古田新太が新作映画で『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロに変身?
映画『小森生活向上クラブ』で古田新太がマグナム片手に、映画『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロもビックリな処刑人を生き生きと演じている。
本作で古田は、日々無味に生き、部下からもなめられている主人公の小森課長を演じている。ストーリー冒頭の小森課長は、普段テレビドラマやバラエティー番組でよく目にする古田自身のようにほんわかとして、一見平和主義的人物のよう。しかし満員電車で痴漢被害者ぶる女性を目撃した瞬間、小森課長の心の奥に眠っていた獅子ならぬ『タクシードライバー』でデ・ニーロ演じたトラヴィス・ビックルが目を覚まし、ついにはその女性をホームから突き落としてしまう。
それからは家庭生活、そして会社内での小森課長の存在感は大きくなり、ゆとり教育が生んだダメ部下も見事更生。マグナムを手に入れてからは、ボッタクリ・バーの従業員や不良少年を次々と射殺。心の底にいた暴力性=トラヴィスが乗り移ったかのように社会悪を処刑していく。こうして「悪行の限りを尽くす連中を殺すこと、それはむしろ正義である」をモットーに仕置き人となった小森課長だが、そのモットーが部下たちの間に広がり、ついには「KSC」(小森正義クラブ)が発足。あれよあれよという間に会長に就任し、カリスマのように祭り上げられてしまう。小森課長は、正義とは一体何なのかを悩むものの、仕事化していく悪人成敗の波に本来の目的が薄れていくように感じていってしまう。
『タクシードライバー』のトラヴィスといえば、若き日のデ・ニーロが演じたベトナム戦争帰りで不眠症のタクシードライバー。今後の人生を第二のベトナム戦争ととらえ、深夜のニューヨークをタクシーで流しては、自身の中に眠る狂気を膨らませていくという孤独な男で、次期大統領候補の暗殺未遂を経て、少女を囲っている売春宿に単身武装して乗り込んでいく。トラヴィスのように体を鍛えたり、悶々と悩み苦しむことは一切ない中年体系の小森課長だが、悪人成敗という考えはほとんど一緒。さらにマグナムを構えて処刑を実行する古田の冷徹な顔とデ・ニーロの顔がダブらなくもない。本作『小森生活向上クラブ』は、お茶の間では観ることのできないワル古田を堪能することができる衝撃作品といえるだろう。
映画『小森生活向上クラブ』は11月8日より渋谷シネ・アミューズほかにて全国公開