東京映画祭グランプリ作品がロンドンでも高評価!『トルパン』初監督作品賞!【第52回ロンドン映画祭】
ロンドン映画祭閉幕となる10月30日(現地時間)、映画『スラムドッグ・ミリオネア』が上映されたクロージングナイトガラで各賞の発表も行われ、初監督作品賞は映画『トルパン』、批評家賞は映画『スリー・ブラインド・マイス』(原題)が受賞した。
最もオリジナルで創造的な初監督作品に送られるザ・サザーランド・トロフィーには、カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール受賞の映画『ハンガー』(原題)、驚くべきデビューと紹介された横浜聡子監督の映画『ジャーマン+雨』など、それぞれに力のある13作品がノミネートされた中、『トルパン』が受賞。カザフスタンの青年アサが思いを寄せる女性の名前をタイトルにした本作、砂ぼこりの舞う荒野の中、すぐに移動できる簡単な作りの家で朗々と歌う少女や、アサが生まれたばかりの子羊に人工呼吸する生々しいシーンなど、カザフスタンの文化を背景に、嫁のあてもないアサの葛藤(かっとう)が時にコミカルに、時に切なく描かれている。
批評家賞は、カンヌやヴェネチアの同賞と同じ国際映画批評家連盟が、映画芸術を発展させる作品に与える賞。ノミネートされたのは1、2作目といった新人監督たちの13作品。菊地凛子やレイチェル・ワイズ出演の映画『ザ・ブラザーズ・ブルーム』(原題)や、ロバート・カーライル出演の映画『アイ・ノウ・ユー・ノウ』(原題)などもノミネートされていた中、オーストラリア作品『スリー・ブラインド・マイス』(原題)が受賞した。海軍から休暇で家に戻る3人の若者を描いた本作は、主要な3人をはじめ、休暇中に出会うそれぞれの人物のキャラクターが味わい深い作品だ。3人の中の1人で、3人のほかの1人の母親にアタックされてしまう人を演じているマシュー・ニュートンが監督も務めている。
ドキュメンタリー映画賞はレナード・バレットとフローレント・デ・ラ・トゥレヤ共同監督による女性ボクサーを追った映画『ヴィクトワール・テルミニュス』(原題)、インドの偉大な映画監督サタジット・レイにちなんだサタジット・レイ賞は本映画祭でワールドプレミア上映された初監督作品の中から選ばれるものでジャンニ・ディ・グレゴリオ監督の映画『8月のランチ』、短編賞はリチャード・ペンフォールドとサム・ハーン共同監督の映画『リービング』(原題)がそれぞれ受賞した。
映画祭の芸術監督を務めたサンドラ・へブロンが「政治、歴史と記憶」と要するように映画『フロスト/ニクソン』(原題)、映画『チェ』『W』(原題)など政治的な人物をテーマにした大作をはじめ話題作が連日のように上映された今回の映画祭、途中、映画祭とは別に映画『007/慰めの報酬』のワールドプレミアもあり、レッドカーペットが敷かれない日はなかったレスタースクエアに、ようやく日常が戻りそうだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)