賛否両論の北野武『アウトレイジ』、気になるその内容は?
第63回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、「スタンディングオベーションが巻き起こった!」「酷評されている!」と賛否両論の報道が飛び交った北野武監督最新映画『アウトレイジ』だが、果たしてその内容はどうなのか? 検証してみた。
本作は、北野監督が、映画『BROTHER』『座頭市』以来7年ぶりにR15+指定の強烈かつ衝撃的なバイオレンス・アクションに挑んだ作品。カンヌでの会見で、「進化したバイオレンス映画になっていると思う」と自信を見せ、「セリフも増やし、ストーリーもわかりやすく面白くしたつもり」だと話していた。
確かに本作は、ドラマ性に優れており、北野監督が「現代のヤクザは金の稼ぎ方がITや株、指を切ってわびるより金だ」と話すとおり、現代ヤクザ社会が、現代日本の企業や学校、政界などの縮図を表し、会社員の悲哀ならぬヤクザの葛藤(かっとう)をリアルに描き出している。
しかし、それが逆にフランスでの賛否両論を生んでいるのかもしれない。北野監督は、影響を受けた監督として、海外の作品では、マーティン・スコセッシ監督の映画『グッドフェローズ』やフランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ゴッドファーザー』を挙げているが、本作には、北野監督オリジナルの世界観の中に、その二人の影も感じ取れ、今までのフランス人が好みそうな感覚的な作品というよりは、バイオレンスも、コメディーもふんだんに盛り込まれたエンターテイメント性の高い作品に仕上がっている。
「カンヌを意識していたら、こんなバイオレンス映画は作っていない」と語っていた北野監督。今まで、フランス人に好まれる作品の多かった彼だが、今回のカンヌで意見が真っ二つとなったのは、本作がフランス向きというよりは、日本、またはアメリカ向きだからと言えるのかもしれない。
フランス人の評価はひとまず賛否両論ということだが、日本ではどのように評価されるのか、世界のキタノが追求した日本映画、彼の集大成とも思える本作の日本公開が待ち遠しい。
映画『アウトレイジ』は6月12日より全国公開