『帝一の國』菅田将暉&野村周平&竹内涼真&間宮祥太朗&志尊淳&千葉雄大 単独インタビュー
10代だったらライバル視していたかもしれない
取材・文:高山亜紀 写真:中村嘉昭
古屋兎丸の人気漫画「帝一の國」が実写映画化。生徒会長選に命を懸ける野心いっぱいの男子高生を演じるのは飛ぶ鳥を落とす勢いの菅田将暉をはじめ野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗、志尊淳、千葉雄大といった見目麗しき面々。友情と裏切り、ライバルとの確執など、劇中ではさまざまな思惑が交錯するが、実際はうらやましいほど仲が良い。スクリーンからも伝わってくるワクワク感を作り上げた6人が舞台裏を振り返る。
漫画を実写にするのに必要なこと
Q:コミック原作ものの中でも、今回は特に難しかったのではないですか?
菅田将暉(以下、菅田):漫画原作を映画にする場合、僕としてはそのまんまやってもアニメーションでしかないと思うので、実写でやるからこその何かパワーを加えたいと思うんです。もちろん、ビジュアルも整えたいとは思いましたけど、どんなに必死になっているかが伝われば面白いなって思いました。
野村周平(以下、野村):原作が漫画だからこそポップに描かれていますが、実際は政治の話で、現代社会の核心を突いているようなところがあると思いますし、僕としてはやりやすかったです。(難しかったのは)表情くらいで。特に非現実なことはなかったですから。
竹内涼真(以下、竹内):ビジュアルとは裏腹に内容はリアルなものなので、僕も入りやすかったです。セリフや表情など漫画そのものを本編でも使っている部分もあったので、そこは現場で生まれるものを大切に。漫画に寄せるところと、自然に見せるところと分けながら、いろいろ探って微妙な狭間でやっていました。
間宮祥太朗(以下、間宮):今回、このメンバーでやると聞いて、おのおのぴったりだなと思ったので不安要素はまるでなかったんです。監督の永井聡さんとは初めてだったので、どんな感じかなと思ったぐらい。ビジュアル面はヘアメイクさんがすごく頑張ってくださったので、信じてやらせていただきました。
志尊淳(以下、志尊):どれほどリアリティーを出せばいいのか、そこが難しかったです。どれくらい原作に寄せていけばいいのか。キャラクター設定なども含め苦労したところではありました。
千葉雄大(以下、千葉):見た目では衣装合わせのとき、メガネと前髪のあんばいを、監督をはじめスタッフの皆さんがとてもこだわって、何度も修正しました。あとは漫画にあるようなポーズ。首の角度など所々監督に細かく指示していただいていました。
お弁当一つで30分笑える関係
Q:男子の絆が印象的ですが、改めて男同士の友情について感じたことはありますか。
菅田:一番はこの空気感です。お弁当一つで30分笑えるような関係のメンバーで、こんなに大きな舞台をやることができてすごくうれしい。シーン的にはみんなでフンドシ一丁になるところ。すごく寒かったんですが、一人だときつくてもみんなでやっているとそれぞれのお尻を見て笑ったり、剃り残しを確認し合ったりして、なんだかんだで時間は過ぎていく。そういう時間がやっぱり楽しかったですね。
野村:楽しかったです。ちょっと前の僕なら全員敵対していたかもしれません(笑)。
間宮:情緒不安定か! どんなヤバい奴なんだよ(笑)。
野村:僕らが10代だったら、お互いライバル視してピリピリしていたかもしれない。「俺はあいつよりうまくやるんだ」ってね。でも、今はもう23歳なので仲良くなりたいし、みんなが認め合っている。多分、(俳優としての)容量が増えたんです。
竹内:楽しかったですね。ちっちゃいことでも笑っていたし、あと男同士だと全然気を使わないのがいいんです。こんな感じなら男子校も悪くないなって思いました。僕もみんなと一緒に剃りたかったな。お尻出したかったです……。
間宮:淳と涼真は共演こそ初めてだけど、飲んだことがあって、僕この中で唯一、全員と面識があったんです。だから最初から友だちがこんなに集まって、大きい作品をやれることが不思議でワクワクしていました。撮影の後、飲んだりするとまあ酒がうまくて……(笑)。本当に今回は「楽しい」しか言ってなかったですね。
Q:どんな話をしていたんですか。
野村:込み入った話はしてないです。
菅田:醤油を口移しにしたり(笑)。みんながお互い好きすぎて……。
間宮:ある種、酒池肉林のような感じでした(笑)。
志尊:僕は皆さんとご一緒させていただくのは初めてで、第一線で活躍されている方ばかりなので、初めはどうやって入っていけばいいんだろうと思っていたんですけど、男気のある、優しい方ばかりで本当に楽しかったです。カメラがまわっている時はもちろん、まわっていない時も勉強になりましたし、刺激的なことばかりでした。
菅田:(志尊に)かわいいなぁ……(笑)。ずっと見ていたい! これも「男子校あるある」ですよ。かわいい男の子にみんながくぎづけになるという。
野村:でも結局女性には負けるんだよね。それまでは楽しくても、「やっぱ男だわ」って(笑)。
志尊:(永野)芽郁ちゃんが来た時にみんなからさんざん言われた。「何かおまえ今日ナヨナヨしてない?」って。何もしてないのに!(笑)
千葉:話を聞いているだけで面白いですよね。竹内くんも言っているように男同士だと気を使わないでいいのは確かにそう。おのおのが言いたいように言って、楽しむところは楽しむ。同じ男子校とはいえ僕の高校時代は特殊なんで、ちょっと違いますけど……。
昭和の曲は歌詞も全然違う!
Q:最後にこの作品の時代設定である「昭和」について、どんなイメージがありますか。
野村:Twitterとか今ほど情報網がなかったから何でもできて許されていたようなイメージがあります。
菅田:何もないからこその良さっていうのはある気がします。この前、(昭和時代は)歌がうまい人が多いなって気付いたんです。なんでかなと考えていたんですけど、あの頃はラジオから曲が流れてくる瞬間をとらえて、みんな必死で耳コピしようとしたんでしょうね。今ならいつでも調べられるから集中力のかけ方も違う。それは、情報や物がないからこそなのかなと思いました。
野村:竹内まりやさん、山下達郎さん、尾崎豊さん……昭和の曲はいいですよ。真面目で歌詞も素直というか。
菅田:そうだね。今は歌詞も勘ぐる、疑うの文化だからな。
間宮:僕は銀幕の映画スターのイメージがありますね。娯楽が今ほど多様化していない中で、みんなが映画を観に行って、スターに憧れて。
菅田:今は「スター」というような感じじゃないもんね。
間宮:観るのはほとんどYouTubeっていう人も多いし。
菅田:自分の家で作ったものを簡単に世界中に発信できる時代だからね。あれ? 一番昭和に近いのって千葉くん?
千葉:僕は1989年生まれで、ちょうど昭和と平成の境目なんだけど。3月で平成生まれだから同世代だよ(笑)。
間宮:僕らもそのうち昭和のような懐かしの存在になっていくんだろうな。次の元号は何になるんだろう? 周平は「野村元年にしてほしい」って言っていたけど(笑)。
見た目も壮観だが、話し出すと、それぞれが自分の役割を理解し、実に美しいチームワークを見せる。自分の意見をきっちり言いながら全員に気を配る菅田。大胆だが鋭い発言の野村。竹内は下ネタすら爽やか。名ストッパーの間宮がいるから菅田も野村も安心してボケられる。みんなのアイドル、志尊。そして千葉は、兄のように皆を一歩引いて見ている。「それぞれ認め合っているから仲がいい」という野村の言葉に納得のバランスだった。
映画『帝一の國』は4月29日より全国公開