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『去年の冬、きみと別れ』岩田剛典 単独インタビュー

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『去年の冬、きみと別れ』岩田剛典 単独インタビュー

自分の能力以上の何かを引き出した映画

取材・文:天本伸一郎 撮影:上野裕二

作品の映像化が相次ぐ芥川賞受賞作家・中村文則の同名小説を映画化したサスペンス『去年の冬、きみと別れ』。叙述トリックを駆使した原作は映像化不可能と言われてきたが、瀧本智行監督により映画ならではの仕掛けに驚かされる作品に仕上がった。盲目の美女が巻き込まれた謎の焼死事件の真相を追ううちに、自らも抜けることのできない深みにはまっていく主人公の記者を演じた岩田剛典は、本作が映画単独初主演。さまざまな初挑戦に挑み、「すべてをかけて臨んだ」とまでいわしめた撮影現場を振り返った。

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変化を求められた難役

岩田剛典

Q:初のサスペンス映画で、事件の容疑者であるカメラマン木原坂(斎藤工)の取材にのめり込んでいく主人公を演じていますが、変化の多い難役でしたね。

本当に難しかったです(笑)。同じ場面を少しずつ微妙に違う芝居に変えて撮ったりするような入り組んだ構成の脚本でしたので、正直、自分でも時系列などがわからなくなってしまうこともありました。なので、とにかく瀧本監督を信じてついていった感じです。監督は撮りたいものが明確で、こういう感情の芝居や画(え)が撮りたいとはっきり言ってくださったので、すごく刺激的でした。僕の演じた耶雲は、観客の皆さんを最後の結末まで連れて行く役でもあるので、自分の芝居だけじゃない部分のストーリーへの理解や微妙な表情の積み重ねが必要でしたし、セリフだけではない目の奥にある強さみたいなものを常に意識しながら演じていたので、本当に気を抜けない繊細な作業でした。

Q:微妙な感情の変化などを表現する上で、そのグラデーションはどのようにつけていったのでしょうか。

前半のシーンには、後半になって振り返ると「実はこういうことだった」とわかるようなところもあるのですが、それらをあからさまな伏線と感じさせずにその時々の芝居でうまく表現していくには、一連の画(え)や編集のイメージができている監督に委ねるしかないところがありました。そのため、毎回撮影に入る前に、ここはどういうふうにとか、こういう感情で演じてほしいといった説明を受けた上で、微妙な間を作るように言われたり、ここのワードだけは際立たせてほしいといった細かな演出をしていただきました。

初体験!メガネをかけて芝居をする難しさ

岩田剛典

Q:芝居でメガネをかける役は今回が初めてだそうですね。プライベートではサングラスや伊達メガネの収集もされているようですし、これまでの出演作では劇中のアクセサリーに私物を取り入れることもあったそうですが、今回はいかがでしたか。

今回は用意していただいたものだけを身に着けていますし、メガネや髪形などのビジュアルのイメージも、すべて瀧本監督のアイデアです。メガネをかけていると、目線で伝える芝居がより難しくなるところがあったので、すごく勉強になりました。ビジュアルについては、主人公の変化をわかりやすく表現するための工夫をしているので、百戦錬磨の瀧本監督の演出の抜かりのなさを感じていただけると思います。

Q:撮影中に「すべてをかけて臨まないと演じられない」「こんなに芝居に没頭した撮影は初めて」「プレッシャーを感じている」といった発言もされていましたが、その理由は?

脚本がとにかく面白く、すごく力があって引き込まれたんです。ただ、どうすればその脚本のパワーを観客に伝えられるのか。自分の持っているものをすべて出し尽くしても表現しきれないかもしれないと肌で感じて。今回が単独初主演映画で、これだけ出演シーンの多い役は初めてでしたし、ずっとセリフをしゃべっている(笑)。自分の芝居で観客を引っ張っていくことが大きなポイントになっているので、そのプレッシャーは他の作品とは違いましたね。撮影現場もいい意味で緊張感があって、ずっとトンネルの中に入っている気分でした。ここまで自分の意見がはっきりした監督に出会ったことはなかったので、今回は本当に鍛えられたし、修行のようでした(笑)。

寝ずに撮影したラストシーン

岩田剛典

Q:特に印象深いシーンは?

特に意識したのはラストシーンでしょうか。自分の芝居でこの作品の良し悪しが決まるようなシーンだとも思っていましたから、とにかく集中していましたし、ずっと考えていました。撮影前日には、監督から「寝ないよね?」と言われて、本当に寝ないで充血した目で撮影に臨みました(笑)。

Q:今回の作品を経て得たものや自身の変化について実感するようなことはありましたか?

自分ができる芝居というか、自分ができる表現の範囲を超えた何かを引き出してもらえたような感覚がありました。今回の撮影は、ビジュアルから技術的な面も含めて、監督が求める要望にいかに近づけるかという作業でもあったのですが、そこで役者の勘みたいなものが少しだけつかめた気がしています。それって、結構大きな違いなんです。自分の中でいくらイメージを膨らませてもたどり着けない表現というものがあったのですが、何かそういうものに出会えた気がして。それは今後の自分の俳優業にとって、すごく生きることだと感じています。

俳優、パフォーマーのスタンスの違い

岩田剛典

Q:EXILEや三代目 J Soul Brothers のメンバーとしても活動していますが、2014年くらいからは個人として、俳優専業の方とも遜色ないほどに映画やドラマに立て続けに出演されてきていますね。

すべてが自分の今に繋がっていると思っています。また、いろんな役を演じることにやりがいを感じるので、忙しくても自分がやりたいことをやらせていただけているのは、ありがたいことです。その中でも特に今回、こんなに骨太な台本に出会えることってなかなかないなと思えましたし、自分好みの作品で役を演じられるのは幸せでした。この作品を評価していただけるというのは、自分の普段のイメージ、いわゆるEXILEや三代目 J Soul Brothers のパフォーマーが芝居をしているというようなイメージを覆すというか、何かこれまでとは違った角度で観ていただける気がしていますので、楽しんでいただけたら本当にうれしいですね。

Q:グループなどでのアーティスト活動と、個人での俳優業には、明確にスタンスの違いがあるものなのでしょうか。

ソロでパフォーマーとして活動しているメンバーもいますが、僕はそうではないので単純に芝居は個人、アーティストはグループといったふうに、それぞれの活動を分けて考えています。ただ、相互作用があることなので、知っていただく上で、どちらの活動が入り口になってもいいですし、俳優としての自分をきっかけにグループのことを知っていただくことがあれば、それはグループに貢献できているなという実感にもなります。やっぱり僕はグループでの活動から始めているので、そこの基盤というのはブレたくない。自分が所属するグループに還元できることって何だろうと考えた上で、その入り口を今見つけつつあると思うし、芝居が好きなので、個人の表現者としても、俳優としても、いろんな作品に出て、いろんな役柄を演じられるようになりたいという夢もある。求めてもらえる限りは走り続けたいという気持ちでいます。

Q:俳優業がお好きなんですね。

そうですね。最初は全く興味がなかったのに(笑)。やりがいを感じたというか、ダンスも芝居も同じ芸能の世界なので、この道で輝きたいという意思を今までの出演作品で培えたからこそ、俳優業も自分の道として突き進みたいし、もっともっと極めたいと思うようになったのだと思います。


岩田剛典

一度目は驚き、二度目は張り巡らされた伏線などに目を凝らして観たくなるサスペンス映画に仕上がった本作で、岩田は前半と後半でガラリと印象の変わる主人公を演じている。アーティストとして全国ツアーなどのステージに立ちつつ次々と映画やドラマに出演し、忙しく走り続けながらさらなる高みを目指している岩田にとっては、どの作品もまだ通過点の一つかもしれない。しかし、本作は後に岩田の俳優としての活動を振り返ってみても、ターニングポイントといえる作品となったはずだ。

(C) 2018 映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

映画『去年の冬、きみと別れ』は3月10日より全国公開

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