『映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』木村佳乃 単独インタビュー
悪役を演じるのは楽しい
取材・文:坂田正樹 写真:日吉永遠
『映画 妖怪ウォッチ』シリーズの第6弾『映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』の舞台となるのは、超エリート校・Y学園。学園の不思議解明ミッションを下された主人公・寺刃ジンペイたちが、数々の怪事件に挑んでいく。女優の木村佳乃が演じるメドゥーサは、ジンペイたちの前に立ちはだかるレジェンド怨霊。「ラグビーワールドカップで叫びすぎないよう気をつけて、万全の態勢で臨んだ」という木村が、妖怪ウォッチにまつわる家族の思い出、悪役の楽しさとジレンマ、さらには来年の東京オリンピックの話まで真摯に語った。
最大の見どころはメドゥーサのバトルシーン
Q:本作に参加することが決まったときのお気持ちは?
ファミリー映画に出るのはとても尊いことだと思っているので、すごくうれしかったです。子供たちが観に来てくれて、楽しんでくれる姿を想像しながら、がんばろうと思いました。
Q:『妖怪ウォッチ』はお子さんとよくご覧になっていたんですか?
耳にしない日がないくらい「ゲラゲラポーのうた」がすごく流行っていて、子供たちも踊っていました。NHK紅白歌合戦に出てきたときは、もうキャーキャー騒いでいましたからね。
Q:脚本を読んだ印象をお聞かせください。
『妖怪ウォッチ』ならではのギャグが散りばめられていて、テンポも速くて面白かったですね。バトルシーンも多くて、迫力があるので、そこが最大の見どころになると思います。毎回、キャラクターも変わって、子供たちを飽きさせることなく、この世界に引き込む力はすごいなと思いました。実写版(2016年公開『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』)もありましたし、アニメも継続して次々と新しいものを生み出しているので、子供たちも大喜びだと思います。
声を守るためラグビーの応援を自粛
Q:メドゥーサというキャラクターについて、役づくりも含めて教えてください。
太古に悲恋の死を遂げたレジェンド怨霊というキャラクターなんですが、まだ線画の状態のときに声を入れたので、監督と話し合いをしながら、声の出し方、セリフの言い回しをテストでいろいろ試してみて、少しずつ作り上げていく感じでしたね。実写とは違うので、スタッフのみなさんがイメージするキャラクターに“わたしが近づく”といった作業だったと思います。
Q:最終的にはどんな感じに仕上がったのでしょう。
すごく威厳がありながら、ちょっとギャグっぽいというか、普通の言い回しとはちょっと違うメリハリの利いたものが採用されていました。やはり、アニメなので実写の声よりもかなり大仰(おおぎょう)な感じではありますが、『妖怪ウォッチ』の世界観にマッチしたキャラクターになったと思います。
Q:絶叫シーンもあり、ノドをからさないようラグビー観戦もなるべく騒がないように注意していたそうですね。
収録の日が決まっていたので、そこに向けてノドの調子を万全にするために気をつけていました。前日がラグビーワールドカップの日本VSサモア戦だったのですが、なるべく騒がずに……と言いながらもちょっとは声が出ていたかもしれませんが(笑)。早く寝て、翌日に備えました。
Q:メドゥーサのビジュアル的な印象はどうでしたか?
動きも含めて、子供たちが観たらちょっと怖いかもしれませんね。悪役らしい悪役なので、そのあたりがちょっと心配ではあるんですが……。
Q:悪役が多いことをお子さんが気にされているそうですが。
そうなんです(苦笑)。こういう映画には必ず悪役が必要ですし、演じていてもすごく楽しいので、そこは悩ましいところではありますが、せっかくオファーをいただいたお仕事なので、一生懸命やるだけですよね。
Q:まだメドゥーサをやるということをお子さんに伝えていないそうですね。
今のところ、主人公のジンペイ役だと言い張っていますが、観たらバレちゃいますよね(笑)。でも、特に言い訳しようとかは思ってなくて、スーッと観に行って、どんな反応をするか、確かめたいと思っています。
たまには悪役以外のキャラクターもやってみたい
Q:最初の娘さんがお生まれになったあたりから子供向けアニメのお仕事が増えていったように思います。
やっぱり、イメージでしょうね。娘が生まれてから確かにアニメのお仕事でお声をかけていただく機会が増えていると思います。
Q:オファーがあれば今後も積極的にトライしていきたいですか?
もちろんです。ただ、悪役が多かったので、それ以外の役もやってみたいなぁっていうのは正直ありますね。実写映画の吹き替えも、アンジェリーナ・ジョリーさんとかニコール・キッドマンさんなど、悪役の上手な声低めの女優さんが多いので、ヒロインとかはどうですかね? 娘役はもう厳しいので、優しいお母さん役とかをやってみたいです。
Q:女優としての活躍もさることながら、近年、バラエティー番組でも振り切った魅力を放っています。何かきっかけがあったのでしょうか?
年齢を経て、素が出てきただけだと思います。それが電波に乗って流れ出したというか、もともとこういう人だったんです。そのときどきで興味のあることをやりたいと思っているだけなので、自分にとっては自然な流れなんですよ。
今、一番興味があるのは東京オリンピック!?
Q:では今一番、興味を抱かれているのはなんですか?
そうですねぇ……今は来年のオリンピックのことで頭がいっぱいです(笑)。だって、日本に来るんですよ! わたしたちの親世代は1964年の東京オリンピックを経験している年だと思いますが、自分が生きているうちに経験できるなんて、本当にうれしいこと。
Q:会場にも足を運ぶ予定ですか?
行きたいんですが、チケットが全部外れちゃいましたからね(ため息)。
Q:何の競技がお好きなんですか?
何でも。全部観たいですが、特に重量挙げが観たい!! あれ、面白いんですよ。あの競技ってすごくシビアで、ちょっとでもやり方を間違えると、両腕が折れるんですよ! シンプルだけれど、あのなかに真剣な世界が凝縮されているんです。
Q:お仕事に関してはどんなことに興味がありますか?
そうですね、興味があるというか、来年の1月期の連ドラ(フジテレビ系ドラマ「アライブ がん専門医のカルテ」)をやらせていただくので、当面はそれに集中したいと思っています。
Q:メドゥーサの技に「思春期衝動吸引」というものがあります。木村さんが吸引して、力に還元していることはありますか?
わたしたちの仕事って、毎日同じ場所に行くわけではないし、基本3~4か月撮影したら、また違う現場に行って、違う監督、スタッフ、共演者さんたちと仕事をするので、言ってみれば、全てが吸収ですよね。いろんな方とお会いする機会も多い仕事でもありますし。
Q:直近で何か吸収して得たものはありますか?
公開アフレコのイベントで、お付き合いの長い東宝の方が司会進行をされていたんですが、「わぁ、上手だな」と思って。吸収というか、刺激を受けました(笑)。女優の仕事だけでなく何でもいいんですよ。もともと街や人間観察が好きなので、某チェーン店のコーヒーの味が各店でぜんぜん違うとか、コーヒーを淹れる店員さんによって違うとか、そういう日々の小さな違いからもいろいろ吸収しています……というか、些細なことの方が見ていて面白いですからね。
本作のメドゥーサ役はもとより、映画『記憶にございません!』では金髪のアメリカ大統領を堂々と演じ、バラエティー番組の体当たり企画ではリスクを恐れぬ気骨を見せる。最近の活躍について尋ねると、「だんだん素が出てきただけ」と笑ってみせる木村だが、その素の部分にこそ彼女の恐るべきポテンシャルが眠っている。この先、どんなサプライズを見せてくれるのか……重量挙げの解説者? 木村佳乃なら、それもあながち夢ではない!?
(C) LEVEL-5/映画『妖怪ウォッチ』プロジェクト 2019
『映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』は12月13日より全国公開