『探偵はBARにいる3』大泉洋&松田龍平 単独インタビュー
作品と共に歳をとる時間の流れがシリーズならでは
取材・文:斉藤由紀子 写真:杉映貴子
札幌・ススキノを舞台に、大泉洋演じる探偵と松田龍平ふんする相棒・高田の活躍を描く『探偵はBARにいる』シリーズ第3弾。今回は、失踪した女子大生(前田敦子)について調査を始めた探偵たちが、モデル事務所の美人オーナー(北川景子)に出会ったことによって、裏社会が関係する大事件に巻き込まれていく。本作でもあうんの呼吸を見せた大泉と松田が、軽妙なトークで撮影を振り返った。
シリーズものならではの楽しみと不安
Q:ファン待望のシリーズ最新作。どんなお気持ちで臨まれたのでしょう?
松田龍平(以下、松田):前作から4年ぶりだったので、どうなるのかな? という不安はありました。でも、ロケ地はこれまでと同じ北海道だし、大泉さんをはじめ探偵側のメンバーを演じる方々も撮影スタッフの皆さんも同じでしたので、始まったら「ああ、これだ」ってなりました。久々に集まれてうれしかったです。
大泉洋(以下、大泉):1よりも2よりも面白いものを、という想いがありましたし、台本の早い段階でもらって直しにも関わっていましたから、僕も不安は少しありました。松田くんとも4年ぶりに会うから、怖い人になっていたらどうしよう……とか。
松田:え? なんですか?
大泉:いや、うるさい俳優になっちゃって、「大泉さんがそんな芝居じゃ、僕はできないな」なんて言われたら、とかさ。
松田:どちらかというと、大泉さんのほうがちょっと変わったような気が……。
大泉:おい、どこがだよ。何が変わったのか聞きたい! 一回、レコーダーを止めてもらおうか(笑)。
松田:いや、大丈夫です。何も変わってないです(笑)。
大泉:うるさくなった俳優が、パンツ一丁で船に乗りませんよ。なんだってできますよ、僕は。
松田:確かに。あのシーン(真冬の海を走る漁船の船首に、探偵がくくりつけられている拷問場面)はパンツ一丁が正解でしたね。服を着ていたらむしろカッコよくなっていた(笑)。サスガです。失礼しました。
大泉:そうでしょ? 松田くんも変わってないし、もちろん僕も変わってない(笑)。本当に4年間のブランクを感じさせない楽しい現場でした。
Q:大泉さんは、脚本にも関わっていらしたんですね。
大泉:今回は、ほぼオリジナル脚本だったので、みんなで良くしていこうという想いがありまして。だから、プロットを早く上げて頂いて、初めに観るお客さんの目線で意見をさせてもらったんです。もうちょっとヒロイン(モデル事務所のオーナー役・北川景子)の想いを足したらどうだろう、とか。
松田:僕は、大泉さんのOKが出ないと台本をもらえないんですよ(笑)。
大泉:いや、僕が松田くんに見せないでと言っているんじゃないんですよ。ただ、みんなで直しをやったら大変ですからね。今回はわたしが俳優代表として、携わらせて頂いただけなんです。
松田:でも、ちょっと寂しいですよね(笑)。
大泉:(スタッフに)次からは松田くんにもプロットから入ってもらおう!
松田:ハハハ。
特殊なアクション撮影でヘロヘロに
Q:今回のアクション撮影の一部は、これまでとは撮り方が違ったそうですね。
大泉:そう、スローで動いて、それをハイスピードカメラで撮ったんです。パンチを当てることができるのはいいんですけど、その代わりに時間がかかるから大変でした。しかも、何度も撮り直したんです。ノーカット一回勝負、太極拳のような動きなので、一回戦が終わるとゼエゼエしていましたね。僕らの動きもそうだし、カメラワークもあるから、すべてがうまくいかないとOKが出ないんです。
松田:本当に時間をかけて撮っていました。
Q:松田さんと志尊淳さん(裏社会のボスの用心棒役)との一騎打ちも見どころですね。吹き替えは一切なかったそうですが、撮影現場はいかがでしたか?
松田:今までのシリーズは、戦う相手がアクションのプロの方だったので、差を感じましたね。プロの方だと、素人のこちらにテクニックがなくても、アクションがきちんとして見えるんです。
大泉:アクションって、受けるスタントマンの方々がスゴイんですよね。
松田:本当に大変でした。志尊くんもぐったりしていましたね。
大泉:事前の練習もやったんでしょ?
松田:やりました。それがなかったらキツかったでしょうね。今までも練習はありましたけど、実際にカメラの前でやる殺陣の動きではなかったんです。現場に行ってから動きをつけてもらったものを雪の上でやっていたんですけど、シビアなことをやっていたのだなと改めて思いました。
Q:ロケ地の北海道は大泉さんの地元。撮影中は、キャストの方たちをおもてなしされたのでしょうか?
大泉:おもてなし、というほどのことではないんですけど、食べるところを知っているから、僕が皆さんをご案内することは多いですね。今回も北川さんと行ったり、あっちゃん(前田敦子)とは……。
松田:スープカレー屋に行きましたよね。
大泉:そうそう。
松田:北海道でロケをするたびに、僕が行ってみたいお店を大泉さんにおさえて頂くんですけど、一軒だけ大泉さんに「そこは予約が取れない」と言われたお店があったんです。そうなんだ……と思っていたら、北川さんが普通に「行きました」っておっしゃって。「え、予約取れない店じゃなかったんですか?」って大泉さんに言ったら、「知らないよ!」って返されました。
大泉:なんかザックリとした話だけど、そんなことありましたか? わたし、「知らないよ!」なんて逆ギレしましたか(苦笑)。
松田:だんだん、僕に対するやさしさがなくなってきたような気が(笑)。
大泉:そんなことないですよ。いつも手取り足取りですよ。
松田:そうですね。お世話になっています。
お互いのアドリブがスゴイ!
Q:アドリブも本シリーズの注目ポイントだと思うのですが、今回、特に印象深かったシーンといえば?
大泉:みんなで逃げるシーンがあって、エレベーターの中に逃げ込むんです。後ろから追いかけられているから、緊迫しているわけですよね。で、乗った瞬間に「高田がただボーっと立っている」というところが好きですね。“閉まる”のボタンを押さないんですよ。
松田:あれは大泉さんの案なんです。
大泉:僕じゃないって。松田くんのアドリブなんだって。
松田:いや、大泉さんだと思いますよ。あのとき、「確かに押さないほうが面白いな」と思った記憶があるので。
大泉:いやいや、こっちこそ見ていて「あ、押さないんだ」って思ったんだけど、おかしいなあ(笑)。
松田:こんな感じで、あのシーンに関してはずっと曖昧なんです(笑)。
Q:高田はちょいちょい方言を話しますが、あれも松田さんの案なんですか?
大泉:そうそう、松田くんは毎回、どこかで北海道弁を入れようって狙っているんです。今回も、台本にあった「どうした?」というセリフを方言にしたいって言うから、北海道だと「なした?」になるよって教えたんだけど、信じないのか「いやー、そうじゃないです。僕は『なしたぁぁぁ』って言いたい」とか言ってくるんです。
松田:大泉さん、細かいんですよ。
大泉:細かいじゃないでしょ(笑)。方言なんて決まっているんだから。しまいには、「高田は北海道出身じゃない」って言いだして。
松田:実は、僕自身が北海道の人の感じではないとわかっていて、だからそれに(高田の設定を)寄せていきたくて、言葉も少し違うようにしたかったんです。
大泉:高田が北海道出身じゃないなんて設定初めて聞いたわ!
Q:そんなお二人のやり取りも、映画と同様に4年間のブランクを感じさせませんね。
松田:でも、完成版を観たとき、大泉さんも僕も歳を重ねたなあと思いました。
大泉:僕はそんなには感じなかったんですけど、昨日の夜に寝つけなくて、1と2を観ちゃったんです。そしたら、1は若かったなあと思っちゃいましたね。まあ、僕も作品と共に歳をとっていますから、その時間の流れがシリーズならではなので、いいなとも思いました。今回の3も、ずっと待っていてくださった皆様に楽しんで頂きたいですね。
絶妙にトボケることで大泉のツッコミが引き立つように配慮する松田と、そんな松田を心から信頼している様子の大泉。まさに探偵と高田さながらの2人のリアルなバディ感は、シリーズ3作目にしてより強さを増していたようだった。笑って泣ける大人のエンターテインメントである本シリーズが、この先もずっと続くことを願いたい。
(C) 2017「探偵はBARにいる3」製作委員会
映画『探偵はBARにいる3』は12月1日より全国公開