次男坊の特性…“賢いが、上の兄弟に劣等感”…そんなホアキン・フェニックスの背景は?
映画『アンダーカヴァー』でホアキン・フェニックス演じるボビー・グリーンの典型的なダメ次男坊のキャラクター設定が実に見事だ。
映画で描かれる次男というのは大抵、賢いにもかかわらず兄や両親にコンプレックスを抱き、アウトサイダーへと道を踏み外す者が多い。その典型的な例として最も有名なのが、永遠の青春スター、ジェームズ・ディーンが不良次男キャル・トラスクにふんした映画『エデンの東』だろう。この作品から、次男は劣等感に苛まれるという系譜が出来上がったというのは言い過ぎだろうか。親の愛に飢えながらも、素直にそれを認めることができない次男坊像。これは現実世界にもよくあるパターンだ。
『アンダーカヴァー』のホアキン演じるボビーも、典型的な次男坊といえる。エリート警察官の父親と兄に反発するかのように、ロシアンマフィアとつながるナイトクラブで働いているという、大変わかりやすいダメ次男ぶりである。しかもそのロシアンマフィア撲滅作戦を仕切るのが兄のジョセフだというのだからややこしい。不思議なことに、これまでホアキンが演じてきたキャラクターには次男坊系が多い。映画『グラディエーター』では、皇帝マルクス・アウレリウスの信頼を得た将軍マキシマスに嫉妬(しっと)する、ある意味で次男的な感情を抱く皇帝の息子コモドゥスを演じた。そしてアカデミー賞主演男優賞ノミネートとなった映画『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』では伝説的カントリー歌手のジョニー・キャッシュを熱演。ちなみにジョニーは父のお気に入りである兄に対して、コンプレックスを抱いていたという経緯がある。
このように、すんなりと劣等感を抱く次男坊を演じてしまえる背景には、天才俳優であり実兄である、今は亡きリヴァー・フェニックスの存在があったからかではないか。『グラディエーター』で名声を得るまでの道のりはホアキンにとって、長く険しいものであったに違いない。映画『誘う女』『8mm』で好演しても、その評価には必ずリヴァーの弟ホアキンというレッテルが貼られていたからだ。この関係はあだち充のマンガ「タッチ」に似ていなくもない? 『アンダーカヴァー』の成り切り次男坊ぶりは、ホアキンのそういった苦労が実を結んだ結果といえるのかもしれない。
映画『アンダーカヴァー』は12月27日より渋谷東急ほかにて全国公開