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『恋は雨上がりのように』大泉洋 単独インタビュー

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『恋は雨上がりのように』大泉洋 単独インタビュー

色気を漂わせないさじ加減が難しかった

取材・文:浅見祥子 写真:杉映貴子

眉月じゅんによる原作コミックを、『世界から猫が消えたなら』『帝一の國』の永井聡監督が実写映画化した『恋は雨上がりのように』。この映画で小松菜奈演じる女子高生の橘あきらに「好きです!」と告白されてたじろぐ45歳、バツイチ子持ちのファミレス店長・近藤正己を演じた大泉洋。まっとうな大人にして中年のさみしさを抱え、心の奥底にやさしさを秘めた近藤をサラリと演じた大泉が作品を語った。

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役者として、やったことのない役を求めている

大泉洋

Q:最初に映画『恋は雨上がりのように』の企画を聞いたときの印象は?

女子高生が片想いする店長の役と聞き、明らかにこれまで演じたことのない役だなという気持ちでしたね。やっぱり役者なのでやったことのない役を求めているところがあるんです。その後に細かい役柄の設定やストーリーを聞いたのですが、店長には自分も学生時代に諦めた小説家になるという夢があり、小松菜奈ちゃん演じるヒロインもケガで陸上を諦めていて……。そんな二人が少しずつ影響し合って前へ進んでいく、爽やかで前向きな映画なのかな。面白そうだな! と思いましたね。

Q:原作の店長と大泉さんって……あまり似ていないですよね?

そうですかあ? だいぶ寄せたんですけどね、髪型とか(笑)。原作の近藤にある10円ハゲについても、私は再現したかったんですよ。ただ監督は店長とほぼ同世代ですから、あまり痛々しくしたくなかったんじゃないでしょうか。もう少し格好いい役者さんが店長を演じるならそこまでやってもよかったかもしれないですけど、いかんせん僕なので。やり過ぎに注意したのかなと(笑)。どうしてあきらはこの人に恋をしたんだろう? というのが、あまりにわからなくなると困ると思ったんじゃないでしょうか。

Q:45歳の男性にとって、あきらのような17歳の女子高生は怖いものでしょうか?

怖いんじゃないですかね。もし17歳の女子高生ばっかりのイベントに出てくださいと言われたら……僕もかなり困りますよ! 17歳の女の子にとっては、お父さんでも問題ないトシですからね。僕自身はまだ娘が小さいですけど。

Q:ご自身の娘さんが高校生になって、「好きな人ができた」と近藤のような、45歳のバツイチ男を連れてきたらどうしますか?

まずは、どういう男か? ですよね。「どういうつもりなんですか?」みたいな話をするかな、しっかりと。明らかに「コイツはヤバイな!」という人が来たら断るけど、近藤さんみたいな人なら話す余地はあるかなという気がするんです。ファミレスでちゃんと店長として働いているわけだし、いかんせん、私が演じてますからね。そこまでむちゃくちゃな人じゃないし(笑)。問題はどれくらい真剣に考えているかで、頭ごなしに「なにやってんだ!」とは言わないでしょうね。むしろ17歳の娘が同級生を連れてきて「結婚したい」と言われるほうが嫌ですね!

人生の1ページにキラっとした輝きをもたらした女性

大泉洋

Q:女子高生から「好きです」とぐいぐい押されるのに、店長はヘンな色気を絶対に漂わせないですよね。そこは意識されましたか?

正直、そのさじ加減は難しかったです。監督からは最初「中学生もしくは小学生くらいの女の子から言われたくらいの気持ちでいてほしい」と言われて。いやいやいや、まあまあ、どうしたの!? という感じで(笑)。でもまったく箸にも棒にもかからない、あまりにも色気がなさすぎるのでは、なんとなくこの映画が面白くない気がしたんです。それで監督と話しました。あきらから「好きです」と言われて店長はやっぱりドキっとはする。でもいやらしさみたいなものは決して出さないし、そこから恋に発展するのか? ということに関しては相当に慎重で。心のブレーキをちゃんと持っているということなのかなと。

Q:ラストの店長の笑顔が印象的でした。どんな思いを込められたのでしょう?

近藤にとってあきらは、人生の1ページにとてもキラッとした、一瞬の輝きをもたらしてくれた女性なのかなと。だから「これからも輝いていってほしい、がんばって!」という思いで見つめていましたね。

Q:近藤の学生時代の友人で、売れっ子小説家の九条ちひろを戸次重幸さんが演じていました。原作そのままの長髪姿を見た感想はいかがでしたか?

いやぁ、ビックリしました(笑)。原作での印象が強烈だったので、正直この実写化は無理だろうと思ったんです。アイツが演じると聞いて、軽い気持ちで「ビジュアルどうすんの?」と聞いたら「まんまやるよ!」と言うので「え、そうなの!?」と(笑)。「たぶん当日、ウケると思うよ」と言っときました。僕も、ヤバいな、本番中に笑っちゃうんじゃないかなと覚悟していましたけど、仕上がったものを観たときにアリだ! と思ったんですよね。原作のちひろはめちゃくちゃイケメンですが、戸次さんも TEAM NACS の中ではイケメンですから。想像以上にハマってる! すごい戸次さん! と思いました(笑)。

現場で決して迷わない永井監督

大泉洋

Q:コミカルなシーンが度々ありましたが、スベらなかったですね。

永井監督は笑いのセンスが光る人でした。アドリブがあるわけじゃないし、監督の演出のおかげです。間の取り方も指示が細かく、撮影中も面白いなと思っていました。永井監督は演出のときに自分でやってみせるんですけど、そのセリフの言いっぷりがとにかく上手なんですよ。それをやられちゃうと役者はなかなか超えられないんですけどね。とにかく出来た映像が見えている、現場で迷わない人でした。

Q:永井監督はセリフ回しなども原作に忠実に演出をされたそうですね。

全部のシーンではないですが、漫画の中で印象的なシーンを再現するときには、原作ファンの方もいるので、一言一句変えないでいきましょうということでした。「北斗の拳」でラオウが言う「わが生涯に一片の悔いなし!!」とか、「タッチ」の「上杉達也は浅倉南を愛しています」とか、あそこまで印象的なセリフだったら、間違えちゃいけないと思うんですが……。2~3ページある台本を長回しで、一言一句間違えないで言うのって、もう暗記テストに近いんです。それを一気に言い終えて、「確認しま~す……ここ“です”ってなっちゃったけど“だよ”ですね」と言われると、おお~そうですか……となりましたね(笑)。気持ちをどう入れるかはもちろんですが、セリフを間違わずに言うことに集中する必要もあって、難しかったです。

この原作の実写化にパーフェクトなチーム

大泉洋

Q:出来た映画を観た感想は?

永井監督の腕前が素晴らしいなと思いました。実にキレイにまとまっているし、撮影監督の市橋(織江)さんとはいつもお仕事をなさっているチームなんでしょう。映像が美しく、この原作を映像化するのにパーフェクトなチームだったんじゃないかと思います。原作を手掛けた方たちにも、自信を持って観ていただきたい! と思う作品になりましたね。それと……僕がおじさんだからなのかもしれないけど、あきらの陸上のシーンになると、うるっときちゃうんですよね。

Q:小松菜奈さんの走る姿がいいですよね。

そうそう。人が懸命に走る姿には、ぐっときてしまう何かが、きっとあるんでしょうね。僕なんてアキレス腱を切ったことはないし、スポーツで挫折した過去なんかないんだけど、同じ陸上部だった友達がばんばん走って行くのを見ていたり、ライバルが記録を出していくところを見ている姿が切なくて……。映画を観た後、本当に爽やかな気持ちになりましたね。45歳のおじさんだから、基本的にはやっぱり気持ちが薄汚れちゃってるんですよ。でも体の垢がすっかりとれた気がしました。「僕、今、すごくキレイ!」という気がしましたね。


大泉洋

『恋は雨上がりのように』のキャスティングは、ビックリするくらいに隅々までハマっている。中でも、黙っていると怒っているように見える17歳の女子高生をナチュラルかつ緻密に演じる小松菜奈、そして45歳バツイチ子持ちのファミレス店長・近藤を演じた大泉洋はピッタリだ。どこにでもいそうな、ごく普通の、生きることに少し疲れている中年男だが、意外といないまっとうな大人で、その芯にやさしさを秘めている。そんな店長を、彼はサラリと体現している。それでいてコミカルなシーンで確実に笑いをとるのはさすが! 本作を観ると、彼以外が店長を演じることが考えられないだろう。

(C) 2018映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C) 2014 眉月じゅん/小学館

映画『恋は雨上がりのように』は5月25日より全国公開

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