製作7年、総移動距離は地球13周半!彫刻家イサム・ノグチの母親を描く日米合作映画『レオニー』
映画『ユキエ』『折り梅』の松井久子監督が製作に7年かけ、彫刻家イサム・ノグチの母親の姿を追った日米合作映画『レオニー』が今年11月に公開されるが、作品が完成にこぎ着けるまでには、人々の温かいサポートがあった。
本作は、シングルマザーとして彫刻家イサム・ノグチを育てた女性、レオニー・ギルモアの生涯にスポットを当てた作品。松井監督が長年温めていた企画だったが、アメリカ人キャストの起用や資金の問題などでなかなか実現することはなかった。それをサポートするため2005年に作られたのが「松井久子監督の第三作を応援する会 マイレオニー」だ。
松井監督の『ユキエ』『折り梅』は劇場公開を終了してからも各地で自主上映会が行われ、延べ観客動員数は200万人を超える。松井監督も積極的にファンとの交流を持つことで、次回作を観客の立場から応援する同会が発足。当初5人から始まったサポーターは、現在では全国で3,000人以上となり、エキストラとしての出演やロケ地での炊き出しなどさまざまなサポートを行った。
そんな観客たちの応援に応えようと、松井監督もキャスティングやロケ地の決定のために日本とアメリカを納得できるまで何度も往復し、撮影は日米13都市、総移動距離は実に地球13周半にも及んだ。その成果が14稿まで書き直されたという脚本と、松井監督が「会うなり『レオニー役はこの人しかいない!』と確信」したエミリー・モーティマー、熱烈なオファーを送ったという中村獅童、前作にも出演した原田美枝子をはじめとするキャスティングだ。製作7年をかかった映画ながら、撮影はわずかに3か月。だが、「このスタッフとならずっと撮り続けていたいな」と松井監督も思ってしまうほど濃密な作品に仕上がった。
これまで取り上げられることの少なかった人物を中心にした本作は芸術家のルーツに迫るというだけでなく、戦前から戦中、そして戦後に至るまでを日本とアメリカのはざまで生きた女性の魂の記録でもある。すべての面で松井監督の集大成、そして代表作となる本作の裏側には、画面には映っていない人々の確かな力がみなぎっている。
映画『レオニー』は11月20日より全国公開