『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』山崎賢人&伊勢谷友介 単独インタビュー
やっぱりプレッシャーはかなりあった!
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
独特の画風や奇抜な世界観でファンを増やし続けている荒木飛呂彦の超人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」。その第4部こと「ダイヤモンドは砕けない」が、三池崇史監督によって実写映画化された。架空の街・杜王町を舞台に、特殊能力(スタンド)を持つ者同士のバトルや友情を描く本作で、主人公の高校生・東方仗助を演じた山崎賢人と、仗助と共に戦う空条承太郎を演じた伊勢谷友介が撮影のウラ話を明かした。
超人気コミックの実写化は賛否両論!
Q:熱狂的なファンを持つ「ジョジョ」の実写化。オファーを受けたときのお気持ちは?
山崎賢人(以下、山崎 ※山崎の「崎」は「たつさき」):プレッシャーがすごかったです。でも、原作漫画を読ませてもらって、ストーリーもキャラクターも世界観も本当に面白く、仗助のポリシーを持っているところや機転の利くところがカッコイイと思ったので、ぜひ演じさせていただきたいと思いました。
伊勢谷友介(以下、伊勢谷):僕は連載スタート時からずっと「ジョジョ」を読んでいて、特に3部・4部あたりに一番ハマっていたんです。あの独特のグラフィックが好きで、藝大生だった僕としては、本当にリスペクトしている特別な漫画。それを実写化でどうやるべきか、プレッシャーはかなりありました。世の中的には「実写化してほしいけど、怖いからやってほしくない原作」だと思うんです。その中に飛び込むのは正直勇気が要りましたが、“ほかの役者さんが演じるなら承太郎は自分がやりたい”という、役者としてのエゴがあったんですよね。
Q:実際、キャスト発表時に原作ファンから賛否両論の声が上がりました。意識はされましたか?
伊勢谷:インターネットの声を見るのって、得することがないんですよ。悪い意見はもちろんのこと、良い意見でも期待を裏切る可能性があるから、どっちにしても良くは転ばない。できるだけ意識しないようにと、役者さんなら誰もが思うんじゃないですか。ただ、ニュースとかになって目に入ってしまうので、完全に無視するのは無理なんですけどね。
山崎:そうですね、いやでも耳に入ってきてしまうけれども、気にしないようにしていました。三池組に参加してみたかったし、これだけのキャストさんが集まっているし、むしろ「やってやろう!」と思いました。
伊勢谷:僕は、アニメの実写化作品ですが『CASSHERN』という映画に出演したんですけど、あの頃(2004年公開)はSNSも今ほどではなかったですし、「伊勢谷の顔はキャシャーンと違う」といった声はそれほど聞こえてこなかったです。でも、「ジョジョ」のビジュアルにほれているファンは本当に多いから、今まさに「承太郎と違う」って声が届いてくるというね。『あしたのジョー』の力石徹役の時も聞こえていたので、もう慣れているのですが(苦笑)。
原作から得た芝居のヒント
Q:普段は温厚だけど、怒ると人柄が一変する。そんな仗助の表情の演技が印象に残りました。
山崎:仗助がキレたときの表情などは、かなり練習しました。原作の顔つき、角度まで考慮したりして。そこまでやるのはどうかな、とも思ったんですけど。
伊勢谷:いやいや、そういうのって大事かも。今回のようなグラフィックの感じを取り入れる芝居をする映画ってあまりないだろうから、勉強になったんじゃない?
山崎:そうですね。漫画を読んでいると感情と表情が違うときがあるんです。例えば、すごく怒っているはずなのに顔は笑っていたりする。そこから芝居のヒントを得ることってあるんですよね。あとは、原作で描かれている仗助の人間性を大事にしようと思っていました。彼の家族への思いとか内面的なことを自分の中で積み重ねていって、そこから役に入っていきました。
伊勢谷:承太郎は原作でもクールなキャラなので、芝居でもそのような感じでやっていました。もちろん、彼の生真面目さとか、置かれている状況での感情は、リアルに考えて演じています。ただ、僕は承太郎を演じるには歳を取り過ぎているのかなと。ちょっと落ち着いた人に見えてしまったかな、とは思いますね。
Q:でもファッションも含めて承太郎の再現度は、かなり高かったような気がします。帽子の角度などにもこだわっていたのでは?
伊勢谷:あれは、右にツバがついているのと左にツバがついているのと2種類用意してあって、カメラのアングルで使い分けているんです。僕が研究したというよりも、スタッフの方々のこだわりです。ビジュアル要素も、原作のトリッキーな部分を面白く表現しているところですよね。
スペインロケではオフも堪能
Q:杜王町の世界観を再現するべく、スペインで行われた撮影はいかがでしたか?
伊勢谷:日常ではなくスタンドが存在する異次元で芝居をするという意味では、スペインで撮影してよかったと思います。歩いている人の後ろ姿が日本人なんですけど、前から顔を見ると外国人だったりする。その画(え)がジョジョの世界観に近いような気がしました。
Q:山崎さんは、オフの時間にサッカーを楽しんだとか。
山崎:そう、神木隆之介くん(仗助の同級生・康一役)と伊勢谷さんの事務所の俳優さんと。ちょうど、伊勢谷さんが海外に行っている間で……。
伊勢谷:そのとき僕はグッチ主催のパーティーでロサンゼルスに行かせてもらっていたんです。会場に(レオナルド・)ディカプリオとか(シルヴェスター・)スタローンがいてビックリしましたよ(笑)。
山崎:僕らはひたすら撮影でした(笑)。
伊勢谷:そういえば、スペインの撮影中に共演者の方々とご飯に行く機会があったんですよ。そのお店のテラスで「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の「Chan Chan」って曲を弾き歌いしている人がいて、山崎くんが踊り出しちゃってね。ノリノリで。
山崎:なんかリズムに乗っちゃって。超ヘタなんですけど。
伊勢谷:その映像、僕が撮っておいたから(笑)。
Q:山崎さんは、先輩の伊勢谷さんから役者として刺激を受けた部分はありましたか?
山崎:伊勢谷さんって、どんな時でもすごく自由なんです。そのスタンス自体が勉強になります。
伊勢谷:それはうれしいね(笑)。山崎くんもどちらかというと自由なタイプだよね。現場で芝居に迷っている感じもしなかったし。決して好き勝手にやっているわけではなく、周りには気を使っていて。スタッフさんとかもやりやすいと思う。
想像を超えるスタンドの能力
Q:仗助はリーゼントの髪型を侮辱されるとキレますが、お二人には自覚されているウィークポイントはありますか?
山崎:基本的に、誰かにけなされると「ウウッ」てなります。
伊勢谷:それ、誰でもそうなんじゃない? ここが彼のいいところなんですよ。堂々とスパッと言うけど……という(笑)。逆にスゴイと思う。
Q:仗助のように、直情的に反応してしまうとか?
山崎:いや、僕はキレたりしないです!
伊勢谷:それじゃオチがないじゃない(笑)。
Q:最後に、ここまでファンを虜にする「ジョジョ」の魅力について、お二人の考えを聞かせてください。
山崎:出てくるキャラの全員が魅力的。セリフもみんながマネしたくなるものが多いし、「奇妙な冒険」という言葉がタイトルにもあるように、独特の世界があるのでクセになる。スタンドという登場人物の特殊能力を画で具現化した作品だから、ずっと残っているのだろうし、これからも読者を魅了し続けるのだろうなと思います。
伊勢谷:スタンドって、超能力の延長線上にあるものなんです。守護霊的なものとも言えるし。「ジョジョ」は、それぞれのキャラが持つスタンドの能力が僕らの想像をはるかに超えていたんです。そして、それを表現するためのグラフィックデザインが群を抜いている。想像外の攻撃方法と、スタンドを扱う者同士の先を読み合う頭脳戦の面白さも魅力ですね。
素直な気持ちを言葉にする自然体の山崎に対し、さりげなくフォローを入れながら場を盛り上げる手練の伊勢谷。そんな2人からは、「ジョジョの実写化」という難関を乗り越えた者同士の連帯感が伝わってくる。原作の細かなネタも多々登場する本作。漫画を原作とする映画には賛否は付きものだろうが、その中でもひときわ原作への愛を感じさせる作品なのではないだろうか。
(C) 2017 映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」製作委員会 (C) LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』は8月4日より全国公開