なぜダニエル・クレイグは007に抜擢されたのか?シリーズ最高興行収益の訳
アクションヒーローの代名詞ともいえる『007』シリーズは、これまで22作が製作されてきたが、6代目ボンドに起用されたダニエル・クレイグは、これまでのボンド俳優の系譜とは明らかに異なる雰囲気を持っている。ショーン・コネリーやロジャー・ムーア、ピアース・ブロスナンらスター俳優が、これまで歴代ボンドを演じてきたが、なぜ彼に白羽の矢が立ったのか、理由を探ってみた。
ジェームズ・ボンドといえば、イギリス諜報(ちょうほう)部MI6の「殺しのライセンス」を持つ男であり、日夜、世界をまたに掛けたスパイ活動に勤しむ存在だ。香り立つダンディズムの持ち主で、各国の美女と一夜を共にすることも多いプレイボーイとして知られている。
それだけに、イギリス出身の演技派俳優、ダニエル・クレイグの6代目ボンド起用が公式発表されると「今までのボンド像とイメージが違う」と世界中のファンからブーイングの嵐が巻き起こり、映画鑑賞をボイコットするサイトまで立ち上がる騒ぎが起きた。ちなみに、6代目ボンドにはヒュー・ジャックマンやジュード・ロウなど、ダニエルに比べるとよりプレイボーイ色の強い、つまり過去のボンド像を踏襲した俳優の起用も検討されていた。
ではなぜダニエルが起用されたのか。そのウラには、『007』シリーズを原点に立ち返らせ、よりシリアスでハードな作風にしたいという製作側の意図があった。シリーズ21作目『007/カジノ・ロワイヤル』では、ボンドが00(ダブル・オー)に昇進する過程が描かれることになり、主演俳優には完成されたヒーロー像ではなく、荒々しい等身大の人間性が求められたのだ。また、スパイ道具が活躍する過去作とは異なり、生身のアクションに対応できる身体能力も必要となった。
これらの条件に当てはまる俳優、それがダニエルだった。当初のブーイングも何のその、端正なマスクと鍛え上げられた肉体を武器に、クールかつエネルギッシュな新ボンド像を確立し、『007/カジノ・ロワイヤル』はシリーズ最高の興行収益1億6745万ドル(約150億7000万円・1ドル90円計算)を記録。その続編にあたる映画『007/慰めの報酬』では、指先切断寸前の負傷を追ったり、顔を8針縫ったりと生傷の絶えない撮影を持ち前のタフさで乗り切った。
もちろん、期待されるシリーズ23作目でも、ダニエルがボンドを演じることが決定している。今年中にも撮影が始まる予定で、現時点では映画『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞監督賞を受賞しているサム・メンデスがメガホンを取るというウワサもある。ダニエル=ボンドの活躍は今後もしばらく続きそうだ。
『007/慰めの報酬』は3月21日よる8:00よりWOWOWにて放送