鬼才ハーモニー・コリン監督!ドラッグ卒業後は、まぼろしの魚を探す冒険の旅に出ていた!?
ニューヨークに住むストリートキッズたちの姿を赤裸々に描いた映画『KIDS/キッズ』の脚本を、わずか15歳で書きあげたハーモニー・コリン。エイズ、ドラッグ、セックス……をドライに書いた彼の才能に、多くの監督が衝撃を受けた。その後、自らメガホンを取って話題を呼んだ映画『ガンモ』で絶賛を浴び、『KEN PARK(ケン・パーク)』を発表したあと、映画界からこつ然と姿を消したハーモニー。彼は一体どんな生活を送っていたのだろうか。
「何だか、急に何もかもが嫌になっちゃって、ふらっと旅に出たんだ。かなりのんびりしたな。幻の魚を追って、ジャングルの奥地まで行ったこともあった(笑)。でもある日、突然道ですれ違った女性に“映画を撮れば?”って突然言われて、この作品を撮ることにしたんだ」
ハーモニー監督いわく、マクドナルドのチキンナゲットが大好物な変わり者という弟のアヴィ・コリンと初めて共同執筆した本作。「チキンナゲット3か月分買ってやるから一緒に書こうって誘ったんだ。もちろん即OKだったよ。兄弟げんかはしなかったな(笑)。弟は本当に変わってるから、とても不思議な作品になったと思う!」
兄のハーモニー監督はおかしそうに笑っていたが、こちらからすれば幻の魚を追っていた彼も、弟と同じくかなりの変わり者に思える。そんな、変わった兄弟が持つ不思議な感覚は、本作からも伝わってくる。マイケル・ジャクソンとマリリン・モンローのインパーソネイター(物まねをするパフォーマーのこと)2人の切ない恋。彼らの住む世界は、ハーモニー監督のようにどこか不思議だ。
「僕は、強迫観念を持つ人間にすごく惹(ひ)かれるんだ。それは『ガンモ』のときもそうだったんだけど。今回は、社会と少しずれた人間たちの、優しくて不思議で悲しい物語になったと思う。特に主人公の青年を演じてくれたディエゴ(・ルナ)は、素晴らしい演技を見せてくれたよ。彼がマイケル・ジャクソンのまねをすると、何だかすごく切ない気持ちになって、思わず泣きそうになってしまうんだよ」
『KIDS/キッズ』や『ガンモ』ではドラッグに依存する若者たちを辛らつに描いていた監督。本作には、“ドラッグ中毒”の若者は出てこない。「あのころは、僕自身、ドラッグにはまっていたこともあった。世の中のスピードが速すぎて、僕にはついていけなくて……、でもドラッグにはまることで、世の中をゆっくり見ようとしていた」
19歳で脚本家デビューして、名声を手にし、ドラッグにはまり、こつ然と映画界から姿を消したハーモニー監督。「今は僕のドラッグはこいつさ」と、ミネラルウォーターを片手にナチュラルな笑顔を見せてくれた彼は、映画『ミスター・ロンリー』を作ったことで、監督としても見事に生まれ変わった。
映画『ミスター・ロンリー』は2月2日よりシネマライズほかにて全国公開
オフィシャルサイトmisterlonely.gyao.jp