アカデミー賞、50年越しのCM放送禁止をついに解禁した理由
第81回アカデミー賞
先週アカデミーから発表された2009年2月開催予定の第81回アカデミー賞要項によると、50年間守られてきた「映画予告CM禁止令」が今回より解禁となっており、業界メディア及び関係者をを騒然とさせている。
アカデミー賞のテレビ放映が始まって以来50年間、主催者側であるアカデミーがかたくなに曲げなかった授賞式放映の際の規則があった。それは、「TV放映の際に映画の予告編を受賞式合間のCMとして認めない」というルールだ。
いよいよ天下のアカデミーにまで、経済難の余波が来たか……というのが大方の見解。ここ数年、低視聴率に苦しんでいるアカデミー授賞式のTV中継。去年の視聴率もさんざんだった。これでは放映するネットワーク局側もCM枠を高額でさばくのに一苦労してしまう。視聴率が悪ければ良いスポンサーが付かない。スポンサーがつかなければお金が入らない。お金が入らなければ授賞式の放映どころか式自体の運営にも支障をきたしてしまう。そこでネットワーク並びにアカデミーが目を向けざるを得なくなったのが昔からこのチャンスを待っていた新しいスポンサーである映画スタジオである。
スタジオ宣伝部にしてみればアカデミー放映時のCM枠ほどオイシイものはない。なぜなら授賞式を見ている人たちはほとんど全員といってもいいほど映画ファンだからである。この枠で、近日公開の映画予告編を流したらどれだけの効果が期待できるか、というのは専門家でなくても想像がつく。
本来は「特定の映画へのひいきに類似する行いを避ける」という趣旨で禁止された予告編CM放映。だがこんなご時世の昨今である。実際問題、授賞式放映権のあるABCネットワークも予告編解禁に対してかなりアピールしたらしいのだが、授賞式の視聴率低下からくる財政難を緩和するためには古い規則を再検する必要があると、アカデミー側も考えたようだ。先週始めにアカデミー会員たちの間で採決が取られ、「予告編禁止法」が排除されることが多数決で決まった。
アカデミー会長のシド・ゲインズ氏によると、アカデミーが授賞式の放映権から得る利益は6500万ドルに上るといわれ、協会の一番大切な資金源となっている。「授賞式は映画をたたえる式典なのだから、品のある予告編である限り放映してもいいじゃないか、ということになりこのような結論に達した」と語った。
この新ルールに基づいて、映画スタジオは一社一本(大きなスタジオ傘下の製作会社は個別に一社として数えてもらえる)30秒から60秒の枠を買う権利が与えられる。
プロ・アメフトのチャンピオンシップであるスーパーボールで放映されるCMは、どれも凝りまくっているので有名だが、アカデミー賞の映画予告編もひょっとしたら同様のパターンで非常に楽しいものが期待できるかもしれない。来年のアカデミー賞放映が楽しみになってきた。