『怪盗グルーのミニオン大脱走』笑福亭鶴瓶&松山ケンイチ&生瀬勝久 単独インタビュー
なくすから?マネージャーが台本を渡してくれない!
取材・文:よしひろまさみち 写真:尾鷲陽介
全世界で大人気のキャラクター、ミニオンたちが活躍するヒットシリーズの最新作。大怪盗だったグルーが改心したものの、悪党バルタザールを捕らえることに失敗。ミニオンたちとの関係にも溝が生まれ、彼らはグルーの元を去ってしまう……。この笑いと感動を詰め込んだアニメーション映画で日本語吹き替えを担当したのは、1作目からグルーを演じている笑福亭鶴瓶。そしてバルタザール役で松山ケンイチ、グルーの双子の兄弟ドルー役で生瀬勝久がシリーズ初参戦。息もぴったりな三人が、吹き替えの裏側を大いに語り合った。
生瀬さんはグルーを知らなかった!?
Q:鶴瓶さんはずっとグルーを演じてこられていますが、生瀬さん、松山さんはシリーズ初参戦にしてハリウッド映画の吹き替えも初めてですね。
生瀬勝久(以下、生瀬):じつは不勉強ながら、このシリーズを存じ上げておりませんでした……。
笑福亭鶴瓶(以下、鶴瓶):そこがあかんのや(笑)。
生瀬:いやいや(笑)! 出演が決まったとき、周囲は大騒ぎ! その反応を見て、いかに不勉強だったかを思い知らされるとともに、このシリーズの認知度や偉大さ、面白さを知ったんですよ。でも、キャラクターとしてのミニオンは知っていたんですよ!
鶴瓶:ちょっと待ってくださいよ……。「怪盗グルー」シリーズだっていうのに、ミニオンだけ知ってた? なんでグルーの名前聞いてわからんねん!
生瀬:ミニオンは劇場で映画が始まる前に出てくるキャラクター、っていう認識で、そういうキャラクターだと思い込んでいたんです(笑)。
鶴瓶:何言うてるの。グルーが主役やねん(笑)! 松山のケンちゃんなんて、シリーズ全部観ていて大好きだって言ってくれてるのに……。
松山ケンイチ(以下、松山):いやー、本当にびっくりしましたよ。本当に大好きなシリーズなので、自分が出ることなんて考えたことがなかったんです。だって大好きだからこそ、作品の一部になってしまったら楽しんで観られなくなっちゃう、って思うんで。
鶴瓶・生瀬:そうか~、そう思うんだ。
鶴瓶:いや、すごかった。声を聞いていても、全然松山ケンイチの顔が浮かんでこない。
生瀬:ホント! あの役……ダンバザール?
鶴瓶:バルサザール!
松山:……お二人ともまだ一度もちゃんと言えてないですよね、バルタザールって(笑)。
鶴瓶:それ、バルタザール! でござーる、な!
生瀬:ござーる、はいらない。
鶴瓶さんは収録が始まるまで台本を読んでいなかった!
Q:どのシーンが気に入っていますか?
鶴瓶:ケンちゃんはやっぱりシリーズのファンだから、グルーとドルーがバルタザールの基地に侵入しようとして、仕掛けられた毒針の罠をよけようとしているところ、あのときのドルーのおしりの角度が(イイ)! とかって言ってんのよ。
生瀬:でも、ああいうディテールがアニメーションの醍醐味でしょうね。決して不幸にはならないで、確実にハッピーになれるっていう描写。なかなか実写ではできないですし。
松山:いや、あのシーン、実際にお二人にやってもらいたいんですよね。全身タイツ着て。
生瀬:あんなに脚細くないからなぁ……(笑)。
鶴瓶:僕、脚細いから、あれは着てみたいな、と思いますよ。
生瀬・松山:(笑)。
鶴瓶:あとね、バルタザールのガム風船に入ってみたいな、って思いますよ。ハイレグのな(笑)。まぁ、ようあんなこと毎回毎回考えるな、って思いますわ。
Q:今作に限らず全作、細かい描写まで楽しく描けていますよね。
鶴瓶:それ、いつも収録が終わってから思います。収録前は脚本読まないから。だから、全部終わってからいつも「わぁ、こんなええ作品に出たんだ」っていう、毎回新鮮な気持ちに……いや、事前にマネージャーが台本を渡さないからや(笑)!
生瀬:なくすから?
鶴瓶:子供やないんやから(笑)。
生瀬:でも、俳優が事前に役をつくってしまわない方がいいんですよね。監督さんが演出することなんで。
鶴瓶:そうやな……そういうことやな(笑)。
松山:(笑)。オリジナル版の吹き替えのときにはアニメーションができていないんですって。
生瀬:絵が口の動きを合わせてくれるってこと?
鶴瓶:ええ!? それええやん!
松山:グルーはセリフ量が多いから。
鶴瓶:いつもそうなんやけど、僕は口の動きに合わせてないんですよ。いろいろ試してみたんだけど、最終的に言われたのが「この台本をただ読んでください」って指示。
生瀬:(笑)。すごい後ろ向きですよね……。それが鶴瓶さんのトリセツ(取扱説明書)ですよ。
鶴瓶:アドリブも入れよか、ってことになってやってみたんだけど……カットされたわ……。
生瀬・松山:(笑)。
鶴瓶:ただ、大阪弁独特の長さがあるから、台本のままだと収まりが悪いとこがあってな。そこは僕が「大阪弁やったらこう」っていう提案をして、うまく収まったところはありますね。
松山:僕も変装したバルタザールのときに、方言をしゃべっているんですが、もともとはフランス語なまりの英語なんですね。それで監督から「ここはなまってほしい。(出身の)青森弁で」と指定されたんですよ。やりやすいんですが、やっぱり鶴瓶さんと同じで、台本のままだとうまくハマらないことがあって、ちょいちょい「はぁ」とか感嘆詞を足してました。
鶴瓶:大阪弁を知らない人が翻訳したとは思えんくらいの台本だったけど、細かいところは、な。
松山:鶴瓶さんは言葉のプロフェッショナルですから!
鶴瓶:落語でいろんなバージョンを経験してますんでね。言い方悪いけど、ごまかすことはできます。
芝居のタイプが実写とは大違い
Q:収録は別々でしたが、この面々で共演したことについてはいかがですか?
生瀬:僕と鶴瓶さんはNHKのドラマ(1988~1989年の「純ちゃんの応援歌」)でも兄弟役をやっていて、久しぶりに共演させていただけて光栄でした。
鶴瓶:僕、ケンちゃんとは初めてやな?
松山:そうですね。鶴瓶さんとは初めてです。生瀬さんとは「ごくせん」で共演していて……。
生瀬:そう! それも「ごくせん」の後ろの方ですよ! あのとき、まだ松山くんってわかっていなかったくらいの役どころ。それが今じゃ大河の主演までやって……もうちょっとあのとき、かわいがっておけばよかった(笑)。
松山:(笑)。
鶴瓶:ぼーっとしてるから抜かされるんや(笑)! 「スジナシ」(台本なしのアドリブで鶴瓶とゲストが二人芝居をする番組)に出てもらったときも、大失敗しよって。
生瀬:はい……。一番やってはいけないことをやってしまいました(笑)。
松山:でもあの番組は怖いですよ(笑)。この作品は芝居を型にはめないといけないけど、あれは型がないですから。
鶴瓶:そうそう。だから僕は型にはめんのがしんどいから、本当に大変だったですね(笑)。
生瀬:型にはめることもそうそうない機会ですけど、僕はハリウッド映画の吹き替えなんてやりたくてもできることじゃないと思っていたんでね。しかも鶴瓶さんとまた兄弟役をやらせてもらえるなんて思いもしなかったですから、できればまた……。
松山:これ、まだ続きそうですもんね。
鶴瓶:ドルーもバルタザールもまだ出せるキャラやもんな。
松山:いや、そしたらまずは『怪盗グルーのミニオン危機一発』の悪役エル・マッチョを復活させて……。
鶴瓶:やめて!……あ、グルーの声で言うてもうたわ(笑)。
さすがお笑い界の重鎮、笑福亭鶴瓶。初参戦の生瀬、松山から小ネタを引っ張り出す、出す! バラエティー番組の収録のような取材で、裏方を含め笑いが絶えなかった。このわちゃわちゃした雰囲気が、作品にもしっかり反映されているだけに、シリーズ未見の人でもハマる作品に仕上がっていると確信した。
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映画『怪盗グルーのミニオン大脱走』は7月21日より全国公開