ADVERTISEMENT

『夏への扉 -キミのいる未来へ-』山﨑賢人 単独インタビュー

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
『夏への扉 -キミのいる未来へ-』山﨑賢人 単独インタビュー

未来が見えないから面白い

取材・文:高山亜紀 写真:日吉永遠

1956年にアメリカで発表されて以来、世界中で愛されてきた小説「夏への扉」の舞台を日本に移し、映画化した『夏への扉 -キミのいる未来へ-』。三木孝浩監督の手によって、タイムトラベルものでありながら、美しいラブストーリー要素も加わった。時を超えて愛する人を救おうとする主人公の科学者・高倉宗一郎役は、監督とは初主演作『管制塔』以来、10年ぶりのタッグとなった山﨑賢人。当時を振り返り、初心に帰って撮影に挑んだと打ち明ける。

ADVERTISEMENT

タイムトラベルできるとしたら

山﨑賢人

Q:壮大なスケールのSF作品です。リアリティーを出すためにどのような役づくりをしていったのでしょう?

もともとSFをはじめとした映画ならではの遊び心のある作品が好きなんです。だから、今作の設定や舞台なども抵抗や違和感なく受け入れられて、自然とこの世界を生きることができたのかもしれません。舞台となった発展した未来である2025年を実際に目にしたら、自分でもこんな風に衝撃を受けるのかなと思い描くことができましたし、藤木(直人)さん演じる人間そっくりのロボットに初めて出会った時には本当に素直に驚いて、そういった感覚を活かしていくこともありました。

Q:自分の知らない過去と、誰も見たことのない未来。どのようにイメージを膨らませましたか?

僕は1994年生まれなので、一応1995年を経験していますが、ここでは映画ならではの時代感になっていると思います。当然ですが、劇中に登場する冷凍睡眠(コールドスリープ)は当時なかったはずですし、2025年もあと4年後の世界とはいえ未知の部分も多々あります。自分でも時代背景を調べてみたのですが、最終的には用意していただいた衣装やセットに引き出してもらった感覚が大きかったです。当時の人は何を考えていたんだろうと想像しながら、衣装を身に着けて、セットに行くのは本当にワクワクしました。

Q:タイムトラベルしたいと思ったことはありますか?

それがあまりないんですよね。実際にタイムトラベルできるようになったら、その時に真剣に考えてみたいです。過去も未来もどちらも行ってみたいし、行ってはいけないような気もします。もちろん想像したことはありますが、生きているということは“いま”の連続であり、未来が見えないから面白かったり、いまを頑張れる理由になったりするんだと思うんです。良い未来になっていても、悪い未来になっていても、どうしていいかわからなくなりそうで怖いです。

三木監督から褒められた鈍感力

山﨑賢人

Q:三木孝浩監督とは初主演作『管制塔』以来、10年ぶりのタッグとなります。どんなことを思い出されましたか?

当時は、本当に右も左もわからない状態でやらせてもらったので、思い出されるのは、監督の人柄の良さと北海道の寒さとご飯のおいしさ。無我夢中だったので、とにかく楽しかったことぐらいしか記憶にありません(笑)。

Q:監督に大成長を見せられましたね。

デビューから10年も経って、あれからいろんな現場を経験してきていますので、もうきっと別人です。当時はバミリ(位置の目印)があったらそこに立たなきゃいけないとか、カメラレールがあったらカメラはそっちに進むんだとか、そういう基礎的なことすら知りませんでした。本当に何もわかっていなくて「なんで同じ演技をもう1回やるんだろう」「なんで今回は1回で終わったんだろう」とずっとそんな調子でした。撮影が終わった後、監督が渡辺大知くんに、僕のことを「鈍感力がいいんだよね」と話してくださったみたいなんです。それが何なのか、自分ではわからないのですが、頭の片隅にとっておこうと思いました。まあ、“鈍感力”を意識するのも意味がわからないですけど(笑)。でも、そういうところを大切にしています。10年経って、いろんなことを知ってきた僕が、監督とまたご一緒できたことで、「初心に帰ろう」みたいな気持ちもありました。

山﨑賢人が考える大人像

山﨑賢人

Q:そんなすっかり大人になった山﨑さんは劇中、清原果耶さん演じる璃子との純愛ストーリーもありますね。

久々の純愛要素はなかなかに照れくさかったです(笑)。璃子とは長い間、一緒に過ごしてきて、お互いに家族としての思いがあるんだと思います。そのせいでどうしても愛の大切さに気づけず、失って初めて気づく。もしかしたら気づかないようにしていたのかもしれません。だけど、家族としての愛なのか、これが恋だったらダメなんじゃないかというジレンマがあり、心にブレーキをかけていたようなところがあります。一方で、璃子の方は彼の思いにずっと寄り添い続けてくれていた。素敵な関係ですよね。宗一郎の心の変化も見せていけたらと思っていました。「璃子はまだ17歳だ。これからも学校へ行って、たくさん勉強して、たくさんの人と出逢って、たくさんの経験をする」という大人目線のセリフがあったことが新鮮でした。

Q:今後は大人のラブストーリーも増えそうですね。

そうですね。経験を積んで、ちょっと大人な役柄にも挑戦していきたいです。

Q:山﨑さんの考える、大人の定義は?

わからないですね。法律では年齢でラインがありますけど、僕はそんなに意識していません。社会人になるかどうかでしょうか。

Q:山﨑さん自身が大人になったなと自分で感じた時はいつですか?

「そもそも大人って何なの?」というところから引っかかりますよね。だから、誰の定義の大人のことを話していいのか、真剣に考えれば考えるほどわからなくなります。年下でも尊敬できる人もいるし、子供みたいな大人もいる……しっかりしているかどうか、かな。では「しっかり」とはなんだろう……自分でも混乱してきました(笑)。

「いまを精一杯頑張る」その連続

山﨑賢人

Q:アクションやラブストーリー、ヒューマンドラマ、ジャンルを超えて主役として活躍し続けていますが、どんな秘訣が?

映画や本を読んだりすることは俳優にとって気分転換にならないという人もいるかもしれませんが、僕は映画を観たり、漫画を読んだり、たくさん経験した方がいいと思っています。もともと好きなジャンルと勉強のために触れるジャンルがあるんですけど、好きなジャンルをつい優先してしまう時もあるので秘訣というより、もうただの趣味かもしれません(笑)。この仕事をしていると、今回学んだことがそのまま次に生かせるかというと、全然そうじゃなかったりします。3歩進んで2歩下がるという作業の繰り返しなので、そこがまた興味深いです。

Q:躍進し続けているイメージの山﨑さんでもそうなんですね。

毎回反省するんです。でも結局、その時の自分が一番いいと思うことをやっているので、後からどう思ってもそれは仕方がないこと。また次、頑張るしかない。いまを精一杯頑張る。その連続だと思います。

Q:山﨑さんがどんなタイプの主人公も合うのは、そういう熱いものをなかに持っているからなのかもしれません。

僕が演じているのは、この映画の世界では主人公ということになりますが、普通に生きているとしたら、自分という人間を生きているだけなんです。作品全体のことを考えると、主演だからみんなの士気をあげて、引っ張っていくために、芝居を全力で頑張ろうとすることもあります。でも、一つの役に向き合う時、その人生をどう生きるかしか頭にはありません。どういう見せ方がいいか、いや感情を優先した方がいいのか。その時々でいろいろな方法に挑戦しています。

Q:今回は猫のピートとの共演もあり、また違ったアプローチもあったのでしょうね。

音や餌で引き付けて、お芝居しながらもあやすみたいな試みは初めての経験だったので面白かったです。猫が素晴らしい存在の仕方をしてくれたので、これまでずっと一緒にいたんだというマインドで接していました。猫がいるだけで現場は和みます。みんなで一緒に映画を作っているという感じがして幸せでした。

Q:犬派のイメージがありましたが、猫はいかがでしたか?

猫もかわいいです。自分勝手な感じがいいですよね。暖かいところにずっといたのに、かまってほしい時だけやって来る。メロメロです。


山﨑賢人

どんな原作ものも山﨑賢人が演じれば、オリジナル作品のように独特な面白さを放ち始める。まさかロバート・A・ハインラインの不朽の名作を彼が演じることになろうとは。そんな大役を果たしておきながら、山﨑本人はいつも通り、淡々とマイペース。主役だってその人生を生きているだけ。役を生きようとまい進するその姿勢が、さまざまな物語にリアリティーをもたらすのか。いやはや毎度のことながら、ほれぼれする。すごい俳優である。

映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』は6月25日より全国公開

最新インタビュー

インタビュー一覧 »

ADVERTISEMENT