アカデミー賞4部門ノミネート映画『第9地区』主演俳優は俳優が本業ではない!?
第82回アカデミー賞作品賞ほか計4部門にノミネートされるなど、その独創性や完成度の高さに世界中を熱狂させた映画『第9地区』の主演俳優、シャールト・コプリーに話を聞いた。
舞台は弱ったエイリアンたちを乗せた宇宙船が飛来してから20数年後の南アフリカ共和国ヨハネスブルグ。エイリアンたちに与えられた共同居住地第9地区はすでにスラム化し、市民とエイリアンとの間には対立構造が生まれていた。シャールトは、エイリアンの管理業務を委託された民間企業MNUの社員で、エイリアンたちを第10地区に強制移住させる任務を受けた現場責任者ヴィカスを演じる。
ニール・ブロンカンプ監督の長編デビュー作でありながら、アカデミー賞作品賞にノミネートされるという快挙を成し遂げた本作。しかし驚くべきはシャールトの本業が俳優ではないという点だ。「本作の元ネタとなるブロンカンプ監督の短編映画をプロデュースしたときに、ブロンカンプ監督からは長編にする際のアイデアをいろいろと聞いていた」とシャールト。「カメラテストのときにブロンカンプ監督から何かやってほしいって言われて、即興で演じたキャラクターがヴィカスだった。それをブロンカンプ監督が気に入ったみたいで(笑)」とキャラクターの誕生と役者としての起用経緯を明かす。
元ネタとなった短編映画ではカメオ出演をしたとのことだが、映画主演は今回が初。にもかかわらずシャールトのユーモアを感じさせる演技は、ベテランの風格さえ漂う。「自分の資質なのかもしれないけれど、プレッシャーは全然なかったね! それよりも出品先の映画祭などで宣伝活動をする方がよほど緊張した」と笑う。アメリカのコミコンや世界中の映画祭で上映され、ノミネートの数は計り知れない。そして第82回アカデミー賞では、数ある強豪を抑えて、作品賞候補10本の中に選ばれた。
シャールトにとっては、主演作品がアカデミー賞にノミネートされたことよりも、映画を観た観客の好意的なリアクションの方がうれしいようで、特にジャパンプレミアは思い出深いものになったという。「ハリウッドでは、日本の映画ファンは熱狂的でクレイジーと有名なんだ。だから彼らが楽しんでいる姿を見たときは本当にホッとしたよ(笑)」とシャールト。ちなみに東京の姿は、プロデューサーとしての琴線に触れたとのことで、「車窓から夜景を見たんだけれど、映画『ブレードランナー』が日本にインスパイアされた理由がわかったよ。今も東京は未来的だし、僕もいつか日本で何かをやってみたい」と野望を燃やす。
役者として映画『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』への出演が決定しているシャールトだが、「演技は楽しいし、面白い企画があったら製作や監督も続けていきたいと思っている」と今後はオールマイティーな活躍で、ハリウッド映画界を楽しくしてくれそうだ。
映画『第9地区』は4月10日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開