あまりにむごい陵辱シーンに賛否両論 世界的ベストセラーの映画化 女性の生き方探る
作者の急死後、全世界で2,100万部売れ、今世紀最大のミステリーと、社会現象になっている大ベストセラーが『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』として映画化されたが、劇中のあまりにむごい陵辱シーンが物議を醸している。
物語はスウェーデンのとある孤島を舞台に、40年前の少女失踪(しっそう)事件に絡む謎解きがスリリングに展開していくが物語のネックになっているのは女性に対する陵辱だ。主人公の天才女性ハッカー、リスベットはハッカーゆえに服役していたのだが、出所後その後見人となる人物に脅され、陵辱の限りを尽くされる。
あまりにむごい仕打ちに、評論家などの間でも賛否両論、物議を醸しているが、このシーンは単なるエロチックシーンとして物語に組み込まれているわけではない。スウェーデンでは女性の13パーセントがパートナー以外の男性から性的暴行を受けたことがあるというショッキングなデーターがある。しかし、女性は黙って泣き寝入りする例がほとんどだ。この悲しい事実が物語の根底にも根付いている。主人公リスベットを演じたノオミ・ラパスは、「リスベットは自分というものを持って、自分の信じることに向かって迫害を受けながらも諦めずに戦っています。そういう彼女だからみんなリスベットのことが好きなのです。われわれは難しい社会に生きていますからね」と物語が弱い立場の女性が強く生きていくためのヒロイン像を見事に描いていることをコメントしている。
また、このシーンが果たして必要だったかについていろいろな意見があるが、そのことについても「とても大事なシーンでした。あのシーンがないとほかが成り立たなかったのです。悲惨な人生を送って来た彼女があの問題をどう乗り切るかが彼女の人生を象徴していたのです。それは正義と社会のシステムのギャップでもあります。後見人は社会を意味し、彼女を犯し、ぞうきんのような扱いをする、それは彼女と世界の関係を表していたのです」と述べている。
これは、スウェーデンが特別という話ではなく、全世界の女性に共通した叫びでもある。身体的、社会的に弱い立場に置かれた女性が社会にどう対峙していくのかという普遍的テーマも含んでいるサスペンスミステリーなのだ。
映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』は2010年1月16日よりシネマライズほかにて全国公開