日本のイルカ漁描く『ザ・コーヴ』の監督、オスカー受賞時にするはずだった日本へ向けてのスピーチを発表
和歌山県・太地町でのイルカ漁を隠し撮りし、第82回アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞を受賞した映画『ザ・コーヴ』のルーイー・サホイヨス監督が、本来オスカー受賞時にスピーチするはずだったコメントを、配給会社アンプラグドへ寄せていたことがわかった。
オスカー受賞当時、サホイヨス監督は日本へ向けて特別にスピーチをしようと考えていたが、45秒という制限された時間とプロダクション側のミスもあり、それはかなわなかったという。
スピーチするはずだったコメントの中でサホイヨス監督は「日本での上映は昨年の東京国際映画祭の2回のみ。映画を批判している人たちの多くはまだ映画を観ていないのでは? 単純に、まずはこの映画を観てから判断していただきたい」と日本でのバッシングについて意見している。本作製作の経緯については「地球存続には海洋保護が重要だと思っており、それには大きな情熱を持っている。仲間たちと『ザ・コーヴ』の制作を決めたのも、海からのメッセージを伝えるため。映画というメディアを使うことにしたのは、それが世界で最も力を持つ『創造力の武器』だと考えたから」と説明。ダイバーや水中カメラマンとして活動してきたサホイヨス監督は、海の環境が破壊されるのを間近で見てきた。そして海洋環境に関する懸念を広く伝えるため、慈善団体OPSをスタートさせている。
サホイヨス監督は撮影を進めていく中で、イルカ肉や魚介類を食べることにより、水銀中毒に侵されるという驚くべき事実が明らかになったとしている。諸外国の文化や伝統を重んじているというサホイヨス監督だが「イルカを殺すという伝統は、どのレベルで考えても必要だとは思えない。一番シンプルなレベルで考えたとしても、人々の健康を危険にさらす伝統にしかなり得ない」とイルカ漁に苦言を呈する。
さらに「海の苦境や水銀中毒を知らせるべく、映画という形で日本に手を差し伸べた。『ザ・コーヴ』は反日映画ではない。映画を制作したわたし自身が反日ではないのだから」とあくまで海洋保護を専門に取り組んでいる者として製作したと強調。「もし招かれれば、喜んで討論に参加する。そして何にも増して日本人にこの映画を観てほしいし、彼ら自身によって考え、判断してほしいと熱望している。そういったことができる人たちに、ただそうしてほしい。日本の方々はそうできるはずだ」と締めくくっている。
オフィシャルサイトでは、本日より予告編が公開される予定。問題となっている隠し撮り撮影の様子も収められており、本作がどういった流れで構成されているのかがわかる。劇場公開は初夏。
映画『ザ・コーヴ』は初夏、シアターN渋谷ほかにて全国公開予定