ピーター・ジャクソン製作の異色SF作が全米ナンバーワンに!-8月18日版
全米ボックスオフィス考
夏も後半を迎えた今週の全米興行収入のトップに輝いたのは、映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでおなじみのピーター・ジャクソン監督が今回はプロデューサーに徹した、SFアクション・サスペンス映画『ディストリクト9』(原題)。
3,735万ドル(約37億3,500万円)の成績を収めたこの作品は、無名のキャスト陣であることやCMスポットが少なかったため、あらすじがイマひとつ理解されていない感があった。ところが中々興味深い作品であるのだ。ざっと内容をご紹介すると、28年前に地球にやって来た異星人が人類と共存を試みたものの、結局は人間たちから差別を受け始めて、D9(ディストリクト9)と名付けられたスラム街も真っ青な異星人居住地区に隔離されてしまう。彼らの持つテクノロジーを搾取しようとする政府。ある日、D9の異星人宅を捜査しに来ていた係官の一人が、変なスプレーを浴びてしまったことから彼も政府から追われることになる。そして、彼が助けを求められるのは敵だと思っていた異星人たちのみで……という筋書きだ。(1ドル100円計算)
『ディストリクト9』(原題)のストーリーは、完全にSF仕立てになっているものの、異星人たちと人類の関係が、現在アメリカやヨーロッパなどでも問題となっている移民問題をほうふつとさせる。ネタばれになってしまうのでこれ以上は語らないでおくが、同作品は、アメリカの有名映画サイトなどでも平均してB+からAという好成績をマークしており、一見の価値ある作品といえる。
第2位は、先週のトップから59パーセントの降下率で、今週は2,232万ドル(約22億3,200万円)を収めた映画『G.I.ジョー』。首位から落下したものの過去の同様作品である2002年の映画『トリプルX』や2005年の映画『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』などと比較しても、アクション映画にありがちな降下率であり、2週目のパフォーマンスとしては妥当といえよう。ちなみに封切り後10日間で、9,860万ドル(約98億6,000万円)をたたき出しており、1億ドル(約100億円)の大台に乗るのも時間の問題といえる。
続いて第3位は、エリック・バナとレイチェル・マクアダムス主演のSFロマンス映画『タイム・トラベラーズ・ワイフ』(原題)で1,862万ドル(約18億6,200万円)の売り上げ。タイムトラベルがテーマで、ストーリー的には多少弱い印象もあるが、夏の超大作に食傷気味の女性たちが彼氏やご主人を引っ張って観に行った成果で(!?)トップ3入りを果たしたようだ。
第4位は、先週の第2位から転落のメリル・ストリープ主演映画『ジュリー&ジュリア』(原題)で、1,206万ドル(約12億600万円)。40パーセントの降下率にとどまり、まずまずのスタミナを見せた。
最後に、第5位を飾るのは頑張る小動物軍団主演の映画『Gフォース』で、692万ドル(約6億9,200万円)。第3位の座を明け渡したとはいえ、4週目にしてはアッパレな30パーセントの降下率で、トップ5にとどまり健闘した。
次回の全米ランキングでトップ5入りが期待されるのは、ヨーロッパではすでに公開中のクエンティン・タランティーノ監督映画『イングロリアス・バスターズ』。この作品の公開を恐れてか、今週末はほかに目立った大型作品はなく、あえて言えば本格派ドラマ映画『ファイブ・ミニッツ・オブ・ヘブン』(原題)とティーン向けの軽いコメディードラマ映画『ポスト・グラッド』(原題)。タランティーノ監督のエグイ血みどろジョークが苦手な方には、こちらをお薦め。
ちなみに、前回トップ5入りするかと言われていた宮崎駿監督の最新作映画『崖の上のポニョ』は、358万ドル(約3億5,800万円)で第9位にランクイン。トップ10の中で、唯一の1,000館以下での公開作品となっており、次週以降どのような動きを見せるか、こちらも注目だ。(取材・文:神津明美 / Addie Akemi Kohzu)