サラ・ポーリーに直撃インタビュー!ストーカーになって大女優を追いかけた?
31日から公開される映画『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』で監督デビューを果たしたカナダの女優サラ・ポーリーに話を聞いた。結婚44年目にして妻がアルツハイマー病を患い喪失感に苦しむ夫の姿をきめ細やかに描写し、監督としても才能を発揮したサラが撮影秘話を語ってくれた。 【関連作品の写真はこちら】
監督だけでなく自ら脚色も手掛けて、その見事な手腕に世界中の人が感嘆の声を上げたほど、高い評価を得た本作。原作(カナダを代表する女性作家アリス・マンローの短編「クマが山を越えてきた」)の魅力についてサラは、「長い歴史を重ねてきた夫婦の愛の物語であるというだけでなく、わたしたちが普段意識してないときの記憶が、わたしたちにどう影響を与えるのかというテーマに惹(ひ)かれた」と語る。
何よりも本作で10年ぶりにスクリーンに復帰し、アルツハイマー病に侵される妻を演じた大女優ジュリー・クリスティの名演技は必見だ。「今回一番大変だったのが、ジュリーをキャスティングすることだった。彼女なくして撮影する気はなかったので、8か月もかけて説得したの」とサラ。女優として大先輩のジュリーに対して、20代のサラがどのように演技指導したのか大いに気になるところだが、「こうしてほしいという要望を伝えただけ。でもジュリーから“何度もそんなに言うならあなた、やってみせてよ!”と言われたのだけど、“いいえ、わたしは絶対やりません”といって断固拒否したわ(笑)」とあくまで監督として接したと教えてくれた。
もう一つ大変だったのはカナダでの真冬のロケ撮影だったという。スクリーンに映し出される白い雪化粧をした美しいパノラマは見事だが「初日の気温はマイナス30度。1時間で髪の毛が凍ってツララが下りてくるような極寒の環境で、これから30日間このクレイジーな天候の中撮影するのかとスタッフ全員の目がパニックになっていたわ(笑)」と語る。
また光の使い方にも細心の注意を払った。これらは登場人物たちの心象風景を表しているという。「まるで白く光るキャンバスに映像が映っているような、そんな白い冬の陽射しや、カナダの光を意識したわ。言葉でうまく説明するのは難しいのだけど、その光は本能的に記憶とつながっていて、悲劇の合間でしか経験のすることのできないオープンになった自分の心とつながりがあるの」。雪景色の静かで穏やかな美しさとまばゆい光の中に、人生の終盤にさしかかった夫婦の愛の姿が浮き彫りにされるのだ。
サラが映画の中で一番気に入っているセリフは、看護士のクリスティがグラントに言う「あなたがなるべきだった人に今からだってなるのは遅くない」というセリフだという。「これはこの映画全体を表した言葉といえるわ」とサラ。記憶を失った妻の姿にがく然とし、孤独と寂しさにさいなまれながら、少しずつそれを受け入れていく夫の姿に誰もが深い感動を覚えるはずだ。
映画『アウェイ・フロム・ハー君を想う』は5月31日より銀座テアトルシネマほかにて全国公開
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