映画の冒頭5分でわかる『第9地区』を特別公開!気持ち悪いからいじめろ!?「人間専用」が意味するものは?
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンが製作を担当し、アメリカでスマッシュヒットを記録、第82回アカデミー賞作品賞ほか計4部門にノミネートされるなど、SF映画としては異例ともいえる作品としての評価の高さを誇る映画『第9地区』がいよいよ本日公開される。
ネットで公開された冒頭の5分は、この映画の構成の優秀さを物語るがごとく、わずかな時間でこの映画のテーマを凝縮している。この映画は南アフリカのヨハネスブルグから始まる。上空に突如現れた巨大な宇宙船に乗り込んでいた薄気味悪いエビに似たエイリアンたち。宇宙船が壊れて宇宙を放浪していた180万体もの膨大な数の彼らは、“人間のお情け”で、難民キャンプに住まわされることになる。街には至る所に「人間専用」の立て札が立ち、「エイリアン」を蔑む。今でも南アフリカのトラウマとなっている、黒人を白人とを完全に別に生活させたアパルトヘイトを彷彿(ほうふつ)させる。
このエイリアンたちを毛嫌いし、虫ケラ同様に扱う、政府の委託を受けエイリアン支援を行う企業MNUのヴィカスがこの物語の主人公。支援とは名ばかりで、エイリアンたちをいじめ抜くのが彼の仕事だ。気持ちが悪い異星人など、どんどんいじめるべきだとばかりに彼だけでなく、人間たちは皆エイリアンをいじめる。映画冒頭の5分を観たほぼ全員がヴィカスと同じ気持になるのは間違いないだろう。ここにこの映画の演出の巧さがある。
このいじわるなヴィカスと映画を観ながら行動を共にするわたしたちの心境の変化こそ、アカデミー賞のノミネートをはじめ、SF界の権威であるヒューゴー賞にまでノミネートされるなど、多くの国や人々から映画を評価される秘密だということがわかってくる。
まずは、冒頭の5分でこの映画の完成度の高さを味わってみることをおすすめしたい。通り一遍のSF映画ではないことがわかるはずだ。
映画『第9地区』は4月10日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開