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クリストファー・ノーランの弟ジョナサン、映画『メメント』の発想は兄との会話のとぎれに…

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左からガイ・ピアース、ジョナサン・ノーラン、司会者、ジョー・パントリアーノ
左からガイ・ピアース、ジョナサン・ノーラン、司会者、ジョー・パントリアーノ - Photo:Nobuhiro Hosoki

 映画『ダークナイト』『プレステージ』など今やハリウッドの大作を手掛けるようになったクリストファー・ノーラン監督。彼が2000年に製作した出世作 『メメント』が、公開から今年でちょうど10周年を迎える。そんな記念すべき年にTribeca Film Festival(トライベッカ映画祭)でトークパネルが行われた。トークパネルには、主演のガイ・ピアースジョー・パントリアーノ、ノーラン監督の弟で、原案のジョナサン・ノーランが参加し、当時を振り返った。

 映画『メメント』は、ある日何者かに妻をレイプされた上に殺害され、前向性健忘と なってしまう、保険調査員レナード(ガイ・ピアース)の話。前向性健忘とは、発症以前の記憶はあるが、発症以後の記憶は、数分前の出来事さえ忘れてしまうというもの。そんな状態で、レナードは記憶を残すためにポラロイドカメラで写真を撮り、体にタトゥーの証拠を刻みながら、犯人の手掛かりを徐々に追っていくという作品だ。

 原案のジョナサン・ノーランは、この映画の原案が引っ越しの最中に生まれたことを明かし、「あれは1997年、僕がワシントンでまだ大学生だったころ、当時イギリス に住んでいた兄クリスが、僕とハリウッドに移り住むことを決め、二人でカリフォルニアに車で向かっていた時だった。道中のミネソタ辺りで、話すことがなくなって、映画のアイデア交換を始めたんだ。そのとき、僕は大学の心理学の授業で前向性健忘の話を聞いたのを思い出して、急に新たな映画のアイデアが浮かんだんだ。それが、この作品の原案になったんだよ」と大学の授業もこの映画を作るにあたって、一役買ったことを明かした。

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 クリストファー・ノーラン監督は、作家ジェームズ・エルロイの大ファンで、エルロイの原作であった映画『L.A.コンフィデンシャル』を観て、ガイ・ピアースの演技に感銘を受け、彼にこの作品の脚本を渡した。ガイは、その脚本を読んだ感想を、「それまで、彼ら兄弟(クリス、ジョナサン)の名前は知らなかったんだけど、渡された脚本を読んだ瞬間に気に入ったんだよ! 正直言って1、2度脚本を読んだぐらいじゃ、しっかり把握できなかったんだ! でも、個性的な構成と感情的なシーンにすごく惹(ひ)かれて参加したんだ」と語った。

 撮影の期間は25日だったが、リハーサルの期間が3週間も あったことについてガイは「この3週間のリハーサル期間で、この映画の一瞬一瞬に起きることを、僕ら俳優陣は把握できるようになっていったんだ。ただ、僕が演じた主人公のレナードは、起きたことを忘れちゃう設定だから、ある意味俳優としては自由な環境で演技することができたのかもしれないよ。毎回撮影現場 に行ったら、さて、今日はどのシーンを撮影しようか? という感じでね……」と話した。

 最後に「この映画が本当に素晴らしいのは、単に クリスとジョナサンの才能が開花した映画というだけではなく、10年たった今も、この場所に座って自分が気になった個所を、再び議論していることだと思
うんだ! これは、きっとクリエイターにとって夢のような成功の結果なんだと思う。個人的に、こんな重要な映画に参加できて心から良かったと思っているよ!」とジョー・パントリアーノが締めた。

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 確かに、何度観ても新たな疑問点が生まれる映画は今日少なくなってきている気がする。この映画の冒頭シーンは、今でも鮮明に記憶に残っている。レナードが殺したばかりの男をポラロイドで写真に撮るシーンだ。写った映像を浮かび上がらせようと写真を振るが、逆に映像が消えていってしまう。それはまるで、人の記憶というものがあいまいであることを暗示しているかのようだった……。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)

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