今年で80歳、初代ゴジラの中島氏に独占インタビュー!日本初のワイヤーアクションを経験した生きる伝説
初代ゴジラのスーツアクターを務めた中島春雄氏が山形国際ドキュメンタリー映画祭2009内の特集上映『ゴジラを撮った男・本多猪四郎特集』にゲスト出演した。「ミスターゴジラ」の愛称で世界的に親しまれる中島氏は、本多猪四郎、黒澤明、円谷英二など、名だたる巨匠の現場を体験した生きる伝説である。このたび、日本映画の黄金時代を支えた山形県出身の名優がインタビューに応じてくれた。
中島氏といえばゴジラ俳優として有名だが、それ以外にも1953年のデビュー映画『太平洋の鷲』で、爆破された飛行機のパイロットが火まみれになってしまうシーンなどの体を張った名演技を忘れてはならない。当時のことを尋ねると、「石綿の服を着ていたんだけど、暖かいもんだったよ(笑)。若かったから、がむしゃらにやったわけよ。だからけがをするなんて何も考えてなかった。昔はスタントマンなんていなかったからね」とこともなげに話す。
また、中島氏は、映画『空の大怪獣 ラドン』で日本で始めてワイヤーアクションを体験した人物。中島氏は当時のことを思い出して思わずプッと笑い、「お前入ってみろと言われて、スタッフが5~6人でワイヤーを引っ張ったんだけど、それが急に引っ張るものだから、ワイヤーがたるんだんだね。滑車が巻きついて俺の身体がまわってるわけ。そしたら滑車が取れて10メートルくらいの高さから落ちたのよ。それなのに円谷のオヤジは『お前大丈夫だな、まだ平気だな』とか言うんだよ」と笑いながら話す。
再来年の2011年は、映画『ゴジラ』の本多猪四郎監督の生誕100周年という記念すべき年。そこで本多監督に対する思いを聞くと、「あの人は何もうるさいことは言わないからね。『ああ、いいね』と言うわけ。ジェントルマンなんだよね。でもね、だいたいの東宝の巨匠というのは『いいね』とは言わないの。苦虫をつぶしたような顔で、『はい、もう一回、もう一回』と俳優をいじめるわけ。本当に地獄だよね(笑)」と懐かしそうな表情。そういった現場を体験しているだけに、「それに比べたら今のテレビの役者はあっという間にOKだもんね。今の人はそういう勉強を踏んでないから、きついことをやったらできないかもしれないね。せりふさえ入ってればいいんだから。今の人は幸せだよ」とつぶやきながらも、どこか寂しそうな表情を見せていた。
中島氏は1929年生まれというから今年で御年80歳。しかしインタビュー中も、実に軽妙な語り口で、話にもよどみがない。そして現在でも「ミスターゴジラ」として、アメリカなどからイベント参加のオファーがあるとのこと。まだまだお元気で、日本映画の歴史を語り継いでいただきたいところだ。(取材・文:壬生智裕 / Tomohiro Mibu)