ブリトニーにもなれる?演技派マイケル・シーンの『フロスト/ニクソン』で開幕!【第52回ロンドン映画祭】
10月15日(現地時間)、トニー・ブレア役のそっくりぶりが記憶に新しいマイケル・シーンが今度はサー・デヴィッド・フロストの若き日を演じる映画『フロスト/ニクソン』(原題)のワールド・プレミアで、第52回ロンドン映画祭が幕を開けた。
映画『クイーン』でのトニー・ブレア役で一気に知名度をあげたマイケルだが、イギリスのお茶の間では、その前からマイケルのブレア役は知られていた。ブレアとゴードン・ブラウンの間でなされたという労働党党首選の際の密約を描いた2003年放映の単発テレビドラマ「ディール」でも、マイケルが演じたブレアのそっくりさが話題になった。その2作ですっかりブレアのイメージが定着したマイケルが、本作では一大政治スキャンダル、ウォーターゲート事件を起こしたニクソン元大統領に鋭く迫ったイギリスのニュース・キャスター、デヴィッドを演じている。「ディール」『クイーン』に続き今回もコンビを組んだ脚本家のピーター・モーガンに「もし、ブリトニー・スピアーズの映画を撮るなら、マイケルはブリトニーも演じられるだろう」と言わしめるほどの成り切りぶりを見せている。
ロンドンとブロード・ウェイの両方で舞台上演もされた本作、マイケル、ピーターに、ニクソン役のフランク・ランジェラも舞台と同様のメンバー。フランクのトニー賞受賞をはじめ、高い評価を得た舞台だが、映画の方は『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞も受賞しているロン・ハワードがメガホンを取り、番組収録中、休憩のたびにそれぞれのチームからアドバイスを受けるニクソンとフロストの様子など、ゴングが鳴るごとにコーナーに戻るボクシングの試合のようにスリリングだ。加えて、ニクソン側近を演じるケヴィン・ベーコン、ニクソンを糾弾することに情熱を燃やすジャーナリスト役のサム・ロックウェルなどうまい役者が脇を固め、ウォーターゲート事件そのものを知らなくても、十分楽しめる作品に仕上がっている。
主な関係者のほとんどが参加したレッドカーペットだが、黄色い声があがったのは、やはり、主役のマイケル登場のときだった。ブレア、フロスト役とも髪型もしっかりセットしてあり典型的な中年男性のように思っている方もいらっしゃるかもしれないが、写真のように実物は小顔のカーリーヘアで、まだ青年と言っても通じそう。来年40歳になるというのがかえって信じられないほどだ。レッド・カーペットの終盤には今もまだ現役で仕事を続けるサー・デヴィッドご本人が登場。こちらは来年70歳になるのだが、作品中でマイケルが見せた快活な調子とまったく同じに報道陣、観客に明るく応えていたのが印象的だった。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)