是枝裕和監督、オランダでは「空気人形」が「ダッチワイフ」で通じることにびっくり!
是枝裕和監督の映画『空気人形』(3月26日DVDリリース)が第39回ロッテルダム国際映画祭で現地時間30日に招待上映され、劇場は満員御礼となる熱狂ぶりとなった。また上映前には同映画祭では異例の、映画祭ディレクターのルトガー・ウォルフソン自ら司会を務めて、是枝監督と美術監督・種田陽平によるトークショーが行われた。
是枝監督と種田は本作で初コンビを組んだが、その経緯について是枝監督が「種田さんの仕事ぶりを初めて拝見したのは映画『スワロウテイル』だった。今まで僕の作品は別の方にお願いしていたが、今回はビニールの人形が動き出すファンタジックな設定だったので、日常とは違う場所を設定しないと人形が動き出せないと思い、種田さんにお願いしました。日常と地続きながら、豊かなファンタジーになったと思う」と説明。種田も「是枝監督の事は初監督作『幻の光』から注目していました。今回は今までの是枝作品とは違うフィーリングを創りたいと思い参加しました」と相思相愛ぶりを語った。
同作品は、心を持ってしまった空気人形が街へ飛び出して様々な人たちと出会う姿を通して、彼らもまた人形同様に心が空虚で、孤独を抱えながら生きているという、現代社会の一面を写し出す意欲作だ。空気人形は日本ではダッチワイフとして広く伝わっているが、これは第一次大戦でオランダと戦った深い因縁を持つ英国人が、差別的な意味合いを込めて名付けたと言われており、現地では知らない人が多い。日本でも最近はラブドールと表現するようになり、映画祭発行の新聞「デイリー・タイガー」では「ビニール・セックス・ドール」と訳されている。映画を製作する前にまず、ダッチワイフの語源を調べたという是枝監督は「オランダ公開が決まり、現地メディアの取材を受けているのだけど、僕が気を遣ってラブドールと表現しているのに、オランダ人の通訳が普通にダッチワイフと訳し、それが相手に通じていたので驚きました」と、思わぬ発見に目を輝かせていた。(取材・文:中山治美)