アメリカ、秋のテレビドラマで視聴率ダントツ1位を記録した大人気ドラマの秘密
9月から始まり、10月に入って加熱の一途をたどる米ネットワーク局の秋季新番組人気争い。アメリカの新番組は視聴率が悪いと、シーズンの途中だろうが何だろうが思い切り打ち切られてしまう。そんな熾烈(しれつ)な戦いの中で新番組視聴率争いのトップに躍り出たばかりか、批評家たちからも視聴者たちからも絶賛の嵐を浴びたスゴイ番組がある。それは10月8日に放送されたABC系局ドラマ、「ライフ・オン・マーズ/Life on Mars」(原題)だ。
放映された翌日のエンタメ・ニュースはこぞって「ライフ・オン・マーズ」の出来を褒め称え、「エンタテイメント・ウィークリー」のネット・ブログには番組に対する賞賛の書き込みが分刻みで増殖というすごい反響だった。
ストーリーの最初の舞台になるのは2008年のニューヨーク。主人公のサムはNYPDの刑事。連続殺人を捜査中に、パートナーであり彼女でもあるマヤを犯人に誘拐されたと知ってパニックに陥る。取り乱して道に飛び出した瞬間、サムは車にはねられてしまうのだが、無傷で意識が戻る。しかし、なんとそこは1973年のニューヨークだったのである! 自分の頭がおかしくなったのか、マヤ誘拐の謎が隠されているのか……? 謎を解かなければならないのと同時に30年以上の年代ギャップを背負ったサムは当然ドタバタに巻き込まれる……。というわけで、シリアスな刑事ドラマにスパイスの効いたユーモアあふれるセリフが散りばめられ、近年マレに見る味のあるドラマに仕上がっている。
「ライフ・オン・マーズ」人気の理由は脇を固める助演陣。主役のサムを演じるジェイソン・オマラは、以前「グレイズ・アナトミー」や「CSI」などにゲスト出演したことはあるものの、こんな大役は初めて。そんな彼を支えて、映画『レザボアドッグス』や『テルマ&ルイーズ』でお馴染みのハーヴェイ・カイテルが初のテレビ番組レギュラー出演を果たしており、主人公をいたぶるのが趣味の鬼ボスの役で絶妙の演技を提供している。もう1人の注目助演男優は「ソプラノス/The Sopranos」でトニー・ソプラノの子分役クリスを演じてから人気者のマイケル・インペリテリ。下町なまりバリバリで口の悪いサムの同僚役でレギュラーで出演している。
実はこの番組、ストーリーはイギリスからの輸入もの。オリジナル版の舞台になったのはロンドンだが、アメリカ版ではニューヨークが舞台。アメリカ版では、責任者が製作中に降板するなどのハプニングがあり、「先行き危うし!」との声も聞かれていたのだが、結局アメリカ風に脚色されていたストーリーを、もっとイギリスのオリジナル版に忠実なものに変更し、キャストも大幅に入れ替えた末の大成功となった。まさに災い転じて福となるという結果で、ハプニングが功を奏したようだ。
さて今週デビューの目玉新番組は、クリスチャン・スレーター主演のNBC系「マイ・オウン・ワースト・エナミー/My Own Worst Enermy」だ。昼は普通のサラリーマン、夜は殺し屋というニ重人格の男を演じる。こちらも映画スターからテレビへ転向というパターン。テレビの大スターが映画俳優になるというのはよく聞く話だが、映画の大スターがテレビに降りてくるというのは非常に恥とされていたハリウッドだった。だが、ここ最近のトレンドとして、テレビ番組も非常に質が高くなり、ほとんど映画と同様のクオリティーになったということで、映画俳優たちもあまりタブーとして考えないようになってきているのかもしれない。
そろそろ終盤を迎えている秋の新番組レース。勝者となって生き残るのは果たしてどの新番組か?