役所広司に独占インタビュー!海外進出作品3本目となった『シルク』の裏話
役所広司、中谷美紀など日本の人気俳優が、キーラ・ナイトレイやマイケル・ピットと共演を果たし話題を呼んでいる映画『シルク』。海外の作品には映画『SAYURI』『バベル』に続き3本目の出演となる役所に、自身が演じたミステリアスな役柄や主演のピットについて話を聞いた。
主人公のエルヴェ(マイケル・ピット)は、美しい絹の糸をはく蚕を求めてはるか“世界の果て”の日本にやってくる。そこでエルヴェを歓待し、彼にシルクをもたらす男が役所演じる原十兵衛だ。日本の登場人物たちの背景はまったく語られず、すべてがミステリアスな雰囲気に包まれている。しかし役所はリアリティーを持った人物として演じるために、台本に書かれていない原という男の背景をフランソワ・ジラール監督と話し合い、作り上げていったという。「彼は商人の跡取り息子だけど、勘当されて横浜でフラフラしているときに外人と知り会ったのだろう、と。そして商人として西洋人と密貿易を重ねながらいろんな人間に会う中で、エルヴェのことは気に入ったと思います」と知られざる裏エピソードを教えてくれた。役所が語る、ミステリアスな男の背景を知ることで、また違った作品の楽しみ方ができるかもしれない。
もうひとつの心に残るシーンがある。露天風呂で休んでいる原が、そこからしか見えない鳥を見ながらエルヴェに語りかける場面だ。「原は先祖代々ずっとこの土地にいたんだけれども、この場所にはもう自分はいられなくなる。ここを出て行かなくてはいけないと心の中で思っている。エルヴェに言ったというよりは自分自身に言ってきかせている、と思って演じた」という。日本に差し迫る時代の変革の予感。それは後半の物語の展開にもつながっていく。
本作でエルヴェを演じたマイケル・ピットについては、「おれは俳優だっていう感じがなくて、ミュージシャンでもあって音楽でも自分を表現しているし、俳優としてキャリアもあるけど、気軽さというか、ガツガツしてないところが、エルヴェという役にとても合っていたんじゃないかな」と分析。自身のバンドを持つマイケルは、日本での撮影が休みのときには、ロケ地の松本でスタジオを借りて、音楽仲間と次のアルバム作りをしていたのだそうだ。
「この映画は“心の旅”ですから。人は自分の中にいろんな思いを秘めているものだし、その思いの一部分が映画で描かれているというのか、エルヴェにとっては女性への思いが心を大きく占めたのでしょうけれど。そして日本のことが現実にあったのかも本当はよくわからない……」と自身の解釈を語った役所。そう、日本の風景や日本人がどうとか、そんなことはどうでもよくなってしまうのだ。それもすべてがラストのための巧妙な伏線だったのだと、エンドロールが流れる間、観客はあのシーン、あのセリフ、あのときの表情ひとつひとつを思い出し、静かな感動と余韻に浸るだろう。
『シルク』は、19世紀のフランスと日本を舞台に描かれる幻想的な愛の物語。イタリア人作家アレッサンドロ・バリッコが1996年に発表した世界的ベストセラー小説「絹」を、『レッド・バイオリン』のジラール監督が映画化した。主人公エルヴェの妻を演じるキーラ・ナイトレイは原作の大ファンで出演を即答したという。
映画『シルク』は1月19日より日劇3ほか全国東宝系にて全国公開
オフィシャルサイト silk-movie.com