カンヌで諏訪敦彦監督がフランス人監督と共同製作した作品が公開
第62回カンヌ国際映画祭
諏訪敦彦監督が、映画『イヴォンヌの香り』などで知られるフランスの名優イポリット・ジラルドと共同で監督・脚本を務めた映画『ユキとニナ』(来春日本公開)が現地時間15日、第62回カンヌ国際映画祭「監督週間部門」で上映され、記者会見を行った。
同作品はフランスのパリを舞台に、日本人とフランス人のハーフのユキが両親の離婚で日本に帰らなければならなくなった戸惑いと、親友ニナとの友情と別れを、子どもの心に寄り添うように描いたヒューマンドラマ。諏訪監督とイポリットは、映画『不完全な恋人』で監督と主演俳優として出会ったのがきっかけで、今度は監督同士としてコンビを組むことにチャレンジしたという。
イポリットは「脚本のやり取りは、言葉や日仏の距離の問題があったけど、その分、たっぷり時間をかけて作り上げたことが、作品のためには逆に良かったのだと思う。バカげた挑戦だと思うけど、二人の作業は化学反応が起こり、うまくいったと思う。その証拠がこの映画です」と胸を張った。
一方、諏訪監督も「今まで、俳優たちと即興や一緒に脚本を作るなどコラボレーションをしてきましたが、俳優と監督との関係よりもっと踏み込んで、映画を作りたいと思ってました。僕は映画は誰か一人がディレクションをするより、共同性の中で作る方が豊かになると思ってます。初めての試みだけど、イポリットと一緒に作れて大変うれしく思います」と笑みを見せた。
しかし、参考にした映画を尋ねられた諏訪監督が、「あえて言うなら、(ロベルト・)ロッセリーニの『ドイツ零年』。少年が敗戦直後の廃墟化した街をさまようけれど、この映画の主人公も両親の離婚で、自分の居場所を失いさまよいます。なので、わたし自身の中ではこの映画のことが頭の中にありました」と答えると、イポリットは「今までロッセリーニの話なんてしたことないぞ」と不満顔。
共同で監督を行う場合、ジョエル、イーサン・コーエン兄弟のように兄弟かカップルが多いが、二人の場合は「ちょっと複雑な関係だからぁ」(諏訪監督)、「う~ん……この映画の両親ってところかな」(ジラルド)と答え、撮影中、撮影中はかんかんがくがくの議論をし合ったことをにおわせていた。(取材・文:中山治美)