映画『スポットライト 世紀のスクープ』レイチェル・マクアダムス単独インタビュー
2002年1月、米新聞 The Boston Globe の一面で明らかになった、神父による児童への性的虐待事件。その真相を暴いた調査報道チーム、スポットライトの目線で内幕を描き、今年のアカデミー賞作品賞・脚本賞をW受賞した映画『スポットライト 世紀のスクープ』において、チームの紅一点記者サーシャ・ファイファーを演じたレイチェル・マクアダムスが初来日し、実在のサーシャと一緒に取り組んだという役づくりから、生涯で一番のアンサンブルキャストと言い切るマイケル・キートンやマーク・ラファロとの撮影現場での様子を語った。
■自分よりも先に本物のサーシャがプロジェクトにいた!
Q:どのようにしてこの映画に参加することになったのですか。
監督のトム(・マッカーシー)とスカイプしたのが始まりだった。それから、脚本家のジョシュ(・シンガー)とも電話をしたわね。トムとスカイプしたときには、「明日、サーシャに電話してみて」と言われたの。私がこの役のオファーをもらったときにはすでに、本物のサーシャがこのプロジェクトの一員だったのよ。自分の演じる人物と一緒に役作りに取り組めるなんて、これこそ女優にとっての夢だわって思った。だからどうしてもこのチャンスを逃したくなかった。それがすべての始まりだったわね。
Q:あなたに声がかかったときには、すでにいろいろなことが決まっていたのですね。
そうね。わたしがオファーを受けた時点で、(スポットライトチームのメンバーである)マイケル・キートンとマーク・ラファロはすでに出演するのが決まっていたわ。
Q:みんながあなたのことを待っていたわけですね(笑)。
あはは(笑)。たぶん、そうね。本当のところはわからないけど。わたしと(新任の編集長・マーティ役の)リーヴ(・シュレイバー)は、少し遅れてキャストに決まったわ。わたしが脚本をもらったときには、半分のキャストがすでに決まっていたと思う。
Q:衝撃的な事件を扱うだけに、この役を引き受けることに責任を感じませんでしたか。
本当にその通りね。でも、誰かの物語を伝えるからには、それを正しく伝えたいと思ったわ。実際に事件を暴いたスポットライトの記者たちにこの作品を誇りに思ってほしいと思ったし、それにとても重大なストーリーだわ。だから誤解を招くようなことはしたくなかった。わたしたちの目の前にある真実には、それを暴いた人々がいるわけで。そしてそれを映画化するにあたって、わたしたちは彼らにアクセスすることができる。だから、言い逃れなんてできないのよ。少なくとも事実を正しく描こうとしたわ。それにトムとジョシュはとても情熱的だった。脚本はすばらしい出来だったし、撮影に入っても毎日、彼らが現場にいたわ。コンピュータースクリーンの後ろで、日々どうやったら良い映画になるのかに取り組んでいたの。彼らは劇中で描かれていたジャーナリストたちのように、信じられないくらい粘り強かったと思う。
■みんな平等!生涯ベストのアンサンブルキャスト
Q:本作の見どころは何といっても、アンサンブルキャストだと思います。演じてみてどうでしたか?
畏れ多い経験だったわ。この業界における才能に溢れた人々に囲まれて仕事をするなんて。今までの中で一番の素晴らしいアンサンブルキャストだったと思う。毎日仕事に行くのが楽しかった。みんなのパフォーマンスが好きだった。本当に、誰かが飛び抜けているというパフォーマンスがなくて、これこそが本物のアンサンブルだと思えた。それはとても貴重なことだし、本当にわくわくするようなことだった。派手な演技はなかったけれど、それでも人々はこの作品を気に入ってくれて、いかに観客が洗練されているのかということも証明してくれたと思っている。
Q:飛び抜けた主役がいないぶん、どのように演じるかを共演者みんなで話し合ったりしたのでしょうか。
ニューヨークで2~3日間の集中的なリハーサルをしたわ。撮影が始まる前にね。それはとても有意義だった。トムとジョシュは、わたしたちにストーリーの全体と詳細を説明したわ。新聞の記事をはじめ、写本や、彼らが数年間にわたって行ったリサーチで発見したものを持ってきてくれた。とても複雑な題材で本当に入り組んでいて、それぞれのパートにするのも難しかった。だから数日間、みんなでシーンごとに取り組んだのよ。こんな機会はめったにないと思うくらい贅沢だったと思う。時間的にも予算的にもね。だから本当にトムには感謝しているわ。それにセットではみんなでよく一緒に時間を過ごしたわ。スポットライトのあの小さなオフィスでね。
Q:撮影現場はどんな雰囲気だったのですか?
とても素晴らしかったわ。シリアスな題材だけど、撮影現場は陽気だったと思う。必然的にね。マーク・ラファロはお笑い担当で。トムはこの題材に関わった人々に対して、尊敬の念を決して忘れない素晴らしい人だったし。本当にチームのように感じられたわ。みんな各自の仕事に対して責任を持って臨んでいて、自分自身の役に集中しながらも、どこかにそれぞれのキャラクターのエゴが感じ取れたりもしたわ。私が理解した限りでは、チームのみんなは平等ね。ある時、サーシャに「チームの中で、最年少で唯一の女性であるってどういう感じなの?」って尋ねたことがあったの。そしたら彼女は、「チームにいてそれを意識したことはなかった。他の人たちとの違いを感じなかった」って答えてくれたから。あと、彼女はロビーのことを指導者として慕っていて、劇中ではマイケル・キートンが彼を演じているんだけど。彼女は彼のことが大好きで、とても尊敬していて……(恥ずかしそうな表情で)だからこの役を通して、わたしもマイケル・キートンのことが気になってしまって仕方なかった(笑)。