直撃インタビュー!アカデミー賞有力『ノーカントリー』のハビエルは「おかっぱのヅラに涙目だった!」
第80回アカデミー賞
映画『スパイダーマン』のサム・ライミ監督のもとで、編集をやっていたジョエル・コーエンが弟イーサンとコンビを組んで映画制作を始めてから20年以上の月日が流れた。コーエン兄弟は、インディペンデント界で一躍名をはせ、今やハリウッドでも確固たる地位を獲得してきた。そして、いまや今年のアカデミー賞ナンバーワン候補と言われている『ノーカントリー』が注目されている。ストーリーは、テキサスとメキシコを舞台に、あるハンターが発見した現金とヘロインをめぐり、男たちの戦いが繰り広げられる。その熱き男たちを演じたハビエル・バルデムとジョシュ・ブローリンにインタビューした。
-トミー・リー・ジョーンズの警官は、まさにぴったりのキャスティングだと思うのですが、あなたがキャスティングされた経緯を教えてください。
(ジョシュ・ブローリン)わたしがキャスティングされる前に、トミー・リーとハビエルの出演はすでに決まっていて、コーエン兄弟は、わたしの配役が一番簡単に決められると思っていたらしいのですが、数か月しても決まらず、ジョエルの奥さん(フランシス・マクドーマンド)の話では、かなりいらだっていたらしいのです。最終的に、彼らの感覚では、その時点で自分たちの映画を解釈している俳優をとりあえず配役し、俳優に好きなように演じさせるつもりだったんだと思います。そのためか、撮影中は、彼らに動かされている感じがしませんでした。
-原作コーマック・マッカーシーについて研究したり、彼がセットを訪れたりしたことはあったのでしょうか?
(ジョシュ・ブローリン)コーエン兄弟は、この作品の脚色ついて直接コーマックと話をしていなかったので、わたしの方からコーマックに3回電話をしてみたのですが、ちょうどそのとき彼は、シカゴで舞台をやっていて、彼の留守電に「本にあなたのサインが欲しいわけじゃなく、単にあなたと話してみたいだけなんだ」とメッセージを残しました(笑)。後にセットを訪れた彼は、非常に友好的であり、好意的な人物でした。後でわかったのですが、コーエン兄弟が、コーマックにわたしが電話したことを伝えたらしいのです。
-映画内でのセリフが少ないため、どうやってキャラクターを作り込んでいったのでしょうか?
(ハビエル・バルデム)セリフが少なかったのは、ラッキーでしたが、スパニッシュ・アケセントを取り除くのにずいぶん苦労しました。それと、演技の中で沈黙やポーズをとっている瞬間に、観客がキャラクターの心境に入り込めるように演じました。あの特別のヘアーカット(おかっぱ頭)は、トミー・リー・ジョーンスの読んだ本から生まれたもので、売春宿の客をイメージしたものです。始めにほかの人がそのヘアーカット(おかっぱ頭)にトライし、結構よく見えたのですが、自分がトライしたら……笑えませんでした。それに、残り3か月間そのカツラをかぶっていなくてはいけなくて……目がキラキラして見えるのは(泣いていたから)そのせいです(笑)。
-ハビエルは、スペインやヨーロッパの映画でずっと仕事をしてきたわけですが、アメリカ映画へ移り、その違いは大きいのでしょうか?
(ハビエル・バルデム)そんなに違いはないと思います。実際、わたし自身ずっとアメリカに行き、特に目標を達成しようと計画していたのではなく、ちょうどその場にいたという偶然が重なっただけだと思います。いまだにスペインから来た俳優という自覚でやっています。唯一違いがあるとしたら、アメリカの映画は、ワンシーンに時間をかけ、製作費に余裕があるところです。もちろん、言語的なチャレンジはありますが、それを自分のものとして所有しなければなりません。
-あなたは、俳優一家で育ち、ずっと俳優になろうと思っていたのでしょうか?
(ジョシュ・ブローリン)わたしは最初、この職業をよく思っておらず、弁護士になろうと思っていたのです。それは、一時期、わたしたちは、父(ジェームズ・ブローリン)の友人の家や、ゲストハウスに住んでみたこともあれば、それと逆にお金が入って豪邸に住んでみたりと、実に不安定な環境を見てきたからなのです。しかし、学校で取った即興でやるドラマのコースで、一挙に興味がわいてこの世界に入りました。
(取材・文:細木信宏 シネマトゥデイ)
映画『ノーカントリー』は3月15日より日比谷シャンテ シネほかにて全国公開
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