『アンナと過ごした4日間』のストーカー男のモデルはシャイな日本男子!?
第21回東京国際映画祭
22日、六本木ヒルズにて第21回東京国際映画祭コンペティション部門に出品されている、映画『アンナと過ごした4日間』のイエジー・スコリモフスキー監督が記者会見を開いた。
1960年代から活躍するポーランドの巨匠スコリモフスキー監督だが、今回の新作の発表は何と17年ぶり。その間は役者として活躍したり、もう一つの顔である画家としての才能を発揮していたという。そんな多才な巨匠を再び映画の現場に引き戻すインスピレーションを与えたのは、内気過ぎて好きな女性に近寄ることもできない日本人男性が、深夜こっそり彼女の部屋に忍び込み、じっと寝顔を見つめていたというやや気持ち悪い新聞記事からだったという。
主人公レオンは看護師のアンナに恋をするのだが、ただ窓から彼女をのぞき見たり、夜更けにこっそり部屋に忍び込むことしかできない内気な中年男。「観客を思いのままに操ることを常に意識している」と認めるスコリモフスキー監督の演出は、冒頭でレオンを悪い男に見せつつ、ストーリーが進行するに従って、彼に下した評価が間違っていたのではないかと観客に思わせる絶妙な展開だ。
「レオンの孤独を理解し、その行為を許せるのかどうかがこの映画のテーマなんだ」と語るベテランのスコリモフスキー監督にとっても、主人公の心の闇をスクリーンに映し出すために、夜のシーンを多用し奥行きのある暗闇を表現する撮影は、極めて大きなチャレンジだったという。そして、主演俳優アルトゥール・ステランコにとっても本作はかなり大変な経験だったらしく、スコリモフスキー監督はほほ笑みながら「地方劇団の役者である彼にとって映画はほとんど初めてで、終始緊張し震えていたんだ(笑)。だからおどおどしたレオンは彼そのものなんだよ!」と撮影を振り返った。
一見、強面だが、サングラスの奥で時折ブルーの瞳がいたずらっぽく笑っているのが印象的なスコリモフスキー監督。ややブラックながら抜群のユーモアセンスの持ち主なのだ。『アンナと過ごした4日間』にはそんな巨匠のエッセンスがたっぷり詰まっている見ごたえ十分な作品だ。