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「華氏911」は社会現象のひとつ

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 マイケル・ムーア監督のブッシュ批判映画「華氏911」が全米で公開されるや否や、テレビ、ラジオ、雑誌がこぞってこの映画の賛否について取り上げはじめた。ちょっとしたパーティーに出かければ、「あれ、どうだった?」と、作品の話題で持ちきりだ。11月に大統領戦を控えていることも、タイムリーだった。

 アメリカでの批評家たちの感想は賛否両論だ。「アンフェアーなドキュメンタリー。意見が偏っている」とする人たちと「よく出来た映像作品だ」のおおむね、この2手にわかれる。

 確かにドキュメンタリーというよりも、作者の個人的意見が反映された「コラム」だ。ただ、非常に出来の良いコラムだ。

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 実際にサンタモニカの映画館で、何人かの人に感想を聞いてみた。すると、ほとんどが「良かった」と答えた。驚いたのは、とにかくみんな、見知らぬ人間にも自分たちの意見をとても話したがっていたことだ。あるカップルとは映画が終った後、2時間も話しこんだ。

 少なくとも、これだけは言えそうだ。この作品のおかげで、アメリカ人の多くは、今回の戦争について、「愛国心が無い人」と思われずに、安心して反対の意見を唱えることが出来るようになったということだ。

 ムーアがやったことは、今まで沈黙していた戦争「消極派」の人たちに、非常にわかりやすいスローガンを渡してあげたことなのかもしれない。

 いずれにしても、自分の作品をきっかけに、アメリカ中の人たちが議論を始めたわけだから、ムーアは監督冥利につきること間違いない。
(レポート:こはたあつこ ロサンゼルス)

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