男泣き映画の巨匠ジョニー・トー監督、「香港映画は死なない」と高らかに宣言!
男泣き映画を作ることに定評のあるジョニー・トー監督が、心を熱くする映画を作り続ける自身の美学について語った。
トー監督の最新作映画『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』で主演を務めるのは、映画『列車に乗った男』に出演した、フランスの国民的大スター、ジョニー・アリディ。ジョニーふんする何者かに娘を殺され、犯人への復しゅうを心に誓う初老の男コステロと、彼に雇われた3人のすご腕ヒットマンたちとの友情ときずなが物語の主軸となる。コステロに手を貸すことで組織での立場が悪くなるにもかかわらず、命を懸けて約束を守ろうとする男たちのストイックで不器用な姿に胸が熱くなる。「僕の映画にはヒロインがいないとよく言われます(笑)。それは、僕が女性の心がよくわからないというのもありますが、武侠(ぶきょう)映画など小さいころに観た作品の影響も強いんでしょうね」と自ら分析するトー監督。さらに、「男は、女性に対しても、社会に対しても、すべてのことに対して責任を持つべきだと頭の中に焼き付けられているんです。約束を最後まで守れるかどうかが、本物の男かどうかを図る最大の基準ですからね。そういう男たちのドラマを描きたいんです」と自身の作品に流れる哲学について明かしてくれた。
今までも愚直なまでに熱くて不器用な男たちの生きざまをスタイリッシュな映像美で描いてきたトー監督。彼の才能にほれこんだフランスの名プロデューサー、ミシェル・ペタンとロラン・ペタンの数年にもわたるラブコールに応えた本作。そしてフランス映画界との強力タッグにより、改めて香港映画界の底力を見せつけ、カンヌ国際映画祭などでも絶賛を浴びた本作だが、「今の香港映画というのは、むしろ中国映画の一部という方が正解かもしれない。中国の著しい経済発展の中で、香港の要素を取り入れた中国映画は大きく伸びてきているが、実際は香港映画の空洞化が始まっているんです。そんな中で香港の映画マーケットを持続させるためには、この作品のように資金は外国から、映画のスタイルは香港スタイルにするのも一つの方法でしょう。わたしは香港映画界に対してはまだ楽観的なところがあります。香港映画は死にませんよ」と力強く宣言していた。
本作は、トー監督の傑作映画『ザ・ミッション 非情の掟』『エグザイル/絆』に続くノワールアクション3部作の完結編として、男たちの熱い友情と別れを描く傑作犯罪映画だ。ド派手なアクションと銃撃戦、そして哀愁に満ちた男たちの生きざまに熱くなる。
映画『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』は5月15日より新宿武蔵野館ほかにて公開