『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』本郷奏多&佐藤栞里 単独インタビュー
大人になると当たり前じゃなくなる感謝の気持ちを思い出して
取材・文:高山亜紀 写真:高野広美
ポケモンシリーズの記念すべき20作目『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』。サトシとピカチュウの「出会い」を再現するなど、ポケモンファンにはたまらない内容になっている本作で、ゲスト声優に迎えられたのはまさしくポケモンで育った世代、本郷奏多と佐藤栞里。ポケモンマスターを目指すサトシとピカチュウと一緒に旅する、ソウジとマコトの声を務めた二人が、興奮ぎみにポケモンの思い出や作品に込めた思いを語った。
ポケモンを観て、無邪気さを取り戻したい
Q:今回の役柄であるソウジとマコトはサトシの旅の仲間という、ポケモンファンにはたまらない設定ですね。
本郷奏多(以下、本郷):子供も観られるキラキラした作品に出ることってほとんどないので、本当に僕でいいのかなってちょっと思いました。今回の取材などで、「キミにきめた!」とかポーズをとったりするんですけど、心のどこかで引いて見ている自分がいて、「似合ってないな」って思ってしまうんです(苦笑)。でもこれを機にもっとたくさん、CMなどのオファーが来たらうれしいです!
佐藤栞里(以下、佐藤):いいですね(笑)! わたしはびっくりしました。声のお仕事でも、こんなに全編にわたって出たことがなかったので、台本を読んで、「わたしにできるのかな?」と最初は思っていたんです。でも、マコトのことを知れば知るほど、好きになって、演じている間はとても楽しかったです。
Q:お二人を反映されたキャラクターにも見えますが、自分で似ていると思うところはありますか。
本郷:賢いキャラクターをやらせてもらうことが多いので、確かに入りやすかったと思います。サトシやマコトというのは、考えたまま、直感で動くようなキャラクターだと思うんですが、自分が演じるソウジはそこに対して、一歩引いて冷静に見られる視点を持っている。そこは自分に近い部分があったんじゃないかと思っています。
佐藤:マコトの元気なところとか、「そのことしかいまは考えられない!」と一つのことにのめり込んでしまうところはわたしもそうです。共通している部分だと思います。
Q:マコトはサトシたちとすぐ距離を縮めていきますよね。そこにも佐藤さんとの共通点を感じました。
佐藤:実はわたし、人見知りなんです。マコトを見て、こういう風に人と接したらいいんだなとすごく勉強になりましたね。わたしが常に心がけているのは、相手に対して、とにかく元気にあいさつすること。本当に基本的なことなんですけど、以前、「おはよう!」と笑顔で言われて、うれしいと感じたことがあったので、わたしもそうするようにしています。
本郷:子供の無邪気さって、実はパワーがあって、すてきなものなんだなって、確かに思いますよね。ポケモンを観て、ちょっと心が洗われたらいいな。
仲間の大切さを教えてくれたポケモン
Q:ポケモン世代のお二人ですが、ポケモンで学んだことはありますか。
本郷:ポケモンのゲームなんですけど、トレーナーは野生のポケモンにボールを投げて、捕まえるんですが、他人が育てたポケモンにボールを投げると、怒られるんですよ。「ひとのものをとったらドロボウ!」って。それは鮮明に覚えていますね。
佐藤:わたしはやっぱり、仲間の大切さや、そういう相手を見つけたときに絶対に離れない絆ですね。親友、家族、そういうわたしにとって大切な存在をもっと大事にしたい気持ちを学ばせていただきました。
Q:20年前、ポケモンを観ていたときはどんな子供だったのでしょうか?
本郷:それこそ、サトシたちのように外を走り回っていましたし、もちろん、ポケモンのアニメも観ていたし、ゲームもやっていました。昔は元気な子供でしたね。いつの間にか、こうなっちゃいましたけど(苦笑)。
佐藤:わたしも同じく外を走り回っていました。一輪車、缶蹴り、竹馬、球技……いまより運動神経がよかった気がします。大人になると、体がだんだんにぶくなる。なかなか思うように体が動かないなって最近、思うんです(笑)。
人生史上最高の作品に出演して……
Q:二人とも同年齢の26歳ですが、同じようにポケモンを観て育った世代にアピールしたいことは?
本郷:これまでの19作は新しい伝説のポケモンが出てきて大暴れするようなものでしたが、今回は20周年記念作品。ある種、パラレルワールド的な話にもなってしまうのですが、小っちゃい頃、観ていたサトシとピカチュウの出会いをはじめ、テレビアニメ第1話に映っていたホウオウ、バタフリーとの感動のエピソードなど、とにかくいい話がハイライトで、ぎゅっと詰めこまれています。新しいポケモンも出てきますが、昔、熱中したエピソードの数々をいまの新しい技術でもう一回、観られるというのがすごくて。あの頃を思い出して、楽しめると思います。今回は特別な作品だと思うので、特に小っちゃい頃にポケモンに親しんでいた世代にこそ観てほしい作品になっているんじゃないかと思いますね。
佐藤:大人になってくると当たり前のことを感謝できなくなったりすることがあると思うんですけど、この作品をきっかけに周りの人々にもう一度、焦点を合わせて、「ありがとう」と感謝の気持ちを感じてほしいと強く思いました。
Q:この作品が大きな自信になったのではないかと思います。今後、声の仕事で、やってみたいことはありますか。
本郷:ポケモン映画に声優として出させていただくって正直、もうゴールというか、到達点に立っているような気がいまはしています。声のお仕事はもちろん、これからもやらせていただきたいのですが、とにかくこの人生のなかで、ポケモンという作品に出させていただいてよかった。その一言に尽きます。
佐藤:実はわたし、ポケモンのお話をいただく前、声のお仕事はやりたいけど、風や草、土の役でもいいと思っていたんです。
本郷:それはちょっと人がやりそうもないですね(笑)。
佐藤:ほんとそれくらいから始めたいって気持ちだったんです(笑)。それほど、憧れていたお仕事だった上に、出演できたのがあのポケモンだったので、いまはもうそのうれしさでいっぱい。この作品に携わらせてもらって、声のお仕事って楽しいなとより一層思えたので、これからも機会があればぜひやっていきたいと思っています。
アニメの世界とはいえ、子供の頃に憧れていたキャラクターと一緒に旅ができるなんて、いったいどんな気持ちなのだろう。そんなとてつもない機会に恵まれた本郷奏多と佐藤栞里はいまなお冷めやらぬ熱気に包まれていた。ピカチュウのかわいらしさを語る本郷はすっかり童心に帰った様子で、お互い人見知りらしいのに佐藤と意気投合。もしかしてポケモンは世界の合言葉? この世界のどんな壁も取り払ってくれる最強の言葉なのかもしれない。
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『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』は全国公開中