな早口ちゃうなぁーと思って。リンコさんを好きだという気持ちを核にして、仕草とかしゃべり方もこんな感じかなと思って。あとは過去に経験したこととか、感じたこと、お父さんが家を出て行ってから、お母さんとかお姉ちゃんの女性の怖いところとか、弱いところとか、マキオはいっぱい見てきたと思うんですよ。そういうものを混ぜ合わせてマキオを作り上げていった感じですね。でも、映画を観た人が「カッコイイ」って言ってくれて。別にカッコイイ役でもないし、二枚目でもないのに、そのたたずまいとか、人を守る優しさとか、そういうところがステキに見えるんですかね。自分を褒められるより、マキオを褒められたことが何よりうれしかったです。

Q:一方、姉・ヒロミ役はいかがでしたか?

ミムラ:わたしの場合、ネグレクト(育児放棄)というテーマも入っていますので、いろいろ勉強もしました。いつもだと役の味方にならなければいけないのですが、今回に関しては、味方というよりも、わたし自身がヒロミという人間を把握してしまってはいけないんだなって思いましたね。ヒロミ自身が自分をわかってないんです。「もう、そんなのわかんないよ!」っていうセリフだけが、彼女の生が見えるところで、あとはみんな建前。周りに自分の本心を言える人だったら、ああはならなかったんだろうという苦しさもあったので、わかってはいけない役なんだろうと。

Q:役者としては、どう演じていいのか、難しいところですね。

ミムラ:そうなんです(笑)。気付いたときに「どうしよう……」と思って。ただ、その反面、今までと違うアプローチでチャレンジしなければ、というやりがいも同時に感じましたね。娘のトモがマキオとリンコさんと過ごしたことによって、いろいろな現実に立ち向かう大人たちの姿を見てきたので、逃げるのをやめてわたしにぶつかってくるんですよね。それに対して「わかんない」と言ってまた逃げる。いい雰囲気を壊すのがわたしの役目。ヒロミが出てきたときに「うわぁ!」って思ってもらえたら成功かな(笑)。

Q:出演シーンはそれほど多くなかったですが、すごくインパクトがありました。

ミムラ:それは、マキオも含めて、みんながヒロミのことをずっと考えてくれているからだと思います。「トモちゃんのお母さんってどんな人?」ってみんなが考え続けていてくれるので、みんなの上に雨雲のようにのしかかっていて、そしてポイントになるところだけ降ってくるみたいな感じでしたね。

生田斗真演じるリンコの進化する美貌

桐谷健太&ミムラ

Q:今回、トランスジェンダー役に生田斗真さんが挑戦していますが、共演されていかがでしたか?

桐谷:脚本を読んだとき、この役は斗真だったら似合うだろうなと思いましたね。実際に演じるうちに、どんどんキレイになっていきましたからね。リンコさんやマキオとして違和感なく、そこに居られたから、画面から醸し出されるあの空気感が生まれたのだと思います。

Q:リンコさんが愛を告白し、マキオさんがそれを受け止め、思わずキスするシーンはドキッとしました。

桐谷:あのシーンは、もともとキスする予定じゃなかったんですよ。確か僕から「このシーンでキスしたいんですけど」と提案しました。やっぱり、あの会話をしたら抱きしめたくもなるし、キスもしたくなると感じたから。しかも、そういうアクションがあった方が「あ、この二人は恋人同士なんだな」というエッセンスが生まれると思ったので。

Q:ちなみに感触は……いかがでしたか?

桐谷:(笑いながら)柔らかい感触でしたよ。斗真とは実は初めてじゃないんですよ。以前、連続ドラマの打ち上げで酔っ払って、思いっきりキスされているので(笑)。でも、あのシーンは、自分の気持ちをリンコさんにしっかり伝えてあげなければならない重要なシーンだったので、かなり難しかったですね。「全部受け止めるよ」とカメラを通して、リンコさんにも、お客さんにも伝わるように、無垢なマキオを生きました。

ミムラ:あのシーンは本当にステキでしたね。感情の盛り上がりが一番出ていて。ヒロミとしては見ていて、「わたしにもこんな優しいパートナーがいたら、こんなふうになってなかったわ!」と思っちゃいましたよ(笑)。


桐谷健太&ミムラ

昨年、auのCMの浦島太郎こと“浦ちゃん”で人気を博し、NHK紅白歌合戦への出場も果たした桐谷。そして、映画『カノン』やドラマ「トットてれび」(NHK)など、女優として精力的に活躍したミムラ。現在、ノリに乗っている二人が本作で静と動のパワーをぶつけ合う演技は、生田の美貌に勝るとも劣らぬ見どころになっている。荻上監督にとって『レンタネコ』以来、約5年ぶりの新作は自ら“第二章”と銘打つほど、気合いがみなぎる渾身の一作。彼らが本気でつくり出したら……その答えは劇場の中にある。

(C) 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

映画『彼らが本気で編むときは、』は2月25日より全国公開

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