『鋼の錬金術師』本田翼&ディーン・フジオカ&蓮佛美沙子 単独インタビュー
人気漫画の実写作品では背負うものが違う
取材・文:磯部正和 写真:高野広美
全世界でシリーズ累計発行部数7,000万部を超える荒川弘の大人気漫画を実写映画化した『鋼の錬金術師』がいよいよ公開を迎える。これまで、アメリカ・ロサンゼルスやフランス・パリでのコンベンションでも人気を博し、世界190か国での上映も決定するなど注目度の高さを誇る本作だが、ウィンリィ役の本田翼、マスタング大佐役のディーン・フジオカ、ホークアイ中尉役の蓮佛美沙子が、人気漫画の実写化に挑んだ思いなどを語った。
大人気漫画の実写化に思うこと
Q:世界中にファンが多い「鋼の錬金術師」という人気漫画の実写化ということで、オファーを受けたときはどんなお気持ちだったのでしょうか?
ディーン・フジオカ(以下、ディーン):オファーをいただくまで原作漫画のことは存じ上げなかったのですが、お話をいただいてから原作を読んで、いろいろ調べていくうちに、ファンの規模感にビックリして、改めて光栄なお話だなと思う一方で、ファンの期待を裏切らないようにできることをすべてやって臨もうという気持ちになりました。
蓮佛美沙子(以下、蓮佛):大人気漫画の実写映画には、過去にも何回か出演させていただいたのですが、背負うものが違うという印象を持っていました。原作ファンは、漫画のなかにしっかりとした正解を持っているので、それを理解しながら、わたしたちが実写映画として、成立させなければいけないという責任の重さを感じていました。
本田翼(以下、本田):小さいころから大好きな漫画だったので、特別な思いはありましたが、クランクインの前に、(エド役の)山田(涼介)くんと、曽利(文彦)監督と一緒に読み合わせをして、ウィンリィとエドの掛け合いのテンポ感や、キャラクターの性格をしっかり見ていただいたんです。そのうえで、曽利監督から「ウィンリィはそのままでいいよ」と言っていただいたので、ほとんど不安はなかったです。
外見、内面からキャラクターにアプローチ
Q:それぞれが演じたキャラクターにもファンがたくさんいると思います。演じるうえでどのようなことを心掛けましたか?
ディーン:僕の演じたマスタング大佐というのは軍人なので、彼らの所作、例えば敬礼の角度や、歩き方などはしっかり体に覚えさせようとしました。軍人としての説得力がなかったら、ちゃんと観てもらえないなと感じていたので。また、曽利監督から「マスタング大佐は、衣装の上からでも厚みが出るような佇まいにしたい」と言われていたので、自分でも体作りを含めて、観ただけで存在感があるように持っていければと思っていました。ただ、原作を読んだとき、シリアスとコミカルのギャップがあるキャラクターだと思ったのですが、映画では意外とシリアスだったので、そのあたりファンの皆さんがどう思うかは気になっていますね。
蓮佛:わたしの役は「鷹の目」の異名をとる一流の狙撃手なのですが、なかなかこういった役を演じる機会がなかったので楽しかったです。意識したのは、女性から見ても憧れるブレない芯の強さですね。あとは、原作に描かれているけれども映画では描かれていない部分を、どうやってキャラクターににじみ出させるかを考えました。例えばホークアイ中尉とマスタング大佐の間の距離感など、原作にあっても映画では描かれていない関係性を、視線のやり取りとか、大佐の背中を見つめる姿などで、想像してもらえればいいなと思って演じました。
本田:今の話で言えば、ホークアイ中尉とマスタング大佐は、映画ではあまり関係性が描かれていないのですが、二人が共有している空気感や絆などは、映画を観ただけでも伝わってきました。
蓮佛:ほんと? それは嬉しい!
本田:わたしが演じたウィンリィは、映画のなかで唯一明るいキャラクターだったので、ちょっと暗いストーリーに光を照らせる存在になれたらと意識していました。完成した作品を観て、その役割は果たせていたのかなという達成感はありました。他の出演者のシーンも拝見しましたが、自信を持って推奨できる映画になっていると思うし「実写化しなくてもよかったんじゃない」って言わせないような作品に仕上がっていると思います。
ディーン&蓮佛の軍服姿はとにかく格好いい
Q:ディーンさんは、マスタング大佐について原作と少し違う印象を持ったので、少しファンの反応が気になったとお話しされていましたが、そういうファンの目はプレッシャーにはなりませんでしたか?
ディーン:プレッシャーはそれほど感じませんでした。それよりも、曽利監督がどういう作品を実写版として作りたいかということを、しっかり吸収して理解することが大事だと思って撮影に臨みました。CGを含めとても精密な作業が多かったので、撮影中はあまり余計なことを考えず目の前のことに集中していました。
Q:蓮佛さんは人気漫画を実写化する責任の重さを感じていたと仰っていましたが……。
蓮佛:リアリティーをどうとらえるか。ビジュアル面でいえば、ホークアイの毛質から始まって、髪型や髪の色、さらに衣装も緻密に作られるなど、今回は一つ一つ非常に丁寧に確認しながらやっていきました。それはわたしだけではなく、曽利監督、山田くん、その他の出演者も、みんな葛藤のなか同じように現場で一つ一つ課題をクリアしていったと思うんです。そういった姿勢を見ていると、お互いに話をしたわけではないのですが、作品に対する責任の重さは温度感で伝わってくるんですよね。
Q:本田さんは昔からの原作ファンとのことですが、今までにどのぐらい原作漫画は読んでいるのでしょうか?
本田:もう小学生のころから読んでいるので、何度読んだかわからないぐらいですね。でも、さっきも言いましたが、ホークアイ中尉とマスタング大佐は本当に格好よかった。二人とも軍服がすごく似合っていて羨ましい! 特に最後の再会するシーンは必見です。
今年一年を振り返って…
Q:12月1日に公開ですが、今年1年はどんな年でしたか?
本田:個人的なことですが、今年は本当に海外にたくさん行ったなという印象です。スペイン、ロンドン、パリ、韓国、台湾……。パリはこの映画の「ジャパンエキスポ」も含め3回ぐらい行ったのですが、今年は外に目を向けるというのがわたしのテーマとなった年でした。その最後を締めくくるのが『鋼の錬金術師』で、しかも世界190か国以上で上映されるというのも、今年のわたしを象徴しているみたいで嬉しいです。
蓮佛:わたしにとっては「出して蓄える年」でしたね。昨年10月から放送が始まった朝ドラ(「べっぴんさん」)で10か月をかけて18歳から60代までを演じ、「もう出せません」というぐらい自分のなかのものを出し切ったんです。その後は、来年ミュージカルに挑戦するのですが、そのための歌や技術的な稽古に時間を費やしたり、海外ドラマの吹き替えをやらせてもらったりと、知らないことをいっぱい吸収できました。
ディーン:まずは日本でこれだけしっかりと腰を据えて、いろいろやらせてもらえるようになったことに感謝ですね。そして昨年ぐらいから日本を中心に活動しつつも、アジアや中華圏の仕事もできるようになってきました。あとは、今年大きかったのは新曲を作れたことですね。ファーストアルバムを出したあと、役者の仕事が忙しかったので、なかなか歌に向き合う時間がなかったんです。でも、仕事の合間で新曲をリリースしたことや、ライブができたのは大きな出来事でした。
本田翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子ともにインタビュー会場に置かれていた「鋼の錬金術師」の原作漫画を見つけると、手に取って読み始める。撮影自体は2016年の夏に行われていたというが、以前からハガレン愛を公言していた本田はもちろん、蓮佛、ディーンも、どこか懐かしそうにそして愛に溢れた眼差しで漫画を読む姿には、“非常に難易度の高い実写化”と言われていた作品にしっかり向き合い、やり切ったという充実感がにじみ出ていた。
(C) 2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C) 2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会
映画『鋼の錬金術師』は12月1日より全国公開