『グッドモーニング,ベトナム』の監督が明かす、アル・パチーノの役づくりの方法とは?
映画『レインマン』『グッドモーニング,ベトナム』のバリー・レヴィンソン監督が新作テレビ映画『ユー・ドント・ノー・ジャック/ You Don't know Jack』(原題)について語ってくれた。
本作は、130人以上の末期病患者の安楽死・尊厳死の自殺ほう助をした「ドクター・デス」こと、実在の人物ジャック・ケヴォーキアン医師を描いた作品で、ジャックをアル・パチーノが演じ、その鬼気迫る演技も話題になった。
ジャックは結局、第2級殺人罪で8年服役することになりニュースでも報じられたが、レヴィンソン監督は映画を制作するまで、ジャックのことをほとんど知らなかったのだという。普段は自分で題材を決めることが多いというレヴィンソン監督は「映画業界で働いていると、予想しなかった仕事が舞い降りて来ることがある」と今回の作品との出会いを評し、「まず、草稿過程の脚本がテレビ局から送られてきたんだ。それから議論を重ねて手直しした脚本をアル・パチーノに渡して、制作が始まったんだ」と教えてくれた。
だが、レヴィンソン監督がすでに出所しているジャックと何度も話し合っており、その会話の内容を映画の脚本に盛り込む一方で、アルが初めてジャックに会ったのは撮影が終了したあとだったという。「というのも、ジャックが末期病患者に質問していたビデオが残っていて、アルは、そこからキャラクターのリサーチしていたんだ。だから、実際に会うことは避けたんだろうね」と名優ならではの役づくりをレヴィンソン監督が明かしてくれた。
レヴィントン監督は、ジャックがこの映画について「自分を題材にした映画が、これほど良い映画として製作されるとは思わなかったと褒めてくれたんだ」と説明したが、「このように実在する人物からコメントをもらうのは変な感じだった」と苦笑いをしてみせた。現在のアメリカでは、一度テレビ放映したものを劇場公開するのは難しい状況だが、レヴィンソン監督は「テレビという媒体で、より多くの人に観てもらった。それを報酬と考えるべきだ。どんな優れた映画でも、ほとんどの人に観てもらえない作品があるからね」と、この形態で製作したことに後悔はしていないようだった。(取材・文:細木信宏 Nobuhiro Hosoki)