東大教授がダメだし?「ダ・ヴィンチ・コード」続編の「天使と悪魔」原作の気になる50か所
18日、東京大学にて、映画『天使と悪魔』の公開を前に、マスコミ向けに「『天使と悪魔』の虚と実」と題した特別講義が行われ、原作に登場する反物質研究の現状が説明された。
スイス・ジュネーブにある欧州原子核研究機構、CERN(セルン)が舞台の一つとなっている本作。教べんをとった東京大学大学院物理学専攻の早野龍五教授は、東大チームの一員として実際にセルンで研究に従事しており、セルンの内情はもちろん、物理学者として反物質にも詳しい。
そんな早野教授によれば、原作にはいくつかの問題点があるという。「残念ながら映画は観ていないので、あくまでも原作の話ですが」と前置きをしつつ、まずは「実在するセルンという場所、反物質という物質を扱いながら、事実とは異なる描き方をしている点に、強い危険性を感じる」と、誤解を招く描き方を危惧。その虚実を論じることのできるポイントは、「セルンで白衣を着ている者は1人もいない」というものから、「セルンがWWW発祥の地であることは正しい」というものまで、セルンや反物質について描かれる上巻において、50か所にもおよぶことを明かした。
中でも、セルンで生成された1gの反物質が盗まれ、ヒロシマに投下された原爆と同じ威力を持つ兵器として利用されようとする描写に対しては、科学的な根拠を基に「反物質を兵器として使えるほど大量に生成することは到底不可能」「エネルギー量は正しいが、爆薬としての破壊力には疑問を持つ」と強く否定。早野教授、およびセルンの元には、「反物質の危険性」に対する質問が、世界各国から日々寄せられているそうで、「エンターテイメントにおける科学性を論じることはヤボだと承知しているが、セルンと反物質について、正しく知ってもらいたい」と力説した。
しかし、そんな早野教授においても、「原作は面白い。『セルンが登場する本があるよ』と、研究所内でも話題でした。自分の知っているところが出てくるというのは、やはり興奮するものですから」とその面白さは絶賛するところ。「映画ではどのように描かれるのか、気になるところです」と期待をにじませていた。
映画『天使と悪魔』は、一大ブームを巻き起こした『ダ・ヴィンチ・コード』に続く、シリーズ第2弾。ある殺人事件の影に、伝説的組織の関与を感じ取ったラングドン(トム・ハンクス)が、盗まれた反物質と組織を追う姿を描いたミステリー。
映画『天使と悪魔』は、5月15日(金)より全世界同時公開