モンスターを愛するデル・トロ監督が『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』を語る!
映画『ヘルボーイ』から約4年、映画『パンズ・ラビリンス』での名声を経て製作された新作映画『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のギレルモ・デル・トロ監督に話を聞いた。
その大きな体と大きな手から生み出された本作は、アメコミを原作としながらも、デル・トロ監督らしいビューティフルでクレイジーな世界観に満ち溢れている。本作はアクション色の強かった前作『ヘルボーイ』とは一線を画し、デル・トロ監督の魑魅魍魎(ちみもうりょう)を敬愛する姿勢が、スパイスとして散りばめられた大傑作モンスター・ムービーとなっている。
だが、ヘルボーイをはじめ本作に登場するモンスターたちはどこか泥臭く、モンスターでありながら人間のような側面を持ち合わせている。「僕はどこにも属さない存在が好きなんだ。2つの世界の間でさ迷い、葛藤(かっとう)するキャラクターに惹(ひ)かれるんだ」と語るデル・トロ監督。確かに本作には2つの世界が存在する。人間に協力するモンスターであるヘルボーイたちが存在する世界と、地下に存在する魔法世界の生き物でしか入ることのできないトロール市場と呼ばれる世界だ。「参考にしたものはたくさんあり過ぎて言えないけど、ヨーロッパのビクトリア朝時代のイラストや中世の版画からも影響を受けた」と語るデル・トロ監督だが、ホラー漫画家の伊藤潤二や日野日出志が大好きというだけあって“コワ美しい”ビジュアルの数々に、ついついため息が漏れてしまう。
さらにそのトロール市場にはデル・トロ監督らしいお遊びがあるという。それは伝説的怪奇小説作家 H・P・ラヴクラフト原作の小説「狂気の山脈にて」に登場するモンスターを登場させているということ。なおこの作品はデル・トロ監督の手によって映画化が決まっており、さらには16年前に脚本執筆済みという念願の企画でもある。デル・トロ監督は、枝豆に羽根の生えたようなイラストを描きつつ「ラヴクラフトが小説に書いて想像した通りの造形だよ」と恥ずかしそうにほほ笑んだ。「この映画はいわゆる敵を倒してヤッター! というアメコミ映画ではないんだ。モンスターにもそれぞれ言い分があり、倒されたモンスターを観て悲しい気持ちになってくれれば、僕の狙いは成功したといえるだろうね」とモンスターを心から愛するデル・トロ監督らしい、本作のテーマを語ってくれた。
映画『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』は2009年1月9日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開