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『弱虫ペダル』伊藤健太郎 単独インタビュー

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『弱虫ペダル』伊藤健太郎 単独インタビュー

挫折のおかげで今の自分がある

取材・文:坂田正樹 写真:日吉永遠

渡辺航の人気漫画を若手俳優陣を迎えて映画化した『弱虫ペダル』。インターハイを目指す総北高校・自転車競技部1年の今泉俊輔役に抜てきされた伊藤健太郎は、King & Prince の永瀬廉演じるチームメイト・小野田坂道のポテンシャルに脅威を感じながら、選手として成長していくさまを繊細かつリアルに表現してみせた。そんな彼が胸に抱く“原作もの”への切なる思いとは? さらには、彼が意識するライバルたちの存在について語った。

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漫画の“実写化”と捉えてほしくない

伊藤健太郎

Q:原作の印象をお聞きしたいのですが、以前からお読みになっていましたか?

人気のある漫画なので存じ上げていましたが、実は今までしっかり読んだことがなかったんです。なので、オファーをいただいてから、初めて読ませていただきました。

Q:あまり漫画は好きではない? それとも忙しかったとか……。

いえ、そういうことではなく僕のなかの決めごとというか、原作のある作品に出演する際は、意識的に読まないようにしているんです。もちろん、演じるキャラクターの性格やビジュアルなど根っこの部分は大切なので、参考にはさせていただきますが、拝見するのはあえて2巻ぐらいに抑えているんです。

Q:なるほど、原作を意識しすぎるのもよくないと。

漫画の“実写化”という風に言われることが多いんですが、僕のなかでは1本の“映画”として観ていただきたい、という思いがあります。原作に対するリスペクトの気持ちは当然あるのですが、“実写化”としか捉えてもらえないのなら、「アニメでいいのでは?」と思いますし。だから、別物とまでは言わないものの、生身の人間が演じるとこうなるとか、このキャラクターたちがもしも実際に生きていたらこうなるとか、そういうところを表現したいんです。漫画はコマとコマの間に線がありますが、その間もキャラクターたちは生きているわけで……。その線の部分を途切れ目なく見せて命を感じさせられるのが俳優である僕らだと思っているので、そこは大事にしています。

挫折した過去の自分を役に重ね合わせた

伊藤健太郎

Q:今泉俊輔というキャラクターを演じるうえで、どのような役づくりを心掛けましたか?

見た目に関しては、原作からあまりにもかけ離れると物語が入ってこないと思うので、衣装だったり、髪型だったり、そういう部分はスタッフさんにすべておまかせしました。内面的な部分に関しては、「今泉はなぜこんなに強いのか」というところを核にして考えました。彼は過去にものすごい挫折を味わっているんですが、今回の映画では、その挫折を乗り越え、そして強くなっていく過程が描かれているので、まずは気持ちを理解すること……例えば、ちょっと自分に置き換えたりもして模索しました。

Q:伊藤さんご自身も大きな挫折があったのですね。

おそらく皆さんも大なり小なりあると思いますよ。俳優の仕事でもそうですが、23年間生きてきたなかで、悔しかったり、悲しかったり、いろんな挫折を味わって、そのおかげでがんばれる今の自分があると思うので、そういうときの気持ちを今泉に重ね合わせながら、作り上げていきました。

Q:今泉の気持ちの変化を理解すると同時に、共感する部分もありましたか?

今泉のようなやり方や気持ちの持っていき方で挫折を克服したこともありましたし、ときには目の前の問題に背中を向けてしまった瞬間もありましたが、いろんな経験をしたことによって以前の自分より強くなった、という手応えは僕自身、実感として持っています。

撮影を通して自転車のスキルを磨いた

伊藤健太郎

Q:自転車のトレーニングも相当積まれたと思いますが、レースシーンはいかがでしたか?

ロードレーサーって両足がペダルに固定されるんですが、まず“クリート”という器具を足にはめる練習から始めて、あとはもうひたすら漕いでいましたね。もともと足が太いうえに、練習してさらに筋肉がついたので、自転車経験者の方から「(元から)乗ってたの?」って言われるくらい見た目がさまになっていたみたいです(笑)。

Q:自転車を漕ぎながら演技をするのもきつかったのでは?

セリフもあるので、どこか冷静でいなきゃいけないんですが、そんな余裕がまったくなくて、ハァハァ言いながら「や、やばい、言わなきゃ!」っていう局面が何度もありました。できれば、自転車を持って帰って自主練したかったんですが、ちょうど別の作品を地方で撮っていたので無理でした。ただ、今から思えば撮影前のトレーニングよりも、撮影を通してどんどんスキルが磨かれ、劇的に成長していったと思いますね。

俳優・永瀬廉に役者魂を見せてもらった

伊藤健太郎

Q:小野田坂道役の永瀬さんはいかがでしたか? 初共演とお聞きしていますが。

たくましいというか、頼もしいというか、主演として作品を引っ張っていく姿を見せていただきました。今までは“アイドル=永瀬廉”として認識していたんですが、現場でお会いして“俳優=永瀬廉”の役者魂みたいなものもいっぱい拝見しましたし、外観で言えば、アイドルが髪の毛を眉毛より上に切るってなかなかないと思うので(笑)、それくらい身を削って演じていたんだなぁと思います。

Q:坂道は同志でありライバルでもありましたが、俳優仲間でそういう存在はいらっしゃいますか?

俳優の友だちが数えるほどしかいないんですが(笑)……そのなかでライバルと言えるのは、(中川)大志くんと(北村)匠海くんくらいですかね。二人とも同世代で一緒に切磋琢磨してきた仲間でもあるので、すごく気になります。彼らがいい作品に出ていたり、いい演技をしていたりすると、悔しいとか、負けてられないとか、そういう思いも確かにあるんですが、何よりもまず、うれしいっていう気持ちが最初に出てくるんです。僕にとっては、それがいちばん気になるところで、先に喜びがこみ上げてくるってことは、それだけ二人のことが大好きだという証しですし。これからも、この関係性は大切にしていきたいですね。


伊藤健太郎

飾り気がなく、どこか飄々としている伊藤だが、同時に肝のすわった男らしさも感じてしまうのは、きっと彼が編み出した“思い込みの術”の仕業だろう。伊藤は「どんなにつらくても『死にはしない!』と自分に思い込ませれば、なんでも乗り越えられる」と自己暗示をかけるというが、この思い込みが、できそうで、実はなかなか難しい。苦手だった絶叫系マシンもこの術で克服したそうだが、並のハートなら、恐怖なんて簡単に封じ込められるものじゃない。伊藤のすごさはつまり、思い込める“ハートの強さ”なのだ。

ヘアメイク:伊藤ハジメ/スタイリング:前田勇弥

映画『弱虫ペダル』は8月14日より全国公開

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