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日本人はなぜカブトムシに5,000円も出すの?アメリカ人の固定概念を砕く映画

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ジェシカ・オレック監督
ジェシカ・オレック監督 - Photo:Nobuhiro Hosoki

 昆虫をペットとして買う日本人に興味を持ち、日本人はなぜ昆虫が好きなのかと問題提起したドキュメンタリー映画『ビートル・クイーン・コンカーズ・トウキョウ / Beetle Queen Conquers Tokyo』(原題)を監督したジェシカ・オレックに話を聞いた。

 本作は、日本の子どもたちが、お金を払ってまでカブトムシを手に入れるということに興味を持ったアメリカ人の女性が、昆虫業者と学者、さらに子どもたちを通して、「もののあわれ」の日本文化と昆虫の密接な関係を理解していくという作品だ。

 オレック監督は、アメリカでは昆虫を飼っている子どもはほとんどおらず、小さいころから昆虫が好きだったのに、誰にもそのことが言えなかったと話す。そして、大学に通いながらアメリカ自然史博物館で助手として働いていたときに、演説にやって来た日本人女性が「子どものころ、周りの男の子はみんなカブトムシを飼っていた」という話を聞き、「これだ!」と思ったそうだ。

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 アメリカでは、「虫は、殺すものという意識が植え付けられているわ。蝶々が顔に近寄ってきたら、風情とは思わずに避けるもの」と日本の「風情」をほめるオレック監督。映画の中では「源氏物語」まで引用して、「もののあわれ」を語っている。「この言葉の意味を知ったときに、自分の目の前にあった壁が崩壊した感じがしたの。すべての生き物と接する上で、必要不可欠な理念だと思ったから。この言葉で、自然に対する感謝の気持ちが増したわ」と話してくれた。

 本作には、解剖学者で、東京大学名誉教授の養老孟司氏のインタビューが含まれているが、それは予定にはなかったことだそうだ。しかし、取材する人みんなに勧められ彼を訪れた彼女は、「結局、彼の語ってくれた言葉が、欧米の人に日本人と昆虫の密接な関係を伝える一番いい材料になった」と話した。

 この映画を通して欧米人に昆虫などの生物に対する意識を高めたいと語った彼女は、それと同時に日本人にも昆虫と日本文化の接点を再認識して欲しいと話す。映画には、5,000円以上出してカブトムシを買う少年も出てくるが、その少年がそのカブトムシを育てる過程で学ぶ、生物との触れ合いを考えてみると、それは決して高い買いものではないのかもしれない。(取材・文:細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

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