『ジョン・ウィック:チャプター2』キアヌ・リーヴス&チャド・スタエルスキ監督 単独インタビュー
孫世代に突入したファンに感謝!
取材・文:編集部・石神恵美子
キアヌ・リーヴスふんする伝説の元殺し屋ジョン・ウィックが帰ってきた。舞台はニューヨークからローマへと広がり、アクションは格段にスケールアップ。『マトリックス』シリーズでの縁を経て、本シリーズで再び仕事をすることになったキアヌと、監督のチャド・スタエルスキがそろって来日し、アクションへのこだわりから、お互いの仕事ぶりまでを熱く語った。
“ジョン・ウィック”スタイルはキアヌが考案!
Q:前作以上に複雑なアクションが展開しますが、特に難しかったのはどのシーンでしたか?
キアヌ・リーヴス(以下、キアヌ):コンセプト的には、鏡張りの部屋でのアクションシーンじゃないかな。でも体力的にきつかったのは、カタコンベ(地下墓地)の銃撃戦だね。
チャド・スタエルスキ監督(以下、監督):カタコンベのシーンが一番大がかりだったのは確かだね。鏡張りシーンの撮影自体はそれほどでもなくて、どうすればいいかを考えるのが難しかった。
Q:今作ではかなりハードな銃トレーニングをしたそうですね。
キアヌ:そうなんだよ、本当に。ただ、柔道や柔術に関してもだけど、前作のおかげで基礎はできていたから、少し進んだ状態から取り組むことができた。それで今回は、銃のトレーニングを重点的にしたんだけど、特に複数の銃を扱う方法をね。1作目の銃さばきは「これがピストルで、あれがライフルですよ」って感じだったけど、今作では「これがピストルで、あのショットガン取って、今度はライフル、またピストルに戻って!」みたいな感じだった。
Q:ショットガンのシーンはとてもかっこよかったです。
キアヌ:ジョン・ウィックのテクニックは、現実にもありえそうなんだけど、実は僕がいい加減にやりながら生み出したテクニックなんだ(笑)。ショットガンを肩に担いだ状態で弾を込めたりね。
監督:ショットガンの扱いは難しいんだよ。再装填はとにかく難しい。
キアヌ:でも撃つのは好きなんだ。まずライフルをバンバンバンバン! って撃ち終わったら、今度はショットガンと弾を手に取って……。
監督:僕もそのシーンはかなり気に入っているよ。
キアヌ:(カタコンベにいると)ショットガンの銃声が、ズン、ブシューーーン! ブシューーーン! って感じに聞こえるんだよね。あのシーンでは、誰かが動くたびに砂ぼこりが立つ中、銃を撃っては壁に身を隠し、さらに相手も見ずに撃つところが好きなんだ。そして撃ち終えたら、弾をリロードしてね。
監督:本当に見事な光景だったよ。
キアヌ:生きてるなって感じがしたよ。話が逸れてごめんね(笑)。
監督:でもこの作品では、そうやって僕らが観たい映画を撮ったんだ。誰かが銃を撃っている姿を見ては、「僕たちもあれをやってやろう!」とか話し合ってね。だから、とても楽しかったよ。
アクション映画に捧げたオマージュ!
Q:その鏡張りの部屋のファイトシーンは『燃えよドラゴン』を、オープニングの映像はバスター・キートンを彷彿させます。監督なりのアクション映画に対するオマージュだったのでしょうか。
監督:一つには、子供のときから楽しんできた映画に、この作品を捧げたいという想いがあった。素晴らしいアクション映画は何によってつくられているのかという歴史を示すことにもなったね。あと、僕らにとって『ジョン・ウィック』をつくるのは楽しいことだから、この映画をあまり真面目に捉えすぎないように、という意味も込めて遊び心を取り入れたんだ。観客への目配せみたいなものかな。この映画を思い切り楽しんでほしいからね。病気を克服するといったような感動作ではないけど、しっかりキャラクターとストーリーを楽しんでほしかったし、僕たち自身をワクワクさせるためでもあった。
Q:そうして完成したジョン・ウィックというキャラクターは、今では人々の憧れになっていますよね。キアヌさんは、自分がジョン・ウィックと似ているなと思うところはありますか?
キアヌ:ないね。
監督:キアヌは彼よりもハッピーだよ。
キアヌ:そうだね。
監督:それに殺した人数ももっと少ない(笑)。
キアヌ:そうだね。でも演じるのにはとても楽しいキャラクターだ。
監督:ジョン・ウィックというキャラクターは、コミックや本、アニメから出てきたような感じがしないのがいい。ジョン・ウィックは僕やキアヌ、脚本家たちから生まれた、僕たち自身なんだ。ただ脚本を書いたという感じじゃなくて、話し合いをしてはアイデアを少し書き進め、ボツにしたり(笑)。とにかくとても協力的なプロセスだった。
『マトリックス』の仲間との再会
Q:お二人は『マトリックス』で一緒に仕事をされていましたよね(監督はキアヌのスタントダブルを務めていた)。さらに本作には、ローレンス・フィッシュバーンも参加していました。再び働いてみていかがでしたか。
監督:こうして別の映画で一緒に仕事をしたわけだけど、いい仕事ができたんじゃないかなって思うし、それをとても誇りに思える。幸運にも、僕たちはみんな、一緒に仕事するのが好きだったし、その点は本当によかったよ(笑)。キアヌは本当にいい奴だし、フィッシュバーンもね。僕にとっては魔法みたいな出来事さ。キアヌはジョン・ウィックというキャラクターに対して責任を負って、僕がアクションを手助けして。ストーリーに関しては、みんなで考えたもの。だからこの映画が上手くいったとしたら、それはチームとしてみんなで成功したということ。それって、仕事で得られるものとしては、かなり素晴らしいフィーリングだと思う。
Q:キアヌさんの長いキャリアの中でも、このシリーズは多くの人に愛される新たな代表作になったと思います。キャリアを通して、自分のイメージは変わってきたなと感じますか?
キアヌ:まず最初に、お褒めの言葉をありがとう。僕に贈ってくれた賛辞は、チャドに対してのものでもある。
監督:(照れくさそうに)いやいや、キアヌのおかげだよ。
キアヌ:(同じく照れくさそうに)いや、チャドのおかげ。だからこうしていられると思う。ええと、それでこれまでのキャリアについてだけど……。本当に素晴らしいアーティストたちと一緒に仕事をしてこられたと思う。多くの人々が熱狂してくれる映画に参加できて。今では(初期のファンの)子供たち……2世代にわたって、作品を楽しんでもらえている。3世代目にも突入したと思うし、このまま続けていければと思う。(しみじみとした表情で)あとはそうだね、成功した作品もあれば、上手くいかなかった作品もある。でも、いろんなことに挑戦してきて、さまざまなやり方があるんだということがわかったよ。
すでに第3弾のアイデアもあり!
Q:すでに続編が気になっているのですが、アイデアはあるのですか?
キアヌ:アイデアはいくつかあるよ。(うれしそうにもったいぶった表情で)でも本当に実現できるかはどうかな? なかなか気に入らないアイデアもあれば、「これはいい……」と思うものもある。今回の第2弾だって、ある脚本家が、“誓印”(ジョンが過去に交わした契約)というアイデアを思いついたことから、じゃあ、この誓印で何をするか。ジョンはその義務を果たしたくない! そこで彼はルールを破る! そしたら彼の家が燃やされる! 彼はすべてを失ってしまった! っていう感じで一つのアイデアから膨らませていったからね。続編でもアイデアがどう膨らむかはお楽しみだね。
元殺し屋の壮絶な血祭りバトルを描いた人たちとは思えないほどに、とにかく穏やかで謙虚なキアヌ&スタエルスキ監督。お互いの仕事ぶりについての語り口からは、固い信頼が感じ取れる一方で、アクションについて話すときはひたすらヒートアップして止まらない!「ジョン・ウィックは僕たちから生まれた」。その言葉が示すように、彼らのアイデアが尽きない限り、伝説の男はスクリーンで華麗な仕事を披露し続けてくれることだろう。
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映画『ジョン・ウィック:チャプター2』は7月7日より全国公開