『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』渡辺直美 単独インタビュー
前向きに明るく自分のままでいたい
取材・文:森田真帆 写真:日吉永遠
自分に自信が持てない主人公が、あることをきっかけに自信を得たことで、恋でも仕事でも輝きを増していく姿を描いたコメディー『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』。人気コメディエンヌ、エイミー・シューマーがユーモアたっぷりに演じた主人公の日本語吹き替えを務めたのがお笑い芸人の渡辺直美だ。「ヒロインと同じようにコンプレックスだらけ」と意外な本音を明かした渡辺が、本作を通して学んだという輝きへのステップを語った。
前向きな生き方を教えてくれた
Q:本作を観た時の感想は?
めっちゃ面白かったです。主人公のレネーが、突然自分が美女に見えることによって、いきなりポジティブで明るくなるのももちろん面白いんですが、レネーを演じているエイミー・シューマーのふざけ具合がちょうどよくて。前半、中盤、後半と変化していく性格の細かい描写も素晴らしくて、彼女の演技力に驚かされました。
Q:エイミーもアメリカのお笑い界で有名ですが、エイミーの存在は知っていましたか?
大好きなコメディエンヌです。彼女の作るコントはよく見ています。彼女は、普段スタンダップコメディーをする時、すごく自信のあるしゃべり方をするんです。でもこの映画では、また違うキャラクターなので、「こんなことまで、できちゃうんだ」という、新しい魅力を感じました。
Q:エイミーが演じるレネーの印象はいかがでしたか?
レネーみたいに「結局私なんて」って思っている人はたくさんいると思うんです。でも、ちゃんと自分の本当の魅力に向き合うレネーの生き方を見て、「あぁ自分も前向きに明るく、自分のままでいたい」と押しつけがましくなく、自然に思えました。物語と共に私たちに寄り添って、大切なことを教えてくれている感じがしました。それはきっとレネーのキャラクターもあるし、彼女を演じているエイミーのポジティブな明るさを感じたからだと思います。私もそういう女性になりたいと思います。
初めてのアフレコに大緊張!
Q:主人公の声の吹き替えは初めてですよね? 挑戦されていかがでしたか?
人生で初めて、映画とガッツリ向き合いました。朝の10時から夜の10時まで、監禁状態で(笑)。でも、日本語吹き替え版の監督がすごくじっくり付き合ってくださって、自分がほんとにその物語に入り込むことができたので、最後まで楽しく演じることができました。たくさんの人に観てほしいです!
Q:吹き替えならではの苦労はありましたか?
吹き替えのアフレコ収録は、映像を見ながらヘッドフォンの片耳からは英語が聞こえて、もう片方のヘッドフォンから自分の吹き替えの声が聞こえてくるんです。だから、ついつい片側から聞こえてくる英語に引っ張られすぎて、イントネーションがおかしくなることが度々ありました。
Q:逆に演じやすい部分はどんなところでしたか?
まず、エイミーがコメディエンヌだから英語でずっとボケているんです。ボケている英語での意味と、訳された日本語を読んで、これはどういうテンションで、どういう声で話すことによって、うまくオチにもっていけばいいのかな? と考えながら、日本語でのオチにもっていくようにしました。そこは芸人として、エイミーのやりたいことを自分の中で汲み取って表現できた気がするので、コメディーの部分は演じやすかったです。
秀逸すぎるイヤな男に注目
Q:この映画はまさにガールズムービーです。ヒロインが体型を気にしてジムに行くシーンなど、女性なら誰もが共感できるところがありました。
アメリカ人の女の人って、ありのままでいい! っていう人が多いと思っていたんですけど、そうでもないというのが意外でした。レネーが映画の中で叫んでいた「フォー!」みたいに盛り上がりながら、みんなで自転車をこぐようなジムって日本でもありますよね?
Q:周りがモデルみたいな人ばかりで、レネーの挙動不審ぶりに笑いました。
あのシーン面白いですよね! でも私も、あの場に行ったら絶対同じように挙動不審になると思います。周りの女子の髪の毛が顔にバサッと当たる時の表情とか、最高です。エイミーの芸ってすごく細かいんです!
Q:たしかに細かいところでいちいち笑わされました。
実はこの映画には、嫌な男のあるあるみたいなのも詰め込まれていて、いちいち笑えるんです。例えば、レネーがケガをしたときに美女が「大丈夫?」って声を掛けると、横の男が「大丈夫」? って美女の方に声を掛けるんです。あれってけっこうムカつきますよね(笑)。あーあるある! と思ってすごく笑っちゃいました。
渡辺直美流コンプレックスの跳ね返し方
Q:レネーはコンプレックスだらけの女性ですが、共感できるところはありますか?
めっちゃあります! 私だってコンプレックスだらけです! レネーを見ていると共感することが多いです。やっぱり太っていると、コンプレックスを持ちやすいと思うんです。言葉で傷つくことも多いし。特に同性から言われると、傷つきます(笑)。強目の語尾で「太り過ぎー」とか言われたりすると、「は?」って思います。
Q:そういう経験をしている女性はけっこういると思います。そういう時、逆に渡辺さんはどんな風に返すんですか?
やっぱ体型のことをイジったりするって、すごく繊細なところだし、相当親友じゃなきゃダメです。親友でもない人が、それを言うのは失礼だと思います。いきなり大して仲良くない人に「太った? やばいよ!」とか言われることがあったりすると、こっちも「え? なんか毛穴開きすぎだよ!」とか言って刺し違えます(笑)。イジりって、結局関係性の問題だと思うんです。だから人のコンプレックスをイジるなら、きちんと相手との関係を築いてから言ってくれって思います。
Q:レネーはかなり特殊な方法で、自分のコンプレックスを克服しましたが、渡辺さんの落ち込んだときのとっておきのリカバー方法を教えてください。
私は自分の好きなことを集中してやります。例えば、腹が立つことがあると、家に帰って英単語や台湾語を10個覚えるとか。悔しい思いをさせられた相手より、何か一つ技を磨いてやろう、人として大きくなってやろう! って思うんです。この映画のラストシーンが大好きなんですけど、やっぱり女性は体型とかつい気にしちゃうけど、結局自分に自信が持てるかってことが大事だと改めて感じました。
渡辺直美はポジティブパワーに満ちていて、その笑顔は周りを一瞬にして明るく照らし出す。ヒロインと同じように太っていることにコンプレックスを持った時期があったと話している時も、彼女の明るさは変わらない。「相手に嫌なことをされたら、こっちもしてやればいいんですよ!」とニヤリと笑う彼女からは、コンプレックスすらも味方につけて人生を楽しむ姿勢が感じられた。女性たちの憧れのアイコンとなっている渡辺の人気の秘密は、そんなポジティブな性格にあるのだろう。
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映画『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』は12月28日より全国公開