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『大コメ騒動』井上真央 単独インタビュー

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『大コメ騒動』井上真央 単独インタビュー

コミュニケーションは大切

取材・文:磯部正和 写真:尾鷲陽介

映画『超高速!参勤交代』などの本木克英監督が、約100年前に富山県沿岸部で起こり、貧困から家族を守るために立ち上がった女性たちによる初めての市民運動ともいわれる奮闘を描いた『大コメ騒動』。本作で、3人の子を持つ主人公・松浦いとを演じたのが女優・井上真央だ。劇中、日焼けし頬を汚しながら、家族のために健気に、そして力強く生きる漁村の女房を好演した。近年次々と新しい一面を見せる井上が、役づくりのために試みたチャレンジや、女優としての変化などを振り返った。

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役づくりのため、お米断ち

井上真央

Q:本作の企画や脚本にどんな印象を持ちましたか?

「米騒動」は学校の授業で習った程度の知識しかありませんでした。でも脚本を読ませていただき、富山の女性たちがきっかけとなって全国に広がったことを知り、とても興味を持ちました。史実を大切にしながら女性たちの奮闘も描けたらきっと面白くなるだろうなと思いました。

Q:井上さんが演じた漁村のおかか(女房)であるいとは、劇中では頬を泥だらけにして、精悍な顔つきでほっそりした印象を受けました。

減量しなければ……という思いで臨んだわけではなかったのですが、お米を食べたくてもなかなか食べられない役でしたし、いとを演じるうえで、お米を欲する脳になろうと、わたし自身もお米断ちをしたんです。そうしたら自然とほっそりしたんですよね(笑)。

Q:撮影中は、全くお米を食べなかったのですか?

そうですね。撮影中のお弁当もスタッフの方に食べていただいたり……。でもやっぱりお米を食べないと力が出ないですね。(おかかのリーダー・清んさのおばばを演じた)室井滋さんにも「しっかり食べた方がいいわよ!」と心配されました。ただ、お米は食べなかったのですが、日本酒は飲んでしまいました。せっかくの富山ロケでしたし、発酵していれば良いかなって(笑)。

いまの時代に通じる問題が描かれている

井上真央

Q:富山弁や重い米俵を背負うシーンなど、撮影は大変ではなかったですか?

米俵はやはり重かったです。米断ちしていたせいか、力が入らずにフラフラしてしまいました。富山弁も思っていた以上に難しかったです。ただ今回は本木監督をはじめ富山出身の俳優さんも多かったので、その都度イントネーションは「これで大丈夫ですか?」と聞くことができたので助かりました。

Q:いとは度々逆境に立たされますが、行動力や発想の転換で切り抜けていく姿に力強さを感じました。

女性たちの井戸端会議での声が徐々に広がって世の中を動かすというのは爽快ですし、勇気をもらえるなと感じました。

Q:米の買い占めが起きたり、噂や中傷で孤立してしまったり、100年前の話ですが、現代に通じる問題も描かれているように思えます。

撮影していた時は今のようなことが起こるとは思ってもいませんでした。より、今の時代と重ねながら見ることができるかもしれません。

会話はとても大事!

井上真央

Q:女性たちの強さが描かれていますが、劇中の「強くなりたくてなったわけじゃない。ならざるを得ないからなったんだ」というセリフが印象的でした。

いとは農家から漁村に嫁いできた女性だったので最初はおかかたちの間で遠慮や戸惑いもありました。そんないとが家族を守るために少しずつたくましくなっていき、おかかたちとも団結していきます。それは女性ならではですよね。性格や環境が違っていても話をすることで共感できるものを見いだしていくことは女性の方が得意なのかなと。誰とでも仲良くなれるとは限りませんが、相手の良いところを見つけたり、コミュニケーション能力が高いのかもしれません。そんなところもこの作品では描かれています。

Q:井上さんご自身、コミュニケーションに対して何か思うことはありますか?

会話はとても大切だと思います。先入観を持たずに話をすることで生まれるものがありますし、今の時代は特にコミュニケーションをとることは大切ですよね。

30代になって変化した女優としての意識

井上真央

Q:本作をはじめ、『焼肉ドラゴン』『カツベン!』『一度も撃ってません』と魅力的な作品への出演が続いています。以前「自分の面白いという直感を大切に」と話していましたが、それは変わらずでしょうか?

はい。なんとなく自分の中で心が動かされる瞬間ってあると思うんですが、それは信じてみようと思っています。

Q:それは経験から得た感覚なのでしょうか?

20代のときは、目の前のことに懸命に取り組んでいるなかで、いろいろな経験をさせていただきました。30代になり、ある程度自分の考えで選択できるようになったときに、20代で得た経験というのは失敗も含めて必要なことだったんだと思います。

Q:いまはどんなことを意識していますか?

これまでは、どちらかというと周りの方の期待に応えたいという思いが強かった気がします。でも、自分がどうしたいかという気持ちをおろそかにしがちだったのかなとも思うんです。もう少し「自分がどうしたいか」ということに、しっかり向き合っていかなければいけないなと思っています。大変かもしれませんが……。

Q:どんなことが大変だと思いますか?

自分自身と向き合うって疲れることもありますよね。コロナなどもあってそういう時間も多くなったと思うのですが……。でも、自分と向き合うことは役と向き合うことでもあるので、そんな時間も大切にしていきたいです。


井上真央

インタビューの前に行われた動画撮影では、短い時間での撮影だったが、納得のいくまで自分の言葉で表現しようと奮闘する井上の姿があった。さらにカメラを向けられると「変顔とかしましょうか? その方が、多くの人に観てもらえますかね?」と屈託なく話す。インタビュー中も「コミュニケーションの大切さ」に触れていたが、そんな姿からさりげなく周囲とコミュニケーションをとる井上の姿勢が垣間見えた。

(C)2021「大コメ騒動」製作委員会

映画『大コメ騒動』は1月8日より全国公開

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