『SUNNY 強い気持ち・強い愛』篠原涼子 単独インタビュー
飛び上がるくらいうれしかったオファー
取材・文:磯部正和 写真:齊藤幸子
日本でも大ヒットした韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を、『モテキ』『バクマン。』などの大根仁監督が再構築した青春音楽映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。本作で、1990年代はコギャルとして青春を謳歌したものの、現在は夫と高校生の娘と不自由のない暮らしをしている専業主婦・奈美を演じたのが女優・篠原涼子だ。「原作となった映画が大好きで、どんな役でもいいからやりたいと思った」と強い意気込みで臨んだという篠原が、作品への思いや撮影の裏話、自身の青春時代について語った。
どんな役でもいいからやりたかった!
Q:話があったとき、どんなお気持ちでしたか?
原作となった映画が大好きだったので、オファーをいただいたとき、飛び上がるぐらいうれしかったのを覚えています。「どんな役でもいいからやりたい」という気持ちでいっぱいでした。
Q:奈美という女性のどんな部分を意識して臨んだのでしょうか?
わたしが演じた奈美は、とても平凡な生活をしている主婦なんです。平凡というのは幸せなことでもあると思うのですが、なにか物足りないと思いながらも、なにもしない人。そんななか、昔の仲間に会うことで、足りないものが補われていくような感覚になるんです。ただなにもなく過ごしていた日常に、刺激や夢、好奇心みたいなものがだんだんと戻ってくる。そういう部分にはすごく共感できたので、入りやすいキャラクターだなと思って作品に臨みました。
Q:大根仁監督からはどんな演出があったのでしょうか?
基本的には「篠原さんの考えるやり方で」とおっしゃってくださったのですが、奈美があまり感情を出さないようなキャラクターだったので「セリフはあまり滑舌よくしないでください」とか「やりすぎないように」という演出はありました。
篠原涼子、渾身のカラオケシーンは大幅カット!?
Q:奈美が昔の友達と会い、学生時代に戻ったかのように楽しむシーンは、観ていてほのぼのしました。
ルーズソックスや制服も着させてもらいましたが、自分自身、コギャルなどの経験がなかったので「チャンス! いま着なければいつ着るんだ」と思い、とにかく楽しみながら撮影しました。みんなで「誰が一番セクシーか」なんてくだらないことで盛り上がっていました。
Q:いろいろなシーンがありましたが、一番テンションが上がったシーンは?
ベッドの上で、みんなでお菓子を食べながらおしゃべりをする場面は、わたしも昔そういうことをやっていたので、すごく懐かしくてテンション上がりました。あとは、カットされちゃったのですが、カラオケシーンもかなり盛り上がりました。
Q:カラオケシーンは劇中、ありましたよね?
ほんの数カットだけですよね。カラオケのシーンは、ほぼ丸一日かけて撮影したんです。セリフもあったし、歌もたくさん歌ったし、いろいろやったんです。でも作品を観たら、(高校生時代を演じた)高校生チームの方が使われていました。あれなんなんですかね!(笑)
Q:カットされた理由は?
まったく聞いてないです! 今度会ったらちゃんと聞かないと(笑)。本当に何度もやったのですが、キレイにバッサリですよ!
Q:篠原さんの歌うシーンを観たい人も多かったのではないですかね?
踊りも踊ってノリノリだったのに……しっかり書いておいてくださいね!(笑)
「広瀬すず=奈美」に合わせるのに必死でした!
Q:板谷由夏さん、小池栄子さん、ともさかりえさん、渡辺直美さんなど“大人チーム”との共演はいかがでしたか?
みなさん個性豊かな方々。お芝居を見ていて勉強になることが多かったです。それぞれが夢中になって役柄に向き合っていて、刺激を受けました。初めて顔合わせしたときから、何度も会っているような感覚になったんです。最初から意気投合して、すぐにみんなでご飯を食べに行ったぐらい。一緒に作品を作っていくパートナーとしては、すごく良いメンバーでした。
Q:同級生の役ですが、実際の年齢は結構ひらきがありますよね。
直美ちゃんとは15歳ぐらい違うんですね。全然そんな感じはしませんでした。最初にご飯を食べに行ったとき、お店を予約したのはわたしなのですが、話の中心となってまわしてくれるのは栄子ちゃんで、りえちゃんはずっと笑顔で話を聞いている感じ。すごくバランスの良い組み合わせでした。
Q:篠原さんの高校生時代を広瀬すずさんが演じていました。広瀬さんは「とても光栄だけれどプレッシャーです」とコメントされていましたが、篠原さんはどんな感想を。
本当に“クリソツ”だからやりやすいですよね~って、なにを言わせるんですか!(笑)そりゃ必死でしたよ。高校生パートを先に撮っていたので、わたしが演じるときは、すでに高校生パートの映像があったんです。それはありがたかったのですが、そのぶん、できるだけすずちゃんが演じた奈美に合わせようという思いは強かったです。
歌を楽しんでいた時代がよみがえる映画
Q:本作では、キラキラと輝く青春時代が描かれていますが、篠原さんにとっての青春時代の思い出は?
高校は途中でやめてしまったので、学生時代の思い出は中学生なんですよね。劇中にもありましたが、カラオケに行ったり、ベッドの上で友達とお菓子を食べながら、ドラマの話や恋愛の話をしたり。そんな思い出ですね。
Q:10代から芸能界に入り、アイドルグループ活動などもしていましたが。
東京に来てから出会う人は、友達というよりは仕事仲間という意識が強かったですね。いまは当時のメンバーとも仲がいいですが、一緒に活動していたころはライバル意識もあり、友達というよりは戦友という言葉がしっくりくる関係ですかね。青春というイメージだと、やっぱり中学生時代ですね。
Q:カラオケはどんな曲を歌っていたのですか?
プリンセス プリンセスやREBECCA、爆風スランプとかPERSONZ……バンドブームだったので、そのあたりの曲を歌っていました。
Q:本作では小室哲哉さんが音楽担当として入っていますが、篠原さんにとっても懐かしい曲が多かったのではないですか?
小沢健二さんとか、JUDY AND MARY とか、当時歌番組で一緒だった人たちなので、テレビ局の楽屋裏とか、リハーサルの感じなどが、とてもよみがえってきました。ちょうど映画の舞台になっている1990年代は、音楽を楽しんでいた時期でした。その意味でも、わたしにとっては、すごく懐かしく青春を感じる映画になりました。
主演女優として代表作も多く、キャリアも十分すぎるほど積んでいるが、いい意味での軽さ、言い換えるなら、親しみやすさがある篠原涼子。取材中も自らボケ、そこに突っ込んでみたり、冗談を飛ばしたりとサービス精神も満点だ。一方で「ピンチをチャンスに変えられるような強い人間になりたい」としっかり自身と向き合うストイックさも兼ね備えている。こうした多面的な部分こそ、彼女の魅力なのだろう。「感情を抑えた」と言いつつ、あふれ出るような奈美の喜怒哀楽に、強く共感してしまうこと必至だ。
映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は8月31日より全国公開